65 / 287
スマイル14・王様と遠足
6
しおりを挟む「ごめんなさい。あのね、王雅お兄さん、いつも僕たちを楽しませてくれるから、何かお礼ができないかなーって探してたら、綺麗なちょうちょを見つけたんだ。捕まえてお兄さんに見せたら喜ぶかな、と思って追いかけてたら・・・・そしたらすごく大きなハチが飛んできて、走っても走っても追いかけてくるから、逃げてたら迷子になっちゃって・・・・」
サトルくんがシュンとしながら王雅に謝った。
「俺を喜ばせる為に、こんなムチャな事したのか」
「ウン。ごめんなさい。いつも僕たちのためにありがとう、お兄さん! お礼がしたかったんだ」
満面の笑みのサトル君を見つめていた王雅は、本当に嬉しそうな顔で笑った。
「ホラ、立てるか。俺様の為に何かしようとしてくれるのは嬉しいけど、ムチャして美羽先生を困らせるのは、もうナシだ。俺様だって心配だ」
「ウン。ごめんなさい」
「サトルの優しい気持ちは、ありがたくもらっておく。俺様のことを考えてくれたのは、スゲー嬉しい。でもな、子供は素直に喜んでりゃそれでいーんだよ。また、面白いトコ連れてってやるし、施設でもスッゲーことして、遊んだりしよーぜ」
「ウン、したい!」
「但し、美羽先生や、俺様に心配かけるな。これからは、ムチャして一人で勝手な行動はしないこと! いいな?」
「はーい!」
「よし、良い返事だ。来いよ」
王雅は、本当のサトル君のお兄さんみたいだった。
彼はさっとサトル君を抱き上げると、そのまま肩車をしてくれた。
「うわーっ、高い! スゴーイ!」サトル君が歓声をあげた。
サトル君の声に、王雅はとびきりの王様スマイルを見せた。
何時もの自信たっぷりの俺様な笑顔じゃなくて、みんなを大切に想ってくれる、優しい笑顔。
貴方、最初から子供たちのことは邪険に扱ったりせず、大切にしてくれていたわね。
今じゃそれが、もっともっと浮き彫りになるような輝く笑顔になっている。
ドキドキする。貴方の笑顔を見ると、私は心をぎゅっと掴まれて、おかしくなってしまう。
「お兄さん、すごいよっ! 僕こんなの初めて!!」
よかったな、って王雅が笑った。
最近貴方、本当によく笑うようになったわね。
「美羽、戻るぞ。他のガキ共が心配して待ってる。それにもし、これからもお前が困ったら、何時でも駆けつけて守ってやるからな。だから、俺様を頼れ。ホラ、手貸せよ」
王雅が手を取ってくれた。
繋いだ手が温かくて、心地よかった。
サトル君を肩車しているから、何だか三人でいると、本当の家族みたいな気分になった。不思議な、優しいぬくもりに包まれている。繋いだこの手を、放したく無いって思った。
温かい、優しい王雅のキモチが、繋いだ手から伝わってくる。
ねえ、王雅。
本当に、私を好きだって思ってくれているの?
本当なの?
だったら――・・・・そこまで考えて、笑いがこみ上げた。
バカね。私、一体何を考えているの。
女をお金で買おうとするような男が、まともに私だけを愛して、一生大切にしてくれるワケないじゃない。
しかも貧乏施設を経営している貧乏女で、関係は、王様と奴隷よ? どう考えても、釣り合うわけ無いじゃない。
ちょっと助けて貰ったからって、ちょっと甘く囁かれたからって、いい気になって心を赦したらダメよ。
赦したら最後、飽きて捨てられるんだから。
解ってる。
私は、一人で強く生きていくんだから。
さっきは慌てていて、ちょっと取り乱しただけ。
私は絶対に、もう誰も好きになったりしたいし、
誰も信用なんかしないんだから――
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる