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スマイル11・王様とコロッケパーティー
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しおりを挟む「俺は・・・・お前に喜んで欲しいだけなんだ。じゃあ、どうやったら喜んでくれるんだよ」
「それは、自分で考えなさい」
「わかんねーから聞いてんだよ!」
「それを考えるのが、モテる男の仕事でしょ。本人に直接聞いてどーするのよ」
あはは、と笑った。
本当に面白い男。
とりあえずこれでお金を使ってどうこうするっていうのは、大丈夫でしょう。
これ以上商店街のものを買い占めたりしたら、近隣住民が迷惑するわ。
話ながら大量におにぎりを拵えていくと、感心したように王雅が言った。
「何でお前、おにぎり作るのそんなに早いし綺麗なんだよ? おにぎりマシーンか」
「おにぎりマシーンて・・・・失礼ね。こんなの慣れよ。毎日子供たちのご飯作ってるもん」
「そっか・・・・大変じゃねー? 毎日毎日よー。若いんだから、普通もっと遊んだりしたいとか、思うだろ」
「ううん、思わない。私が遊びに行ったりしたら、誰が子供達の面倒見るのよ」
まあ、お坊ちゃまからしたら、私のこの生活は考えられないでしょうね。
「でも・・・・何時かはアイツ等だってここを出て行くだろ? お前はずっと一人じゃねーか。淋しくねーのかよ。恭一郎も出て行ったし」
「残念ながらここに入ってくる子供たち、後を絶たないの。ここに居る子は、皆ワケありの子供たちばかり。捨てられたり、虐待されたり・・・・まあ、理由は色々よ。勿論、この施設が無くなるのが理想の世の中よ。だって、皆がちゃんと両親の元で暮らせるんだもの。そんな幸せな事って無いよね」
「両親揃ってりゃ幸せってのは、違うぜ」
「どうして?」
王雅がまた淋しそうな顔を見せた。
この男は、時々こういう顔をする。
お金持ちだから、私達みたいな庶民で素朴な愛情には無縁で、もしかしたら、そういう愛情に飢えているのかもしれないわね。
「どうしてって・・・・そりゃ、りょ、両親揃ってたって、家に居づらいガキだって居るだろーが。虐待とか、あんだろ」
虐待――苦しい過去を思い出して、思わず顔が歪んだ。
「・・・・そう、よね。両親揃ってても、ここに来る子供が居るんだもんね。だからかな。特に皆には淋しい思いさせたくないのよ。子供たちが幸せだったら、私も幸せだから」
子供たちが幸せだったら、私も幸せだから――優しい美幸おかあさんの口癖を思い出した。
久信おとうさんと、美幸おかあさんに深い愛情をいっぱい注いでもらったから、私は再び立ち上がれたの。
子供は、誰もが平等に愛され、育つ権利があるのに、それを奪う大人がいる。
そんな大人から、子供を守るの。
だから私は、あの二人が私にしてくれたように、マサキ施設に来てくれた子供は、どんな子でも全力で愛するって決めてるの!
「そんな事言ってたら、お前の青春二十代どころか、あっという間に年寄りだろ」
「いいのよ。子供たちに囲まれておばあちゃんになれるんだったら、嬉しいわ」
「じゃあ・・・・今のガキ達もいなくなって、新しく施設に来るガキも居なくなったら・・・・お前、ひとりじゃねーか」
「それは・・・・ちょっと淋しいかもしれないけど、でも、いいわ。だって――」
そんな素敵な未来になればいい。
「それだけ、未来の子供たちが幸せだってことでしょ!」
それを想うと、心から笑顔が溢れた。
「じゃあ――・・・・今なら俺がお前の事、貰ってやってもいーぜ。そんな忙しくて恋愛してるヒマ無し女なんか、嫁ぎ先なんて到底見つかんねーだろ。だから、俺様が仕方なく貰ってやる」
俺様が仕方なく貰ってやる、ですって?
「王雅・・・・」
誰に向かって言ってんのよ。
アンタが私に頭を下げて、お願いですから俺を貰って下さい、っていうならともかく。
もし言われても、要らないから結構です、って言うけどね。
もしくは、お願いですから俺の嫁になって下さい、でもいいけど。
どっちにしろ断るから。
本当に、ムチャクチャね。この王様は。
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