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スマイル2・王様との再会
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嫌悪感いっぱいの表情を浮かべて、睨んでやった。「何か御用でしょうか?」
「御用も何も・・・・お前、昨日はよくも色々やってくれたな」最低男は更に言葉を続けた。「俺のアルマーニのスーツ、ビシャビシャにしてくれた礼をしに来たんだよ」
知らないわよ、そんなの!
セクハラした自分が悪いんでしょっ。
お金持ちなんだから、スーツのひとつやふたつ、水がかかった程度なんだから、干してクリーニングにでも出せば綺麗になるじゃない。
どうせ似たような高級スーツ、何十着と持っているんでしょ。一張羅じゃあるまいし。
ついでにアンタもクリーニングしてもらったらどうかしら。
わいた頭が、ちょっとは綺麗になるんじゃないの。
「施設の立ち退き要請に来たんだ」
最低の二乗ね。もう、本当に本当に最悪。
こんな最低な男、なかなかお目にかかれないわ。
「その話は、昨日も別の方にお断りしています。帰ってください」
「だから俺が来たんだ。まあ聞け」最低男は優しい微笑みを浮かべながら、話を続けた。「今なら立退き料としてかなりの破格値を用意するってホテル側は言ってるんだぜ? さっさと立ち退いて、別の場所で施設借りりゃいーだろ? 探せねーなら、俺が最後まで面倒見てやるよ。そうだ、うんと綺麗で新しい施設、見つけてやる! その方が皆喜ぶ――」
「またお金の話? いい加減にして! この世にはお金で買えない大切なものが沢山あるのよ。貴方もカワイソウな男性(ひと)ね。とにかく、この施設から立ち退きはしないわ! 帰って!!」
アイツのセリフを、一刀両断してやった。
本当にふざけてるわ。
私の為に両親が建てて遺してくれた、一番の宝物であるマサキ施設を、誰が手放すもんですか!
こちとら、命張ってこの施設守ってんのよ。
ホテルの建設か何だか知らないけど、そんなの空いてる他所でやればいいじゃない。私を巻き込まないで。
本当にホテル側もしつこい。私が絶対に立ち退かないって言ってるんだから、さっさと諦めたらいいのに。
しかもこんな最低男を交渉役に寄こすなんて、どーかしてるわ。
怒り心頭していたら、うっかり時間をチェックするのを忘れていた。
ピンポロポロピーン、と壁時計が十時を知らせる音が耳に入り、はっと気が付いて時計を見た。
しまった!
三個で百円の特売コロッケ、販売開始の時間だっ!!
「ああっ! もうこんな時間!! 急がなきゃ! アンタと話してる暇なんて無いのっ」
慌てて財布を取りに行って元の部屋に戻ったら、最低男はまだ部屋に居座っていた。
「もう帰ってよね。迷惑だから」
「はあっ!? オイ、お前ちゃんと人の話聞け――」
「帰って!!」
最低男を、部屋から追い出した。
迂闊だったわ。私ともあろうものが、コロッケ特売に出遅れてしまうなんてっ!!
それもこれも、全部昨日から最低男が絡んでるのが原因よねっ!
ロクな男じゃないわ。さっさと目の前から消えて欲しい。
私はお腹に力を入れて息を吸い込み、猛烈ダッシュで部屋を飛び出した。
子供達に声をかける暇が無かった。ゆっくり声をかけていたら、コロッケが売り切れちゃう!
今日のコロッケ特売の事は子供達も知っているし、常日頃から留守番をちゃんと頼んであるから、もうこのまま走り切るしかないっ!!
「おいっ、待てよ!!」
最低男が私に向かって、待て、とか言いながら追いかけて来た。
知らないわ。っていうより、追いかけてこないでよ。さっさと帰ってよね!
男を無視して、商店街まで全力ダッシュしてコロッケ屋をめざした。
案の定人だかりが出来てる! 何時もはもっと早く行って、ちゃんと並んで人数分確保するのにっ!!
ごめんなさいっ。失礼しますっ。
人だかりを潜り抜け、いつもの愛想が良く恰幅のいい赤いエプロンをしたコロッケ屋のおばさんの所まで、何とか辿り着いた。
「コロッケ十五個下さいっ!!」
息を切らしながら叫んだら、何と売り切れ寸前で、四パックの十二個しか買えなかった。
ああっ!
