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スマイル16・王様とキス
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何よ、それ。
思わずシャッターを押したけど、何故か今までで一番ドキドキした。
王雅があんな顔で笑ったの、初めて見た。
何時もエラソーで、子供みたいに笑う時があるのは知っていたけど、あんなに楽しそうに、本当の笑顔で笑う王様、私は知らない。
動悸が激しい。ドキドキしている。
ありえない位、動揺してる。
どうしよう。
私はその場を離れて、ちょっと人目のつかない場所に移動した。
今の、幻じゃないよね。
デジカメのデータを確認してみた。
最後にシャッターを押した何枚か、衝撃で手ブレを起こしているものもあったけど、綺麗に撮れているものがあった。
ついさっき見た、最高の、輝く王様スマイル。
これが、あの、王様?
ウソでしょう?
呆然と長い間データを見つめていたら、急に画面が暗くなった。
しまった、と思ったけど遅かった。カメラの電池がもう何度充電してもすぐ切れちゃうから、大事な場面だけ撮ろうと思っていたのに、データ確認なんかして電池の無駄遣いをしちゃったから、電池が切れてしまったんだわ。
ああ。もっと色々撮影したかったのに。
それよりもあの写真データ、消えてないかしら。
まだ、ドキドキが止まらなかった。
電池が切れてしまったので、今後の撮影は断念して、仕方なくデジカメは日焼け止めの為に着用しているUVパーカーのポケットに押し込んだ。
お泊り保育の写真は集合写真すら撮れないのは残念だけど、新しいカメラを買うお金も無いし、大切な充電器を壊したり失くしたりするといけないから、持って来なかったのよね。電池が切れちゃったのは、私の不注意だったから仕方ないわ。後でカメラを落としたりしないように、ちゃんと片づけておこう。
調理場まで戻って、江里ちゃんが焼いておいてくれたお肉や野菜をお皿いっぱいに乗せ、王雅の元へ向かった。
「お待たせ。遅くなってごめんね」
「おう、待ってたぜ」
王雅がお皿を受け取ってくれて、テーブルの中央に置いた。お皿の中身が空になっている子供たちの前に、冷めている方のお肉や野菜をよって、専用のハサミで小さく切って置いてくれた。
「慣れたものね」
本当に先生みたいだわ。
便利屋というかオーナーにはお給料も払わなくていいから、ずっと無償で助けてくれないかしら。
まあ、貴方みたいな男、この施設――というより私――に飽きたらもう私達の事は忘れて、二度と施設にも寄り付かなくなるでしょうけどね。
「まあな。今までこんな事やったこと無かったけど、前から面倒見てるし、慣れるもんだな。だから、お前が毎日どれだけ大変かって、よくわかる」
「大変なんかじゃないわ。毎日、とっても楽しいのよ。子供たちの成長が、傍で見れるんだもの」
思わず笑顔になった。身寄りのない天涯孤独の私が、みんなと一時的にも家族みたいに過ごせることが、何よりの幸せだもの。
暫くすると突然、王雅がキョロキョロと辺りを見回して、子供たちの様子を見ていたかと思ったら、子供たちからさっと背を向け、何と私を抱き寄せて口づけたの!
ビックリする程の早業で、止める暇が無かった。
「なっ・・・・んっ・・・・! ちょ、王雅っ・・・・こんなトコで、やめてよっ」
小声で文句言った。子供たちに見つかったら、大変だわ!
「うるさい。ガキ共に聞こえんぞ。いいのか? 俺は、別に見られたっていーけどな。こんなトコじゃなけりゃいいって言うなら、場所変えるけど?」
「そうじゃなくてっ・・・・んっ・・・・っ!!」
子供たちに見聞きさせられないから、ビンタも出来ずにされるがまま、口内を犯された。
激しく交わされる口づけに、息があがる。
散々キスされて、ようやく唇を離して貰えた。睨んでいると、まだして欲しいのか、とか、訳の分からない事を言われた。
して欲しいワケないでしょーがっ!!
