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スマイル19・王様ピンチに現る

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 あれから何事もなく三日程が過ぎた。でも最近、施設周りがやけに物々しく感じるのよね。どうしてかしら。
 誰かに見張られているような気がするのよ。落ち着かないというか、何というか。
 ただの気のせいだとは思うんだけど。

 私の心も平穏を取り戻しつつある。もう、王様に心を乱される事なんか無いわ。安心ね。
 やっぱりあの男に関わるとロクな事にならないんだと思って、極力思い出さないように努めている。


 朝早く起きて子供たちの朝食の支度をして、片付けや掃除して、お遊戯して、時々午前中に買い物に走って、昼食の支度して、お昼寝させて、その間に溜まった仕事片づけて、夕飯の支度をしながらお風呂の用意をして、食事させて、順番に男の子と女の子をお風呂に入れて、就寝の準備して、子供たちが寝たら決まった内職のお仕事をこなして――私の一日はあっという間に過ぎていく。これが私の日常。何も狂う事は無い。


 王様が入る隙は無いの。


 今度、土曜日来るって言っていたわね。ポテトサラダもう一回食べたいって言ってたから、近々材料を買ってまた作ってあげましょう。
 本当にあの時の王雅の幸せそうにご飯を食べる顔ときたら――と、そこまで考えて慌てて首を振った。


 王様が入る隙は無いんだってば!


 私の心に勝手に現れないで欲しい。
 出会った頃のように、高慢で、女性をモノのように扱い、お金で買ったりする最低なセクハラ大王のままだったら、私はこんなに貴方の事は考えなかったのよ。貴方の変化なんか、見たくなかった。


 今頃は、さっさと契約すませてしまって、ポイされている予定だったのに。


 それなのにどういうワケか契約も保留になったままで、たまに抱きたいとか喰いたいとか、意味の解らない事を言ってくる。そういうのは、ちゃんと契約として進めて欲しい。流れとか勢いとかじゃなくて。
 こっちにだって、色々準備とかいるし。夜のお相手するなら留守番雇わなきゃいけないから、ちゃんと日程確認して予約入れておいてくれないと困るのよ。
 今からすぐヤるぜ、みたいなのは勘弁して欲しい。物理的に無理だから。


 そこ、ちゃんと言っておいた方がいいわよね。勢いでするのは無理だって。
 でも、何て言えばいいの?


 あなたたち(読者のみんなの事よ)いい方法あったら、教えてくれない?
 実践するわ。

 ああいうタイプは、きちんとハッキリ言っておいた方がいいわよね。
 どうしようか悩んだけれど、まあ、考えていても仕方ないか。考えるだけ時間の無駄だと思った。

「せんせーい」

 お昼ご飯の準備をしようとキッチンであれこれ動き回っていた私の所へ、サトル君がやって来た。

「ん、サトル君、どうしたの?」

「広場で遊ぼうと思って外に出たら、なんかねー、門の外から男の人の声が聞こえたんだ。お客様かなー、と思って」

「あら、そう? 呼び鈴鳴らなかったわよね。解った、見に行くわ」

「僕も行くー」

「じゃあ、一緒に行きましょう」

 サトル君と一緒に門の所まで向かったけれど、誰もいなかった。門を開けて外に出て、周辺を見回しても、やっぱり誰もいない。
 でも、三日程前から感じていた、不思議な視線と言うか、見張られているというか、そういう雰囲気は無くなっていた。

「誰もいないわね」

「ホントだー。さっき男の人の声みたいなのが聞こえて来たと思ったんだけどなぁー」

「そうなの? うーん・・・・でも誰もいないわね。どこかへ行っちゃったのかな? 用事があったらまた施設に来ると思うし、このまま門は開けておくわ。どうする、外で遊ぶ?」

「うん。遊ぶー」

「門の外には出ちゃダメよ? 勝手に外に出たらダメだからね。もし誰か来たら、また知らせてくれるかな?」

「わかったー」
 
「あ、今日はまだそこまで暑くないけど、あんまり外で遊び過ぎたら倒れちゃうから、三十分だけね。時間になったら、先生が呼びに来るから」

「はーい」

 サトル君は広場の滑り台の方に走って行った。そこへ、玄関からリョウ君やライタ君も飛び出してきて、一緒にあそぼ―と三人で仲良く遊び始めた。
 熱中症が心配だから、こまめに声掛ける様にしましょう。私は昼食の準備の途中だったから、キッチンへ戻って続きをすることにした。
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