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スマイル14・王様と遠足

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 みんなが待っている入口付近にはサトル君の姿が無かったので、更に奥に進んだ。

「うわーんっっ!! こわいよーっ、助けてーっ!!」

 奥へ進んでいくと、サトル君の泣き声が聞こえて来た。

「どうしたのっ!?」

 サトル君は慌てて私にしがみついてきた。「せっ・・・・先生っ・・・・!! おっきな・・・・ハチが・・・・っ、ううっ・・・・」

 見ると、巨大なスズメバチがサトル君めがけて飛んできた。


「きゃあぁ――っ!!」


 私はサトル君を抱きしめて、サトル君が刺されないように庇って、その場に蹲った。目標物を失ったハチは、私の白いカットソーの肩辺りに止まった。

 動いたらダメ。絶対、刺されちゃう!
 こんな小さな子供、スズメバチなんかに刺されたら、下手したらショック死しちゃうわ。
 何とか・・・・何とかしないと。

 でも、動けない。私が刺されて万が一の事があっても困る。
 私が倒れたりしたら、誰があの子たちの面倒を見るの。
 どうしよう。



 誰か、助けて。




 王雅――・・・・



 

「美羽っ、サトル!!」


 王雅の声が聞こえて来た。「ドコだ――っ!?」


 心配して、探しに来てくれたんだわ。
 王雅の声を聞いて、こんなにほっとするなんて。
 しかも、助けて欲しいって思った時、一番にアイツの顔が浮かんでしまうなんて。

 ダメね、私。
 こんなに王様を頼ってしまうなんて。
 一人でやっていくって、恭ちゃんと別れた時、あれだけ心に決めたハズなのに。


「美羽、大丈夫だ! そのまま、もう少し辛抱してろ。絶対、動くなよ!」


 私やサトル君の姿を見つけてくれた王雅がすぐ駆け寄って来て、羽織っていたジャケットを脱ぎ、内ポケットから小さなスプレー缶を取り出した。更に、その辺りに落ちている木の枝を拾ってそれでハチをつつき、私の肩に止まっていたハチを追い払ってくれた。
 すぐに脱いだジャケットを私達に被せてくれて、さっき取り出したスプレーをハチに吹き付け、あっという間に撃退してくれた。


 なにそれ・・・・。完全に王子様じゃない。
 ただのセクハラ大王のクセに、カッコイイ事しないでよ。
 
「怪我無いか、大丈夫か!? もうハチは退治したから大丈夫だ」

 顔を覗き込まれた。

「王雅・・・・もう大丈夫なの?」

「お兄さん・・・・ひっく。うわーん、怖かったよー!!」

「サトル、美羽も、怪我はねーんだな!? 良かった!!」

 王雅に包まれた。私達を安心させてくれようとして、大丈夫だから、って言ってくれた。
 力強い。守られているって感じがする。私は王雅の背中を抱き返した。


 ほっとする。
 温かい――


「サトル、どうしてこんな奥に入って来たんだ。美羽先生も心配すんだろが」

 王雅がサトル君の髪を撫でて、落ち着かせてくれた。「もう大丈夫だ。男なら泣くな」

「はい、ごめんなさい」

「美羽も、ムチャせず困ったら呼べ。俺様が、守ってやるから」

「うん。そうする。来てくれてありがとう、王雅」

 素直にそう言って、背中に回した手に力を込めた。


 ありがとう。王雅。
 助けてくれて、本当にありがとう。
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