上 下
53 / 287
スマイル13・王様プールを作る

しおりを挟む
 王雅が私のバースデーパーティーをやってくれてから、早くも一週間が経った。
 もうすぐ夏本番の季節になる。暑さが本格的になってきた。
 毎日のように施設に来ていた王様は、最近施設に来なくなった。

 指輪、まだ返せていない。
 売れって言われたけど、売るのも忍びないし、そんなお金受け取るワケにはいかないわ。


 そうそう。最近子供たちが、王雅は施設に来てくれないのか、って言い出すようになった。困ったわね。
 指輪も返したいし、この前もらった名刺に確か連絡先が書いてあったから、電話してみようかしら。
 でも、電話代がかかるからなぁ。
 フリーダイヤルだったらいいのに。


「楽しく生きている事と、美味しいご飯が食べられる事に感謝して・・・・いただきます」


 お食事前のお祈りを行って、朝食を開始した。
 今日は食パンと、スクランブルエッグと、手作りフルーツのヨーグルトサラダ。暑くなってきたから、さっぱり食べれるメニューが中心になる。
 お昼は徳用うどんで、冷やしうどんにするの。

 朝食を食べていると、突然ガラガラと食堂の扉が開いた。
 扉を開けて中に入ってきたのは、王雅だった。「よお、久しぶり」

「こんな朝早く、どうしたの?」

 急に来たと思ったら、こんなに朝早く・・・・。王様は常識というものを知らないのかしら。

 来るのは別に構わないけど、せめて朝十時以降に・・・・。
 今日は水道業者が来るとかで事前に連絡があったから、朝から門や玄関を開けておいてくれって言われいてその通りにしていたから、呼び鈴も鳴らさずに勝手に入ってきたのね。

「ちょっと面白いことやろうと思ってさ、来たんだ」

 すぐ傍に来られて、紙袋を渡された。中には綺麗にラッピングされたものが入っている。
 何かしら。


「お前ら、メシ食ったら外に来いよ! 面白いモン用意してるから!」


 なんだろう、面白いもの気になる、とか、子供たちが騒ぎ出した。

「外で待ってるからな」彼は立ち去り際、私に囁いた。「コレ、絶対着てくれよな」

 さっきの紙袋を指差して、王様は食堂を後にした。


「面白いものって何だろーっ! 早く行こーっと」

 早速サトル君がサラダを口に頬張って、食パンも口いっぱい放り込んだ。

「あっ、サトル君、喉につまっちゃうわ。王雅お兄さんが来てくれて嬉しいのはわかるけど、もう少し落ち着いて」

 王雅が来たものだから、子供たちは慌てて食事をし始めた。
 サトル君だけじゃない。
 チイちゃんやキューマ君までも、慌ててヨーグルトを頬張っている。マーサ君に至っては、慌てすぎてスプーンの中のヨーグルトやフルーツをトレイに食べさせる――早い話が零している――始末。

 王雅のお陰で、ちょっと食事が混乱した。

 ガックンが一番に食べ終わり、ごちそう様でしたと合掌して、外に飛び出して行った。
 食べるのは男の子の方が早いから、続いてリョウ君やライタ君が出て行った。

 小さい二歳組の子供たちには私が食事の補助をして、早めに食事を終わらせた。
 アイリちゃんがキューマ君を待っていてくれて、上手に歩けないキューマ君の手を引いて外へ連れて行ってくれた。

 洗い物はこの際後ででいいわ。食器を流し台の桶に付け、食堂のテーブルの片付けだけさっさと終わらせた。
 そういえば、絶対着てくれとか言われて、さっき紙袋を渡されたんだっけ。
 何が入っているのかと思い、開けてみると、右が赤、左が黒色の、中央にゴールドリングが付いていて、露出が激しく高い、恐ろしくエロチックな水着が入っていた。



 何なのよコレは――っ!?
 まさかこれを着て、夜の相手をしろとか言うんじゃないでしょうね!?



 一体どういうつもりなの!
 こんなハズカシー水着、着れるワケないでしょーがっ!
 文句言ってやるっ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかバーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

裏切られたのは婚約三年目

ララ
恋愛
婚約して三年。 私は婚約者に裏切られた。 彼は私の妹を選ぶみたいです。

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

溺愛されて育った夫が幼馴染と不倫してるのが分かり愛情がなくなる。さらに相手は妊娠したらしい。

window
恋愛
大恋愛の末に結婚したフレディ王太子殿下とジェシカ公爵令嬢だったがフレディ殿下が幼馴染のマリア伯爵令嬢と不倫をしました。結婚1年目で子供はまだいない。 夫婦の愛をつないできた絆には亀裂が生じるがお互いの両親の説得もあり離婚を思いとどまったジェシカ。しかし元の仲の良い夫婦に戻ることはできないと確信している。 そんな時相手のマリア令嬢が妊娠したことが分かり頭を悩ませていた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...