思わずシャッターを押したけど、何故か今までで一番ドキドキした。
王雅があんな顔で笑ったの、初めて見た。
何時もエラソーで、子供みたいに笑う時があるのは知っていたけど、あんなに楽しそうに、本当の笑顔で笑う王様、私は知らない。
動悸が激しい。ドキドキしている。
ありえない位、動揺してる。
どうしよう。
私はその場を離れて、ちょっと人目のつかない場所に移動した。
今の、幻じゃないよね。
デジカメのデータを確認してみた。
最後にシャッターを押した何枚か、衝撃で手ブレを起こしているものもあったけど、綺麗に撮れているものがあった。
ついさっき見た、最高の、輝く王様スマイル。
これが、あの、王様?
ウソでしょう?
呆然と長い間データを見つめていたら、急に画面が暗くなった。
しまった、と思ったけど遅かった。カメラの電池がもう何度充電してもすぐ切れちゃうから、大事な場面だけ撮ろうと思っていたのに、データ確認なんかして電池の無駄遣いをしちゃったから、電池が切れてしまったんだわ。
ああ。もっと色々撮影したかったのに。
それよりもあの写真データ、消えてないかしら。
まだ、ドキドキが止まらなかった。
電池が切れてしまったので、今後の撮影は断念して、仕方なくデジカメは日焼け止めの為に着用しているUVパーカーのポケットに押し込んだ。
お泊り保育の写真は集合写真すら撮れないのは残念だけど、新しいカメラを買うお金も無いし、大切な充電器を壊したり失くしたりするといけないから、持って来なかったのよね。電池が切れちゃったのは、私の不注意だったから仕方ないわ。後でカメラを落としたりしないように、ちゃんと片づけておこう。
調理場まで戻って、江里ちゃんが焼いておいてくれたお肉や野菜をお皿いっぱいに乗せ、王雅の元へ向かった。
「お待たせ。遅くなってごめんね」
「おう、待ってたぜ」
王雅がお皿を受け取ってくれて、テーブルの中央に置いた。お皿の中身が空になっている子供たちの前に、冷めている方のお肉や野菜をよって、専用のハサミで小さく切って置いてくれた。
「慣れたものね」
本当に先生みたいだわ。
便利屋というかオーナーにはお給料も払わなくていいから、ずっと無償で助けてくれないかしら。
まあ、貴方みたいな男、この施設――というより私――に飽きたらもう私達の事は忘れて、二度と施設にも寄り付かなくなるでしょうけどね。
「まあな。今までこんな事やったこと無かったけど、前から面倒見てるし、慣れるもんだな。だから、お前が毎日どれだけ大変かって、よくわかる」
「大変なんかじゃないわ。毎日、とっても楽しいのよ。子供たちの成長が、傍で見れるんだもの」
思わず笑顔になった。身寄りのない天涯孤独の私が、みんなと一時的にも家族みたいに過ごせることが、何よりの幸せだもの。
暫くすると突然、王雅がキョロキョロと辺りを見回して、子供たちの様子を見ていたかと思ったら、子供たちからさっと背を向け、何と私を抱き寄せて口づけたの!
ビックリする程の早業で、止める暇が無かった。
「なっ・・・・んっ・・・・! ちょ、王雅っ・・・・こんなトコで、やめてよっ」
小声で文句言った。子供たちに見つかったら、大変だわ!
「うるさい。ガキ共に聞こえんぞ。いいのか? 俺は、別に見られたっていーけどな。こんなトコじゃなけりゃいいって言うなら、場所変えるけど?」
「そうじゃなくてっ・・・・んっ・・・・っ!!」
子供たちに見聞きさせられないから、ビンタも出来ずにされるがまま、口内を犯された。
激しく交わされる口づけに、息があがる。
散々キスされて、ようやく唇を離して貰えた。睨んでいると、まだして欲しいのか、とか、訳の分からない事を言われた。
して欲しいワケないでしょーがっ!!
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