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スマイル4・王様とケーキ作り

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「やったわ――っ!!」



 狭い仕事部屋に、私の大声が響いた。
 おっといけない。つい、嬉しくて叫んでしまった。

 今日は、リョウ君の誕生日。
 ささやかなプレゼントを買うお金を用意することは出来なかったから、前にクラブでゲットした二千五百円の残りをやりくりして、節約ケーキ作ろうと思っていたの。

 でも、私って天才!

 ちゃんとリョウ君の誕生日用に、エコシール貯めて貰った商店街の商品券を、仕事部屋の引き出しの奥の方にしまっていたの。
 色々忙しくて、それを忘れていたわ。二か月くらい前のことだもんね。
 今、書類の整理をしていたら偶然その封筒を発見して、大声出して狂気乱舞したところ。

 たまには片付けもいいわね。普段忙しくてなかなかできないけど、提出書類があったから丁度書類の整理していたら、こんなラッキーがあるなんて。今日はツイてるわ。


 お陰でスーパーで買い物して、リョウ君の大好きなイチゴの立派なケーキ作ってあげる事ができるわ!!


 しかも節約ケーキに充てようと思っていたお金は、またこれで他の食材買えるからこれはこれで助かる。
 昨日、トイレットペーパー二つも買っちゃったし。

 ケーキの下準備も終えたし、書類整理がもうすぐ終わるから、後でケーキの材料の買い物へ行こう――そう思っていたらリョウ君が大喜びで、せんせいーっ、と大声を上げながら仕事部屋に駆け込んできた。
 

「ミュー先生っ、ミュー先生!! お兄さんがお土産くれたよーっ!!」


「リョウ君、どうしたの? あら、貴方・・・・」


 リョウ君の後ろから同じように仕事部屋に入ってきたのは、大王だった。

 昨日の今日で、また来たの!?
 確かにまた来るって言ってたけど、ちょっと早すぎじゃない?
 連日本当にしつこいわねっ。相当暇人なんだわ、きっと。

 つい、嫌な顔になった。

「リョウ君、良かったね。お兄さんにちゃんとお礼、言った?」

「ウン! 言った!! 先生、開けてもいい?」

「いいわよ。後でみんなで分けて食べようね」

 お土産なんて、気が利くじゃない。
 大王もいい所あるのね。



「あれーっ、ミュー先生・・・・」



 リョウ君が残念そうな顔をして、お土産の高級そうな箱の中を覗き込んだ。「コレじゃ小さくて、みんなと分けれないよ・・・・」

 うーんと考えて、リョウ君はお土産の箱を私に差し出してきた。「先生にあげる! 僕はいいよ。みんなで食べれないなら、僕はいい。でも、何時も先生は僕達の為にいっぱい我慢してくれてるから、コレ食べて! みんなには内緒だよっ」

 リョウ君は、お兄さん有難うございました、と丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った。
 中を見ると高級で繊細な細工が施されているチョコレートケーキが、これまた高級そうな箱にたった一つだけ入っていた。普通の切り売りケーキにしたら大きいけれど、たった一つってね・・・・。

「お土産は有難いけど、皆で食べれなきゃ意味無いわ。返す」

 私はため息を吐いた。

「バカヤロー! そのケーキ幾らすると思ってんだ!! それに、それは・・・・そう、リョウってヤツに貰ったコロッケの礼だ! あんな庶民の食べ物を恵んで貰ったとなれば、櫻井グループの次期社長の名誉にも関わる。だからだな・・・・」

「それで? 今日は何の用? あと、コレ折角だけど返しておくわ。子供達が食べないのに、私だけ食べれないから」


 話を途中で遮って、ヤツが持ってきた高級ケーキをつき返した。
 大王は呆然としている。


「用事無いの? 無いなら帰ってよね」

「用事はある! 施設立ち退き・・・・」

「しつこい男、キライなの」

「だーっ!! 俺の話を聞けっ!!」

 大王が地団駄踏んだ。

「もー、煩い。それより、ヒマなら一緒に買出しにでも行く? つき合わせてあげてもいいわよ」

 荷物持ちがいたら、正直助かるのよね。

「誰が行くか!!」

 即答で断られた。じゃあ、アンタに用は無いわ。
 
「あっそう。じゃ、帰ってよね。これからケーキ焼かなきゃいけないんだから、私忙しいの」

「ケーキならココにあるじゃねーか! この俺様がわざわざ持ってきてやったんだ!! 有難く受け取って、食え!」

「バカじゃないの。こんな量じゃ足りないって言ってんのよ! 子供達大勢居るのに、そんな事も解んないの?」

「バッ・・・・」

 大王が信じられないという顔で、私を見つめてきた。



「お前、あんまナメた口きいてると、ホンキでシメるぞ」



 断りもなく私の身体を押さえつけて強引に唇を奪おうとしたものだから、遠慮なく大王の秀麗な顔にビンタをお見舞いしてやった。
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