99 / 287
スマイル19・王様ピンチに現る
8
しおりを挟む
話し合いも落ち着いたので、内藤さんはとりあえず帰ることになった。今日は施設の様子を見る為に、有休をとって会社を休んで来たんだって。
準備を整え、すぐにでもサトル君を迎えに来ると約束して、彼は帰って行った。
ただ、男一人の生活からいきなりサトル君を抱えた生活は、仕事をしている以上困難なので、サトル君が小学校に入るまでは、施設を保育園代わりに利用し、月謝を払うという事で話がまとまった。
月謝は要らないって言い張ったんだけど、内藤さんが、施設に世話になりっぱなしじゃ流石に気が引けるから、せめてもの気持ちだということで、月謝を払ってくれる事になったの。
仕方がないから、月謝は千円だけもらう事にした。もっと払うって言われたけど、これ以上は受け取れないって突っ撥ねた。
もう、本当に要らないのに。
サトル君は施設を出ると思ったけど、結局あまり変わらないの。一緒に夜寝る事が無くなるだけ。お別れしなくてもいいのは、嬉しい。
今後、準備が出来たら仕事帰りに内藤さんがサトル君を迎えに来る。サトル君は、内藤さんと一緒に、これからの自分の家に帰るの。
サトル君は、おうちが二つも出来て嬉しいって喜んでいた。お昼のお家は施設で、夜のお家はお父さんと暮らす家って。
子供は無邪気ね。そんな風にこの複雑な生活を楽しんでしまうなんて。
内藤さんを送り出し、一緒に帰ろうした王雅に声を掛けた。「せっかく来たんだから、お茶くらい飲んで行きなさいよ」
王雅ともう少しだけ一緒にいたくて、どういう訳かつい引き留めてしまった。
何時もの、アイスハーブティー。王雅も好きだって、美味しいって言ってくれるから、飲んで欲しくて淹れて出した。
「王雅。色々私達の事気にしてくれて、助けてくれて、本当にありがとう」
お礼はきちんと言っておきたかったから、言えて良かった。
貴方が来てくれなかったら、きっとサトル君はあのチンピラ男(坂崎って名前だったかしら)に連れて行かれて、大変な事になっていたと思うから。
私一人じゃ、サトル君を守ってあげる事ができなかったでしょうね。こういう時、女は非力で悔しい思いをする。
もっと強くなれたらいいのに。あんなクズ、一瞬で張り飛ばしてしまえるくらいに。
え? それじゃ、危険だから誰も私に近づけない、ですって?
それもそうね。普通の方がいいかしら。
え? 私は強くて美しい、ですって?
まあ、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ!
「いいって、気にすんな。俺が勝手にやったんだ。内藤とも偶然会ったワケだし。結果オーライだったな。でもな・・・・正直に言うと俺、最初は内藤に、サトルの事話すの、躊躇しちまったんだ。サトルを渡したくねえって思っちまってさ。サトルの事言えなくて、グズグズ悩んでたら、リョウから坂崎が来たって電話があって、慌てて来たんだ。情けねえよな」
そうだったの。
王雅もサトル君の事、そんなに大切に想っていてくれたなんて。
「ううん、そんな事無い。それだけ王雅がサトル君の事、好きになってくれたって事じゃない。解るよ。私だって、お別れは辛いもん。子供たちの誰も、ご両親に返したくないって思うわ」
「美羽でも、そんな風に思ったりするんだ」
意外だ、というような顔を王雅に向けられた。
「言わないだけよ。思うのは勝手でしょ。私の手から離れていくのは、淋しいわ。とっても」
だって帰ってしまったら、もう私の子供じゃなくなってしまうもの。
それにこの施設は小さいから、子供たちが大きくなったら他の施設に託さなければならない時が来るの。
何時までも一緒にいる事は出来ないの。
ずっと一緒に、この施設でみんなが暮らしていけたらいいけど、それはできないから。
常に別れと隣り合わせで、私は生きている。
準備を整え、すぐにでもサトル君を迎えに来ると約束して、彼は帰って行った。
ただ、男一人の生活からいきなりサトル君を抱えた生活は、仕事をしている以上困難なので、サトル君が小学校に入るまでは、施設を保育園代わりに利用し、月謝を払うという事で話がまとまった。
月謝は要らないって言い張ったんだけど、内藤さんが、施設に世話になりっぱなしじゃ流石に気が引けるから、せめてもの気持ちだということで、月謝を払ってくれる事になったの。
仕方がないから、月謝は千円だけもらう事にした。もっと払うって言われたけど、これ以上は受け取れないって突っ撥ねた。
もう、本当に要らないのに。
サトル君は施設を出ると思ったけど、結局あまり変わらないの。一緒に夜寝る事が無くなるだけ。お別れしなくてもいいのは、嬉しい。
今後、準備が出来たら仕事帰りに内藤さんがサトル君を迎えに来る。サトル君は、内藤さんと一緒に、これからの自分の家に帰るの。
サトル君は、おうちが二つも出来て嬉しいって喜んでいた。お昼のお家は施設で、夜のお家はお父さんと暮らす家って。
子供は無邪気ね。そんな風にこの複雑な生活を楽しんでしまうなんて。
内藤さんを送り出し、一緒に帰ろうした王雅に声を掛けた。「せっかく来たんだから、お茶くらい飲んで行きなさいよ」
王雅ともう少しだけ一緒にいたくて、どういう訳かつい引き留めてしまった。
何時もの、アイスハーブティー。王雅も好きだって、美味しいって言ってくれるから、飲んで欲しくて淹れて出した。
「王雅。色々私達の事気にしてくれて、助けてくれて、本当にありがとう」
お礼はきちんと言っておきたかったから、言えて良かった。
貴方が来てくれなかったら、きっとサトル君はあのチンピラ男(坂崎って名前だったかしら)に連れて行かれて、大変な事になっていたと思うから。
私一人じゃ、サトル君を守ってあげる事ができなかったでしょうね。こういう時、女は非力で悔しい思いをする。
もっと強くなれたらいいのに。あんなクズ、一瞬で張り飛ばしてしまえるくらいに。
え? それじゃ、危険だから誰も私に近づけない、ですって?
それもそうね。普通の方がいいかしら。
え? 私は強くて美しい、ですって?
まあ、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ!
「いいって、気にすんな。俺が勝手にやったんだ。内藤とも偶然会ったワケだし。結果オーライだったな。でもな・・・・正直に言うと俺、最初は内藤に、サトルの事話すの、躊躇しちまったんだ。サトルを渡したくねえって思っちまってさ。サトルの事言えなくて、グズグズ悩んでたら、リョウから坂崎が来たって電話があって、慌てて来たんだ。情けねえよな」
そうだったの。
王雅もサトル君の事、そんなに大切に想っていてくれたなんて。
「ううん、そんな事無い。それだけ王雅がサトル君の事、好きになってくれたって事じゃない。解るよ。私だって、お別れは辛いもん。子供たちの誰も、ご両親に返したくないって思うわ」
「美羽でも、そんな風に思ったりするんだ」
意外だ、というような顔を王雅に向けられた。
「言わないだけよ。思うのは勝手でしょ。私の手から離れていくのは、淋しいわ。とっても」
だって帰ってしまったら、もう私の子供じゃなくなってしまうもの。
それにこの施設は小さいから、子供たちが大きくなったら他の施設に託さなければならない時が来るの。
何時までも一緒にいる事は出来ないの。
ずっと一緒に、この施設でみんなが暮らしていけたらいいけど、それはできないから。
常に別れと隣り合わせで、私は生きている。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる