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スマイル18・王様子供を守る
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しおりを挟むあ、どれだけ作ってるの、って思ったでしょう。
そうなの。言う通り大家族だから量が沢山いるんだけど、子供たちの好きなメニューを作ったら、何時も争奪戦になってしまうのよ。だから、タネを小さくして小ぶりにして焼いているの。
その方が焼き時間も短縮されるし、沢山の数を作ることができるのよ。これも作戦のうち。大きなハンバーグをどーんと一つ出すよりも、小さく五、六個出した方が沢山食べた気になるでしょ? おかわりも自由になるし。
余っても使い道があるのよ。ハンバーグのタネって結構色々使えるのよね。ミンチカツにも出来るし、野菜のはさみ揚げの中身にも使えるの。残りは別メニューにして利用しているんだけど、今日は余りそうになかったから、全部焼いちゃった。
徳用ジャンボ三パックもミンチ使ったのに、余らないなんてね。ふふっ。でも、みんなが沢山美味しいって食べてくれたら嬉しいわ!
「それよりさー、美羽。このポテトサラダも美味いな。なんかこの施設の食い物って、何でもメチャクチャ美味いな! どうなってんだ!?」
「ありがとう。愛情たっぷり込めて作ったものを、みんなで食べるから余計に美味しいと思うのよ」
「俺、こんな美味いポテトサラダ食った事ねーぞ。おかわりある?」
「ええ、あるわよ」
「お前からのキスも捨てがたかったんだけど、礼に夕飯って言っておいて、マジで良かったー。俺のセレクト、最高―。あ、おかわりくれ。いっぱい盛って。ハンバーグも入れて」
若干ヤラしいコトを言いながら、王雅は満面の王様スマイルで夕飯をあっという間に平らげていく。子供たちも王雅に負けずにしっかりご飯をモリモリ食べている。
私は、みんなが私の作ったご飯を食べてくれるのを見つめるのが、好き。
凄く幸せを感じられるの。
楽しい時間も、嬉しい時間も、幸せな時間も、みんなと分け合って暮らしていけるこの幸せが、永遠に続けばいいのに、と思う。
王雅におかわりを入れてあげたら、他のみんなもこぞって私の方にお皿を差し出してきた。
「順番に入れてあげるからね」
みんなの分、順番にハンバーグとサラダを入れたら、ご飯のおかわりまで要求された。
王雅に触発されて、みんなの食欲がいつも以上に増してるわ。ご飯足りるかしら。何時もより多めに炊いたんだけど、この調子じゃなくなりそうね。
「美羽、メシまだある? 白飯も美味いなー。もう最高。こんな美味い飯、初めて食った!」
王雅が満面の笑みでお茶碗を差し出してきた。あら、口元にひとつご飯粒が付いているわ。
「慌てて食べなくても、まだあるから大丈夫よ。それより口元にお弁当付いてるわ」
王様の口元にくっついていたご飯粒を取って、勿体ないからそのまま食べた。「本当に貴方、子供みたいな王様ね」
思わず笑ってしまった。
「・・・・なあ、喰わせてくれる?」
突然、真剣な顔で王雅が私に言ってきた。
「えっ? いいわよ。まだ何か、おわかりしたいのがあるの?」
「おかわりじゃねーよ。お前だ」
「はっ!?」
「だ・か・ら、お前だよ、お前! 真崎美羽が喰いた――」
「はい、ご飯のおかわり、どーぞっ!」
言葉を遮って、てんこ盛りにもったご飯を王雅の前に差し出した。
大勢の子供たちの前で、私が食べたいとか言うって、バカじゃないの!?
TPO(時と場合)をもっと考えなさいよね!!
せめて応接室で二人きりの時に言って欲しいわ・・・・って、ちが――――ぁうぅっ!!
ダメダメダメっ、絶対にダメ!
契約の夜のお相手ならともかく、そーいうのじゃないヤツはダメ!
な、ななな、何動揺しているの、私っ!
しっかりなさい!!
本当にもう、私ともあろうものが。
王様の言葉にこんなに動揺するなんて。
考えられないっ!
さっさと自宅に帰って貰わなきゃ。
じゃないと、心がもたない。
貴方に振り回されっぱなしだと、自分が自分でいられなくなっちゃうから。
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