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スマイル16・王様とキス

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「お兄さん喜ぶと思う。ガックン、ありがとう」

「はい、任せてください!」

 自分のお肉や野菜も取らずに、王雅の分だけ確保したガックンは、少し離れた日よけテントを張った大きめの机の所に走って行った。
 王雅、きっとあっちの方で不貞腐れているんだわ。エラソーな王様のクセに、本当に子供みたいな男ね。
 とりあえず王雅の事はガックンに任せて、肉や野菜の焼き係に専念した。さっき大量に作っておいたおにぎりも、大分減って来た。次のご飯が炊けたら、またおにぎりも作らなきゃ。ああ、忙しいわ。やっぱり王様の世話をしている場合じゃない。

 暫くあれこれ焼いていると、「とあ―っ!」と言いながら、お肉や野菜を争奪しに来た王雅が目についた。
 ふふっ。本当に子供ね。この子たちと変わらない。
 でも容姿が大人だから、子供たちよりも手が長い分摂取するのが上手いから、持っているお皿にどんどんお肉や野菜が貯まっていく。

「楽しいでしょ?」声を掛けた。

「あ、うん、まあな」

 ぶすっと膨れて拗ねていたのに、もう何時もの調子を取り戻していた。ガックンのお陰かしら。
 
「美味しいから、王雅もいっぱい食べてね」

「ああ。これじゃ足りねえから、もっと寄こせ。あと、皿と箸も」

「全部食べないでよ。図々しいわね」

 限度ってものがあるでしょうが。

「バカ、俺が食うんじゃねーよ。ガキの分だ。あっちでチビ共を食わしておくから、アイツ等が食えそうなやつ、後から追加で持ってきてくれ。頼んだぞ」

「そうだったんだ、図々しいとか言っちゃってゴメン」

 王雅が座っていた席の方を見ると、キューマ君、チイちゃん、マーサ君、ユウ君が座っていた。

「あの子たち面倒見てくれてるんだ。王雅、本当にありがとう。助かるわ」

 うっかり悪いコト言っちゃった。
 それにしても王雅ったら、本当に施設の先生みたいになっちゃったわね。
 子供たちを本当に大切にしてくれて、面倒まで見てくれるなんて。

 早速トレイに、お皿、コップ、お箸、お肉や野菜が切れる専用のハサミ、幼児用のスプーンやフォーク、お手拭き、ジュースやお茶の類を乗せたものをさっと用意して王雅に渡した。

「ちょっとここの手が離せないから、後からいっぱい焼いて持って行くね。暫くあの子たちのこと、お願い」

「いいぜ。任せとけ」

 本当に頼りになるわ。

 王雅を見送ったら、おにぎりが無くなっている事に気が付いた。御飯も炊けたから、いっぱいおにぎり作って、さっき仕掛けておいたふかし芋も出来上がったから、まりなちゃんに王雅たちの所へ持って行ってもらうようにお願いした。
 ちょっとみんなのお腹が落ち着いてきたから、焼くスピードを落としても良くなったので、焼き係を江里ちゃんに任せて、私は手持ちのカメラで子供たちの様子を撮影した。

 王雅やガックンも撮影しようと思って、カメラを向けた。
 丁度さっきまりなちゃんが持って行ってくれた、おにぎりとふかし芋を食べている。

「ガックン、コレ、美味いな!」

「ふおうでふね」

 ガックンはアツアツのふかし芋を頬張ったものだから、上手く喋れなくて、顔をもの凄く歪めてハフハフ言っている。


「プッ、アハハハッ!! ガックンの顔、スゲー変な顔!」




 その様子を見ていた王雅が笑った。






 それは、私が今までで見た中で、一番、輝いていた。








 最高の王様スマイルで、彼は笑っていた――







 
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