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スマイル40
世界一の女・3
しおりを挟む「あのっ、よく話もしないで、本当に王雅さんと結婚するのを私に決めていいんですかっ!? 私――実の両親がどんな人間か知らないんです。調べたら解るので正直に言いますけど、私、本当の両親から、幼い頃に虐待を受けて捨てられました。親の顔も名前もわかりません。でも、既に他界してしまいましたが、実の子供のように可愛がってくれた育ての両親がいました。本当の父と母ではありませんが、愛情いっぱいかけて育ててもらいましたから、家族の大切さは人並み以上に理解しているつもりです。家族の一員にさせて頂く以上は、王雅さんの事は私が愛して、一生支えていきたいと思っています。それだけは誰にも負けないつもりです。・・・・でも、王雅さんはお二人が無関心でいらっしゃることに、心を痛めています。家族なんです。もう少し、彼の話を聞いて下さい! 結婚の話をしに来たのに、つまらない事なんて言わないで下さい! お二人にも関わる、とても重要で大切な事なんですよ!!」
おお。美羽のヤツ、アイツ等に向かって啖呵きりやがった。
でも、スゲー嬉しい。
お前だけだ。俺の事そんな風に大切にしてくれるのは。
ありがとう。この局面でさえ、美羽に感謝する事になるなんて。
お前は何時だって俺の事温かく包んでくれるんだな、美羽――
「真崎美羽さん・・・・だったね。じゃあ結婚に反対してもいいのかね?」
ずっとだんまりを決め込んでいた、置物みたいだったオヤジが口を開いた。
お前、喋れんじゃねーか。知らん顔しやがって!
俺の事はどーでもいーのかよ。
「反対される覚悟で参りました。王雅さんと私では、どう考えても釣り合いませんから」
「うん、そうだね」
そうだね、じゃねーよ!
美羽に失礼な事言うな、このクソボケオヤジ。
コイツは俺には勿体ないくらいの、世界一イイ女なんだ!
どちらかっつーと、俺の方が釣り合ってねーんだよ!
「でも、それを認めて頂きたくて、お伺いしたのです。王雅さんを支えるのは、私にしか出来ません。王雅さん、とても淋しがり屋なんですよ。ご存知でしたか?」
オヤジが再び黙ってしまった。そりゃ、オヤジが知るワケねーよな。
俺も最近やっと気が付いた位なんだから。
「私と結婚したら、王雅さんはもっともっと活躍すると約束しれくれました。だから私は、どんな事があっても、傍で支え続けます。それに王雅さんが一番欲しいものを、私だったら傍にいて、何時でも差しあげることができますから」
「王雅の一番欲しいもの? なんだね、それは」
「温かい家族の愛情です。お金では絶対に買えない、彼の一番欲しいものです」
美羽は力強く笑った。「美味しいご飯と、子供達の笑顔と、心のこもったお帰りなさいで、毎日、お仕事を頑張ってくれる王雅さんを迎えます。こんな、貧乏で何の取り柄も無い女を選んでくれたのですから、全力で、彼を愛して支えます。だから、お二人の宝物である王雅さんの事は、安心して任せて頂けないでしょうか。私が、絶対に王雅さんを幸せにしてみせます!」
イカンて、美羽。
俺、マジ感動してんだけど。
嬉しい。ヤバい。
お前、世界一カッコイイ女だな!!
「そーいうコトだ。反論ねーよな? 忙しいのに、つまらない俺の結婚の事、わざわざ報告しにきて、時間取らせて悪かったな。もう俺は俺で勝手に生きてくから。今まで育ててくれてありがとよ。今日限りでこの家出て、俺は彼女と暮らすから。じゃあな」
育ててくれてありがとうなんて、コイツ等に言う日が来るとは夢にも思わなかった。
でも何か、色々スッキリした。
よーし。これでようやく、この寒い家に帰らなくてすむんだな!!
やったぜ!
さあ、そうとなったら引っ越しだ。
俺は今のでかなり傷ついたということにして、金目のものを適当に慰謝料として貰っていこう。売っぱらって換金して、俺の機関に寄付するんだ。一番高く売れそうなヤツ、持って行ってやる。
どーせ家に寄り付かない二人だ。調度品が幾つか減っていたとしても、わかりゃしねーよ。
世話になった、と一言残して、俺は美羽を連れて家を出た。
二人がいなくなったら、また戻って来て荷物まとめよう。
金目のモン、絶対貰うぞ!
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