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スマイル13・王様プールを作る

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 アンタだって、そうでしょ。
 普通の男ならまだしも、大企業の御曹司が貧乏女を惚れさせて、どうするつもりよ。
 一生面倒見てくれるとは、到底思えない。手切れ金たっぷり包んで縁切れ、みたいな事するんでしょ。


 解ってるんだから!!


「俺がお前を好きなんだから、施設を潰すとか、土地を取り上げるとか、そんなこと言わねーよ」

「今はそうかもしれない。でも、私を手に入れて、飽きたらどうするの、って聞いてるの。結婚するとかなんとか言っておきながら、どうせ二、三回抱いたら、今までの女の人みたいにポイ捨てするんでしょ。口約束なんて、簡単に破れるのよ。この施設の土地を手に入れるのに、五十億円も使ったんでしょ。権利書は王雅の名義なんだから、五十億円を回収しようと、ホテルの時みたいにこの施設を潰す計画を考えない保証、あるの? 私は、それが心配なの!」

 私は施設さえあれば、それでいいのよ。
 男なんて、要らないわ。
 
「絶対大丈夫だ。信じてくれ」

「そんなの何の根拠もないいし、信用できない。どうせ、今までそうやってウソ吐いて、何百人もの女の人、騙して泣かせてきたんでしょ。私は、そうはいかないわよ」

 思い切り睨んでやった。

「そ、そりゃあ・・・・今までの女には、悪いことしたかなって、ちょっぴり思うけど・・・・でも、向こうだって俺のルックス目当てだったり、金が欲しくて次から次へと勝手に寄って来るんだ。拒む理由もないし、今までは、合理的だったって話だ。酷い時もあったかもしんねーけど、それは、若気の至りってヤツだ。別に好きでもなかったしな。だけど、もう二度とそんな事しねーよ。今後一切、他の女を傷つけたりしない。誘われても、全部きっぱり断る。俺は、もうお前じゃなきゃダメなんだ」

 王雅は真剣に訴えてくるけど、本当の事は解らない。


 絶対大丈夫ですから――信じても、大丈夫なためしなんか、殆ど無かった。
 王雅だって、同じに決まってる。

 

「あのな、美羽。お前は、俺様をコケにしたりビンタしたり、他の誰もができなかったことを、いとも簡単にやってのけたんだ。最初はどーにかしてやろうって思ったけど、いつの間にか、ガキ共の為に何時も一生懸命なお前が、好きになっちまったんだ。お前は、俺が初めて惚れた女だ。そんなお前が大切にしているもの全て、俺も大切にしたいって思う。だから、施設は俺が絶対に守ってやる。約束する。それに、考えてもみろよ。俺と結婚したら、権利書は夫婦共有財産になるわけだから、お前が管理できるんだ。返すもへったくれもねーだろが。お前が俺様を手に入れてキープしておく方が、施設も含めて安泰だろ? それに、俺はここに居るガキ共、結構好きなんだ。今日のプールだって、アイツ等が喜んでくれたらいいなって・・・・美羽だけじゃなくて、ガキ共も喜んでくれたらなって思ったんだ。それだけは、解って欲しい」


 好き――ねぇ。


 私が今までの女性と違って珍しいタイプだから、ちょっとのぼせ上がっているだけだとは思うけど。
 どうせ手に入れたら、飽きてポイするのは目に見えているのに、どういうワケか、王雅に心が傾いてしまう。
 それはきっと、今日、王雅と一緒に過ごして、彼に何ひとつ嘘偽りが無いって、思ったからでしょう。
 王雅が言っている事は、本当だと思う。

 本当だからこそ、きっと飽きられるのも早い。
 私に満足したら、次が控えてる。貴方の周りには、私の代わりなんて、幾らでも掃いて捨てる程いるわ。勝手に女の方からも寄って来るでしょう。

 でも、私は違う。次なんて無いの。

 だから、貴方に心を赦すワケにはいかない。
 それなのに、前みたいに全力で拒否できないのは、何故なの。

「そうね。王雅が、今日は子供たちの為に、本気で一生懸命やってくれたってことは解るわ。・・・・だから、権利書の事も含めて、王雅の事はもう少し考えたい。昔から施設の事で色々あるから、簡単に人を信用することができないの。ごめんなさい。でも、私の事本当に好きだって言うんなら、待てるでしょ」

「エラソーに」

 笑いあった。
 不思議と、楽しい気分だった。


「俺の事、イヤとは言わせねえからな。絶対、好きだって言わせてやる」


 強引に引き寄せられたかと思ったら、口づけされた。
 ドキン、と心が跳ねた。

「調子に乗らないでよっ、ヘンタイ!」

 慌てて離れた。


 どうしてなの。
 今日の私は、本当におかしい。
 私が、私じゃないみたい。

 王雅の事なんて、何とも思っちゃいなかったハズなのに。




 どうして貴方に、こんなにドキドキしてしまうの――?




 
 
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