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スマイル18・王様子供を守る
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しおりを挟む「承知しました。マサキ施設では、独身の男性職員は極力雇わないように致します。仮に雇ったとしても、既婚者や、間違いの起こさないと私が判断した方に限定致します。これで問題ありませんね? では、次の面会お約束の日にお越しください。失礼します」
「待って、待ってよっ、真崎先生! 私が困るのよお。助けて、ねっ?」
お母さんが私の腕を掴んだ。「サトルを連れて帰らないと、あの人に――」
「お母さんっ! また同じことを繰り返されるのですかっ! 以前、私と約束しましたよね? もう二度とサトル君を傷つけないって! サトル君を連れて帰るとどうなるか、お母さんだって、お分かりになるでしょう? 貴方達のお金のためなんかに、サトル君は渡せません。たとえ、実の母親にでもですっ!!」
彼女の腕を振りほどき、厳しく一蹴した。
「みんな、びっくりしたね、ゴメンね。さあ、行きましょう」
ぱっと笑顔に切り替え、お母さんを無視して、子供達を施設に入るよう促した。
サトル君は今も怯えて王雅の後ろに隠れ、彼の着用しているジャケットの裾をぎゅっと握りしめている。
「サトル、大丈夫だからな。俺がついてる。怖がらなくていい」
王雅が優しくサトル君に声をかけてくれて、お母さんから守るようにして施設内に連れて入ってくれた。
「サトルの母親と話あるんだったら、俺がガキ共をもう少し面倒みとくから、気にせず話せよ」施設に入り際、耳打ちされた。
「大丈夫、もういいの」
彼女と話す事なんか、何もない。
お母さんのせいで、王雅に帰ってもらうタイミングを失くしてしまった。
まだ帰らなくても、時間大丈夫なのかしら。一応今日は予定を空けてもらうようにお願いしていたけど、迷惑になるような事は避けたいし。
それより、サトル君大丈夫かしら。随分怯えていたものね。優しく声かけてあげよう。
「おい」
私が声をかける前に、王雅がサトル君の肩を叩いた時だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、もうしません!!」
サトル君は小さな体を震わせて、髪をかきむしり、泣き叫びながら暴れ出し始めた。
――これは、パニックを起こしてる!
どうしよう、と思っていたら、王雅が暴れ出したサトル君を、ぎゅっと強く抱きしめて腕の中に包んでくれた。
「サトル、大丈夫だっ。俺だ、王雅だ。何も怖くねーぞ。大丈夫、お前を苦しめる奴等から、俺が守ってやるから。だから、しっかり俺につかまってろ」
自分をかきむしるつもりのサトル君の小さな手が、王雅の背中に及んだ。強く背中をかきむしられている。でも王雅はおかまいなしに、サトル君を抱きしめたまま、大丈夫だから、と優しくサトル君に声をかけ続けてくれた。
王雅が、必死にサトル君を守ってくれている。
どうして、そこまでしてくれるの?
貴方、私を手に入れる為に、施設に出入りしているだけなんじゃないの?
「サトル、大丈夫だからな。俺がついてる、安心しろ。だから、もう泣くな」
「おに・・・・さん・・・・っ」
「大丈夫。もう怖くねーから。誰もお前を傷つけたりしない。酷い事するヤツは、ここにはいない。美羽先生や俺が、お前を守ってやるから。大丈夫、大丈夫・・・・」
震えるサトル君の背中を優しく撫でてくれた。随分時間が経ったけど、サトル君は次第に落ち着いてきた。
サトル君がパニックを起こしてしまったら、あんな風にすぐ落ち着くことは無かったのに。
優しい王雅の心が、サトル君を助けてくれたのね。
正直、私一人じゃこんな風に収める事は出来なかっただろうな。
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