コロッケスマイル

さぶれ@６作コミカライズ配信・原作家

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ラストスマイル

世界一の男・８

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　それに今日は、真凛が美羽のメイクを担当してくれたんだ。
　髪の毛も綺麗に整えてくれるって言ってたな。
　何でも真凛の夢は、メイクアップアーティストだとか。でも、その日暮らしの生活が精一杯の自分には、そんなチャンスはなかなかないし、勉強できる機会も無いから、諦めていたんだと。

　だから自分の化粧も派手で濃かったんだな、と納得した。

　真凛の夢は、俺が手伝ってやろうと思っている。
　センスはあるんだ。機転も利く女だし、頑張る夢は応援してやりたいんだ。
　あ、そーだ。今度サヨ・サクライのカタログに写真撮影する時、メイクとして連れて行って、真凛を売り込んでやろう。
　後は真凛（自分）次第だ。頑張りゃ、夢は花開くんじゃねーの。

　遊戯室中に入ると、一番奥に小さな祭壇もどきが作られていて、ガキ共が牧師のような恰好をして待っていた。
　本物の牧師はいない。ガキ共がやりたいというので、任せる事にした。
　少々メチャクチャになっても、それはそれで楽しいと思うし、マサキ施設での結婚式って感じがするから、俺はいいと思う。だから、許可したんだ。

　俺もその付近で待機だ。
　なんやかんやで人が大勢やって来たモンだから、遊戯室がパンパンになっちまった。
　赤いじゅうたんみたいな、バージンロード的なものは踏まないように気を付けて、それを挟んで両方に別れて、集まってくれた人が並んでいる。着席できるようなスペースは無いから、全員起立状態だ。
　祭壇の付近にはガキ共が一列に並んでいて、その横にはまりなと、まりなのバンドメンバーのジョージが来てくれている。彼は、ピアノを弾いてくれるようだ。バンドでキーボードを担当しているから、ピアノが上手いんだ。

　聞くとまりなは『SERIOUS』というバンドを手伝っているとか。歌が上手いので、今日は祝儀代わりに歌ってくれんだ。
『絆』という、SERIOUSのオリジナルの曲を歌ってくれる。チラっと聞いたが、良い曲だった。
　みんな得意な祝儀を持ち寄ってくれて、それをみんなで分け合えるなんて、何てマサキ施設らしいんだろう。

　こんな最高の結婚式ができるのは、世界中探したってここしか無い。

　

「皆様、お待たせしました！　今から、ミュー先生、あ、違った。新婦の登場です！」

　どっ、と遊戯室に笑いが起きた。ガックンが司会を進めてくれるようだが、勿論プロじゃないから間違えてしまった。
　でも笑いがあって、楽しい。

　遊戯室の入り口に、オフクロが今日の為に作ってくれたという、純白のドレスに身を包んだ花嫁が現れた。

『生きる意味　探してた　あなたに逢うまでは
　鮮やかな夢　心繋ぐ　深い絆...』

　美しいピアノの調べに、まりなの透き通る声が遊戯室に響いた。

　ゆっくりと、恭一郎にエスコートされた美羽が、俺の方へ向かって歩いてくる。
　オフショルのドレスなのに、シンプルで上品で、とても洗礼されている。

　流石、サヨ・サクライのドレス。

　美羽の為に仕立ててくれたから、彼女にピッタリだった。彼女の美しさが、このドレスによってより一層引き立っている。
　真凛も腕がいい。メイクも完璧だ。美羽は、本当に綺麗だった。

『傷つくことで　初めて知った』

　美羽ちゃん綺麗だなぁー、と早速、横山と平岡が揃って泣き出した。
　案の定だな。号泣してやがる。
　

『あなたの深い　愛で包まれてた事を』

　美羽と出逢って、俺はこんなにも幸せに包まれて、変わったんだ。
　何時も美羽が、俺を深い愛情で包んでくれるから。

　まりなの歌声と、ジョージのピアノが胸に沁みた。

『あの天（そら）がくれた　奇跡の贈り物は』

　入口から祭壇付近まで少しの距離しかないから、美羽がもう目の前に迫ってきた。
　綺麗だ。

　世界一、綺麗な花嫁だ。

『一途な想いと　あなたとの深い絆――』

　歌と伴奏が止まった。
　恭一郎から美羽を託され、俺の左横に美羽が並んだ。

　
「えーっと、な、なんじ････さ、さく、櫻井王雅は、ミュー先生を妻として････あ、間違えた」

　牧師のサトルが早速間違えた。

「ちがうよ、サトル君。今はミュー先生じゃないよ。先生はお兄さんと結婚したから、櫻井美羽だよ」

　そういうリョウも間違えてる。この場合は、旧姓を言わなきゃいけねーからな。

「もう、二人共、ちゃんとやらないと！　真崎美羽を妻とし、病める時も、健やかなる時も、愛する事を誓いますか？　でしょ！」

　リカがまとめてくれた。流石もうすぐ小学一年生。しっかりしている。
　誓いの言葉が短いのは、単に長くて難しいから割愛しただけだ。
　何だっていいんだ。短かろうが長かろうが、一緒だ。美羽を一生大切にすることには、何ら変わりない。

「当たり前だ！　命懸けて誓うぜ!!」

　俺が張り切って言うと、会場が笑いに包まれた。

「汝、みーちゃ････真崎美羽は、おーちゃん････じゃなかった、えーっと････おーちゃんの名前、何だっけ････」

　アイリが俺様の名前をド忘れした上、おーちゃんとか言いやがったモンだから、会場が更に爆笑に包まれた。

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