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スマイル11・王様とコロッケパーティー
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しおりを挟む「これ、アンタの仕業でしょ! 一体、どういうことなの!?」王雅につっかかった。
「何が? あ、気に入ってくれたか? コロッケ、手に入れるのに並ばなくてもいいようにしておいた。数はたっぷりあるだろ。好きなだけ持って帰れよ」
「どういうつもりなのかって聞いてんのよ!! 何やったの!? 商店街、どうなっちゃったのよ! まさか潰したんじゃないでしょうね!!」
「商店街・・・・ああ。この事か。潰すなんてそんな野暮な事はしねーよ。一日、お前のために買い占めたんだ」
予想外の言葉に、驚く程素っ頓狂な声が出た。「かっ・・・・買い占めたぁ!?」
「そっ。俺様の力があれば、何だって出来るんだ。お前が必死こいて並んでちょっとの数しか買えないコロッケだって、ホラ」王雅は露天を指した。「今日は特別貸切だぜ。このコロッケ、全部お前のだ。どうだ、嬉しいか?」
信じられない。
この男は、お金の力で、何でも手に入れてしまうお坊ちゃま。
コロッケ全部買い占めて、嬉しいか、ですって!?
考えたらわかるでしょう!
嬉しいワケないじゃない!
バッカじゃないの!!
何故か、怒りと悲しみがこみ上げた。
気が付くと、王雅の事を張り飛ばしていた。
「アンタ、本当に救いようが無いバカね!! こんなコトして貰っても、私はちっとも嬉しくなんかない! 本当、アンタって可哀想。人の気持ちがこれっぽっちも解らないなんて」
「はあ、何言ってんだ! コロッケたらふく食えりゃ、嬉しいだろーが! ガキ共だって喜ぶしよ、そう思ってやってやったのに、折角の好意を無駄にしやがって! 何が可哀想――・・・・」
左頬を押さえながら、私の剣幕に負けじと対抗していた王雅が、私の顔を見て言葉を詰まらせた。
私自身も驚いている。
どうしてだろう。涙が、頬を伝っていた。
「アンタって、何も解ってない。私の為だけにこんな事をしたのだったら、この辺りに住む大勢の人は、一体何処で買い物をすればいいの? 他の人の生活とか、考えた事ある!?」
「いや、そこまでは・・・・」
「アンタが言うみたいに、お金があったらそりゃ楽にはなるわよ。生活だって豊かになるし、子供達にひもじい思いさせなくて済むわ。でもね、アンタのその何でもお金で解決するやり方は、何も産まない。感謝の気持ちとか、人を大切にする気持ちとか、本当に毎日を生きていく事がどれ程大切で、素晴らしいかなんて事、絶対解らない!!」
とても辛くなって、さっさとその場を後にして施設に戻った。
どうしてこんなに悲しくなるのか自分でも良く解らなかったけど、王雅のコト、ちょっとでもイイ奴だなって思っちゃったから、人のキモチとか、痛みとか、苦しみとか、そういうコトを何一つ考えずに、何でもお金で解決しちゃうその卑怯なやり方が、赦せなかったんだと思う。
でも、王様は、『お金で解決する方法』しか知らないんだろうな。
きっと、誰も彼に正しい人としての生き方を、教えてくれる人がいなかったのだろうと思う。
だから、あんなコトしか出来ないんだ。
王様も、本当は可哀想なのかもしれない。
・・・・怒って叩いて、悪かったかな。
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