残念すぎるっ!!
「御用も何も・・・・お前、昨日はよくも色々やってくれたな」最低男は更に言葉を続けた。「俺のアルマーニのスーツ、ビシャビシャにしてくれた礼をしに来たんだよ」
知らないわよ、そんなの!
セクハラした自分が悪いんでしょっ。
お金持ちなんだから、スーツのひとつやふたつ、水がかかった程度なんだから、干してクリーニングにでも出せば綺麗になるじゃない。
どうせ似たような高級スーツ、何十着と持っているんでしょ。一張羅じゃあるまいし。
ついでにアンタもクリーニングしてもらったらどうかしら。
わいた頭が、ちょっとは綺麗になるんじゃないの。
「施設の立ち退き要請に来たんだ」
最低の二乗ね。もう、本当に本当に最悪。
こんな最低な男、なかなかお目にかかれないわ。
「その話は、昨日も別の方にお断りしています。帰ってください」
「だから俺が来たんだ。まあ聞け」最低男は優しい微笑みを浮かべながら、話を続けた。「今なら立退き料としてかなりの破格値を用意するってホテル側は言ってるんだぜ? さっさと立ち退いて、別の場所で施設借りりゃいーだろ? 探せねーなら、俺が最後まで面倒見てやるよ。そうだ、うんと綺麗で新しい施設、見つけてやる! その方が皆喜ぶ――」
「またお金の話? いい加減にして! この世にはお金で買えない大切なものが沢山あるのよ。貴方もカワイソウな男性(ひと)ね。とにかく、この施設から立ち退きはしないわ! 帰って!!」
アイツのセリフを、一刀両断してやった。
本当にふざけてるわ。
私の為に両親が建てて遺してくれた、一番の宝物であるマサキ施設を、誰が手放すもんですか!
こちとら、命張ってこの施設守ってんのよ。
ホテルの建設か何だか知らないけど、そんなの空いてる他所でやればいいじゃない。私を巻き込まないで。
本当にホテル側もしつこい。私が絶対に立ち退かないって言ってるんだから、さっさと諦めたらいいのに。
しかもこんな最低男を交渉役に寄こすなんて、どーかしてるわ。
怒り心頭していたら、うっかり時間をチェックするのを忘れていた。
ピンポロポロピーン、と壁時計が十時を知らせる音が耳に入り、はっと気が付いて時計を見た。
しまった!
三個で百円の特売コロッケ、販売開始の時間だっ!!
「ああっ! もうこんな時間!! 急がなきゃ! アンタと話してる暇なんて無いのっ」
慌てて財布を取りに行って元の部屋に戻ったら、最低男はまだ部屋に居座っていた。
「もう帰ってよね。迷惑だから」
「はあっ!? オイ、お前ちゃんと人の話聞け――」
「帰って!!」
最低男を、部屋から追い出した。
迂闊だったわ。私ともあろうものが、コロッケ特売に出遅れてしまうなんてっ!!
それもこれも、全部昨日から最低男が絡んでるのが原因よねっ!
ロクな男じゃないわ。さっさと目の前から消えて欲しい。
私はお腹に力を入れて息を吸い込み、猛烈ダッシュで部屋を飛び出した。
子供達に声をかける暇が無かった。ゆっくり声をかけていたら、コロッケが売り切れちゃう!
今日のコロッケ特売の事は子供達も知っているし、常日頃から留守番をちゃんと頼んであるから、もうこのまま走り切るしかないっ!!
「おいっ、待てよ!!」
最低男が私に向かって、待て、とか言いながら追いかけて来た。
知らないわ。っていうより、追いかけてこないでよ。さっさと帰ってよね!
男を無視して、商店街まで全力ダッシュしてコロッケ屋をめざした。
案の定人だかりが出来てる! 何時もはもっと早く行って、ちゃんと並んで人数分確保するのにっ!!
ごめんなさいっ。失礼しますっ。
人だかりを潜り抜け、いつもの愛想が良く恰幅のいい赤いエプロンをしたコロッケ屋のおばさんの所まで、何とか辿り着いた。
「コロッケ十五個下さいっ!!」
息を切らしながら叫んだら、何と売り切れ寸前で、四パックの十二個しか買えなかった。
ああっ!
残念すぎるっ!!
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