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スマイル11・王様とコロッケパーティー
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しおりを挟む「なっ、なんだよ」
でも、不思議と不愉快じゃないのよね。
王様らしい言葉に、思わず笑顔が零れた。
「ありがと。考えとく」
ま、せいぜい頑張りなさい。無駄だと思うけど。
「お、おう。なるべく・・・・前向きに考えとけよ」
王様は照れながら、再びおにぎりと格闘を再開した。
準備が整ったので、早速コロッケパーティが始まった。
近所の人が大勢押しかけて来て、施設の小さな広場が人で溢れていた。
手持ちのデジタルカメラで何枚か写真を撮った。楽しい様子の写真が撮れたので、満足だ。
王雅の様子を見ると、彼は人込みを避けて隅の方でパーティーの様子を見ていたから、声を掛けた。「食べないの?」
「ああ。どうも人ごみは苦手でな。別に、食わなくても平気だし」
「ダメよ。ちゃんと食べなきゃ! ホラ、みんな喜んでるんだから、アンタも来なさい」
王雅を広場に押し出した。すると、王雅が子供達に一斉に取り囲まれた。
口々に、お兄さんありがとう、コロッケ沢山食べれて嬉しいよ、お兄さんが作ってくれたおにぎり美味しいよ、なんてお礼を言っている。
王雅は照れながら、嬉しそうにしていた。
子供達には、本当に好かれているわね。
子供って、わかるのよ。
自分の事を好きでいてくれるかどうか、愛情を持って接してくれているかどうかって。
貴方は、子供が好きなのね。
自分では気が付いていないでしょうけど、貴方自身が子供みたいだもんね。
マサキ施設の――私の子供たちを大切にしてくれて、ありがとう。
暫くすると、さっきまで嬉しそうにしていた王雅が、空を見つめてぼんやりしていた。
「王雅。どうしたの? ぼんやりしちゃって」
「ん、あ、いや・・・・美羽の作ったおにぎりはメチャクチャ美味いのに、俺の作ったおにぎりはあんま美味くねーな、って思って。ガキも気ィ遣って無理して食ってるし」
「そんな事無いわよ。美味しいわ。私も食べた」
「えっ!? 食うなよ。そんなマズイもん! べちゃべちゃで、見た目も酷いし・・・・」
「そんな事気にしてたの? 私もそうだけど、子供たちはちゃんと解ってるのよ」
「何が」
「王雅が、心を込めて作ってくれた、って事をよ。確かに見た目はよくないけど・・・・でも、みんなの為に一生懸命作ってくれたでしょ。それを解ってるから、みんな美味しいって食べるのよ。誰も気なんか遣ってないわ」
何だ。王様は、つまらない事気にするのね。
最初から上手くできなくて当然なのよ、気にしないで、って笑い飛ばしておいた。
「今日は初めてだったから上手く出来なかったけど・・・・今度は、もっともっと上手く作ってやるよ」
やっぱり負けず嫌いなのね。
貴方、子供みたいな王様ね。
その後、パーティーはコロッケが無くなるまで続き、近所の人たちがお礼に持ってきてくれたお菓子で、続いてお菓子パーティーになった。
とっても楽しかった。
今日は一日慌ただしかったけど、王雅のお陰で楽しいパーティーが出来た。
商店街が閉鎖になっていたのは本当に驚いたし、最初はどうしようかと思ったけど、子供達も喜んでくれて、結果オーライだったけどね。
王雅は何をしでかすか、先が読めなくて解らない。
本当に子供みたいな男なんだから。
私は、応接室に置いてあるアルバムを棚から取り出した。もう随分沢山になった、マサキ施設の今までの歴史と想い出。
少しずつ撮りためては、写真をアルバムに貼っているの。何気ない日常の、大切な想い出。
今日のパーティーも、その中のひとつ。
さっきプリントアウトしたばかりの写真を、その中に収めた。
王様が、子供達と楽しそうにコロッケやおにぎりを食べている写真を――
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