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スマイル8・王様の宣言
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アイリちゃんは面倒見がよくって、人懐っこい女の子なの。キューマ君の事、一番気にしてくれているわ。
それに、私の事を先生じゃなくて、名前が美羽だから『みーちゃん』って呼んでくれる。
何にでも『ちゃん』付けするのが好きみたい。ガックンの事でさえ、ガッちゃんって呼んでるし。
アイリちゃんが面倒見がいいのは、きっと、酷いネグレクトに遭ったからだと思う。
自宅にずっと放置されて、酷い状態で発見されたから。
初めてここに来た時、もの凄く甘えられた。放っておかれないように、私の傍を片時も離れなかったの。
今は随分落ち着いて、面倒見のいいお姉さんになっているのよ。
「せんせーいっ。今日のおやつに、ももゼリー作ろうよーっ」
アイリちゃんがももを食べたいって言ったものだから、その隣に座っていたミイちゃんがそんな事を言い出した。
ミイちゃんはおかっぱ頭の元気はつらつな女の子。ちょっとつり目で、気が強い。今は四歳だけど、今年五歳になる。リョウ君と同じ学年になるのかな。
お菓子作りにお料理が大好きなの。ご飯やおやつを作る時、いつも私のお手伝いをしてくれる。しっかりもののお姉さん。みんな、頼りにしているの。
「よーし、じゃあ今日の特売チェックして、もも缶が安かったら、ミイちゃんにお使いに行ってもらおうかしら」
「いくいくーっ! わーいっ」
ミイちゃんがくるくる回り出した。彼女は、ダンスも上手なの。身体を動かすことが、とにかく大好き。
「ミイ、うっせーぞぉ!(うるさいぞぉ) 今、紙芝居聞いてんだよー」
「なによライタ。アンタ、年下のクセに何時もエラソーよねっ」
ミイちゃんに文句言っているのは、イガグリ頭がトレードマークのライタ君。見るからにヤンチャ坊主で、その通りヤンチャよ。一日一回は私に怒られている。
ライタ君は三歳なのに、口が達者なのよね。今年で四歳になるから、アイリちゃんと同じ学年になるのかな。
同じ学年でも、男の子と女の子じゃ、全然違う。
本当に、どの子も個性的でカワイイし、私はみんなの事が大好き!
「こら、二人共。もう少し静かにできないか? 美羽先生が続き読んでくれるから、さあ、集中、集中―」
「はーいっっ」
恭ちゃんが優しく注意すると、子供達が元気に声をあげた。
楽しく紙芝居の続きを読んで、その後ピアノを弾いて童謡を歌ったりお遊戯をして、たっぷり楽しんだ。
※
はーっ。久しぶりに心穏やかに過ごせたわ。
この前恭ちゃんが持ってきてくれた援助金のやりくりを考えておこうと、お遊戯の後は自由遊びの時間にして、私は仕事部屋に向かった。
恭ちゃんはガックン達とサッカーするって、施設の小さい広場で遊んでいる。
家計簿をつけていると、ミイちゃんとアイリちゃんが、お兄さんが来てくれたよぉー、と言って王雅を連れて来た。
・・・・昨日の今日よ?
王雅って、本っっっっ当にヒマなのね。
用事も無いのに施設に来たりして、他にすることないのかしら。
「あら。アイリちゃんとミイちゃんがお兄さん案内してくれたの? 有難う」
子供達に罪はないので、笑顔でお礼を言っておいた。
ごゆっくりー、と王雅に笑いかけて、二人が部屋を出て行った。
「よお」
「何しに来たのよ」再び帳簿に目を落とし、顔も上げずに聞いた。
「オーナーが、自分の持ち物の土地に来ちゃいけねーのか」
「・・・・・・」
無言で睨みつけた。
何がオーナーよ。無理矢理花井から土地を買い取っただけのクセに。
しかもそれ、私の身体が目的だっていう、サイテーの思惑があるからなのに。
それに、私の事を先生じゃなくて、名前が美羽だから『みーちゃん』って呼んでくれる。
何にでも『ちゃん』付けするのが好きみたい。ガックンの事でさえ、ガッちゃんって呼んでるし。
アイリちゃんが面倒見がいいのは、きっと、酷いネグレクトに遭ったからだと思う。
自宅にずっと放置されて、酷い状態で発見されたから。
初めてここに来た時、もの凄く甘えられた。放っておかれないように、私の傍を片時も離れなかったの。
今は随分落ち着いて、面倒見のいいお姉さんになっているのよ。
「せんせーいっ。今日のおやつに、ももゼリー作ろうよーっ」
アイリちゃんがももを食べたいって言ったものだから、その隣に座っていたミイちゃんがそんな事を言い出した。
ミイちゃんはおかっぱ頭の元気はつらつな女の子。ちょっとつり目で、気が強い。今は四歳だけど、今年五歳になる。リョウ君と同じ学年になるのかな。
お菓子作りにお料理が大好きなの。ご飯やおやつを作る時、いつも私のお手伝いをしてくれる。しっかりもののお姉さん。みんな、頼りにしているの。
「よーし、じゃあ今日の特売チェックして、もも缶が安かったら、ミイちゃんにお使いに行ってもらおうかしら」
「いくいくーっ! わーいっ」
ミイちゃんがくるくる回り出した。彼女は、ダンスも上手なの。身体を動かすことが、とにかく大好き。
「ミイ、うっせーぞぉ!(うるさいぞぉ) 今、紙芝居聞いてんだよー」
「なによライタ。アンタ、年下のクセに何時もエラソーよねっ」
ミイちゃんに文句言っているのは、イガグリ頭がトレードマークのライタ君。見るからにヤンチャ坊主で、その通りヤンチャよ。一日一回は私に怒られている。
ライタ君は三歳なのに、口が達者なのよね。今年で四歳になるから、アイリちゃんと同じ学年になるのかな。
同じ学年でも、男の子と女の子じゃ、全然違う。
本当に、どの子も個性的でカワイイし、私はみんなの事が大好き!
「こら、二人共。もう少し静かにできないか? 美羽先生が続き読んでくれるから、さあ、集中、集中―」
「はーいっっ」
恭ちゃんが優しく注意すると、子供達が元気に声をあげた。
楽しく紙芝居の続きを読んで、その後ピアノを弾いて童謡を歌ったりお遊戯をして、たっぷり楽しんだ。
※
はーっ。久しぶりに心穏やかに過ごせたわ。
この前恭ちゃんが持ってきてくれた援助金のやりくりを考えておこうと、お遊戯の後は自由遊びの時間にして、私は仕事部屋に向かった。
恭ちゃんはガックン達とサッカーするって、施設の小さい広場で遊んでいる。
家計簿をつけていると、ミイちゃんとアイリちゃんが、お兄さんが来てくれたよぉー、と言って王雅を連れて来た。
・・・・昨日の今日よ?
王雅って、本っっっっ当にヒマなのね。
用事も無いのに施設に来たりして、他にすることないのかしら。
「あら。アイリちゃんとミイちゃんがお兄さん案内してくれたの? 有難う」
子供達に罪はないので、笑顔でお礼を言っておいた。
ごゆっくりー、と王雅に笑いかけて、二人が部屋を出て行った。
「よお」
「何しに来たのよ」再び帳簿に目を落とし、顔も上げずに聞いた。
「オーナーが、自分の持ち物の土地に来ちゃいけねーのか」
「・・・・・・」
無言で睨みつけた。
何がオーナーよ。無理矢理花井から土地を買い取っただけのクセに。
しかもそれ、私の身体が目的だっていう、サイテーの思惑があるからなのに。
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