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スマイル19・王様ピンチに現る

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「なあ、美羽。土曜日、俺とデートしようぜ」



 王雅が突然、デートしようとか言い出した。
 今、言うの?
 この王様、一体どういうタイミングで女性を誘うのかしら。
 ちょっと読めない。

「デート? 子供達を放っておいて、そんなの行く時間、あるわけないじゃない。何言ってんのよ」

 とりあえず断った。

「違うって。商店街デート――買い出しだよ。俺、土日は毎週、できるだけ仕事休み取って、施設で世話になるから。週末は基本、泊りだ。俺の布団、用意しておいてくれよ。ガキ共には、俺が必要なんだろ? 俺も会いたいし、まとめて面倒は見てやるから。俺が増える分、食材とか余分に要るだろ。だから、とりあえず朝から買い出しに行くぞ。世話になる代わりに、俺が財布だ。お前の欲しいもの、何でも買ってやる。また、買いに行こうぜ。お徳用トイレットペーパーとか」


 王雅の言葉に、目が丸くなった。
 お徳用トイレットペーパーって庶民の単語、王様が口にしちゃうなんて!

 

「セレブの王雅には似合わない言葉ね。お徳用トイレットペーパーなんて。あははっ」


 思わず笑ってしまった。


「俺様とデート出来るなんて、超ラッキーだぜ、お前。しかも、何でも欲しいものが手に入るんだからな。最高だろ」

 王雅が不敵な王様スマイルを向けてきた。
 輝く王様スマイルもいいけど、王雅のこの得意気な王様顔、結構好きなのよね。
 悪くないって思うの。

「言うわね。アンタこそ、私とデート出来るなんて良かったじゃない。私は、高いわよ。あちこち行くからね。覚悟しておきなさい」

「ああ。美羽とデート出来るなんて、嬉しいぜ。楽しみにしてるから」

「買い出しがデートで楽しみなんて、変わってるわね。ふふっ。王様も庶民になったりするのかしら?」

 商店街で何でも買ってくれるスポンサーがいるなんて、最高ね。
 お徳用の安くて美味しい食材、沢山買ってもらっちゃおうっと!
 でも、幾ら王雅がお金持ちだからって散財させられないから、できれば目標五千円以下に抑えたいわね。

 あ。そうは思っても、調味料切れているのがあるし、お肉もお菓子もちょっと少ないから・・・・お会計、もう少し高くなっちゃうかもしれないけど、いいかしら?

 まあ、土日の泊りの食費として払ってくれるのは有難いけど、子供たちのお世話をお願いするのに、王雅からお金をもらうのもどうかと思う。

 だったらこれは、何時か訪れる契約の時の借りとして、貴方にツケておいてもらうわ。
 貴方が覚えてなかったら、私が覚えておくから。
 私を契約で抱く時、その対価としての先払いよ。タダで何でも買ってもらう訳にはいかないからね。


 それから王雅は、私が作ったお昼ご飯を子供たちと一緒に食べて仕事に戻って行った。


 土曜日か。商店街の買い出しがデートなんて、王様も変わったデートを希望するのね。
 明日、商店街に買い物へ行こうと思っていたけど、王様たっての希望だから、買い物は土曜日にとっておきましょう。


 想像すると、なんだか楽しそうね。
 早く、土曜日になればいいのに。
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