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スマイル39
愛夜・2
しおりを挟む仕方がないので、そのまま話をすることにした。
「美羽。単刀直入に聞く。保留にしてるプロポーズの返事を聞かせてくれ。イエスかハイか、どっちだよ?」
とりあえず断らせないように、選択肢を失くした。
こんなんで上手くいくのかな。
世界最強の男(オレ)も美羽にかかりゃ、ダメンズになっちまう。
それより、さっきから心臓が耳から飛び出そうだ。
イカン。緊張がマックスだ。なんせプロポーズの返事を聞くんだ。
そりゃあ、人生で一番緊張する瞬間だろう。
しかも俺は既に二回もプロポーズ断られてんだ。今回こそはどーにか、イエスの返事を貰いたい。
「どっちって・・・・その選択肢、どっちもイエスじゃないの。断る選択肢は無いわけ?」美羽が苦笑した。
「断るのかよ」
何っっったることだ!!
はぁぁぁー。あんな恥ずかしい会見までやったっつーのに、この期に及んでまだ俺のプロポーズを断るつもりか、この女は。マジでヘコむ。
一体どうすれば、イエスと言ってくれるんだ!
誰か教えてくれ。
「断るわ。だって私は――誰の子か分からない、誰の血が流れてるかも分からないような素性不明な女よ? そんな女が、貴方みたいな男と・・・・結婚なんて、できるわけないじゃない」
「はあっ? そんなつまんねー理由で断るのかよ! バカか、お前」
俺の言葉に、美羽が目を丸くして怒った。
「つまんないですって!? つまんなくないでしょう、どう考えてもっ! バカはそっちよ!!」
「・・・・あのなあ、美羽、ハッキリ言っておくけど、俺は、お前だから好きになったんだ。誰の血が流れてようが、そんなつまんねー事、俺にとっちゃどーでもいい問題だ。真崎美羽はお前しかいねーだろ。俺には、お前が必要なんだ! 俺をここまでの男にしてくれたのは、まぎれもなくお前だ。お前を手に入れる為に、俺は血の吐くような思いでここまで来たんだ。わかるだろ!」
「わからないわよっ!!」美羽もキレ気味で、叫ぶように言った。「貴方が普通の、その辺に居るような平凡な男だったらよかったのに・・・・どうして・・・・どうして、よりにもよって大企業の御曹司なのよ! しかもあんな立派な仕事や会見をやってのけちゃうなんて・・・・何の取り柄もない貧乏人の私なんか、釣りあうわけ無いじゃない!」
「だから貧乏とか、そんなの関係ねーって言ってるだろ! 俺が結婚する女は、俺が決めるって。その為にプロジェクトも成功させたし、親も説得する。お前が手に入るなら、俺は何も要らないんだ。櫻井家がお前にとって足かせになって重いっつーなら、今すぐ捨ててやる!」
吐き捨てるように俺が言うと、美羽がかぶりを振った。違う、そうじゃない、と。
「そんな事して欲しいんじゃないの。でもっ・・・・もし貴方に身体も心も赦してしまって・・・・裏切られたり、捨てられた時が怖いの。・・・・血のつながらない両親が残してくれたマサキ施設しか、私には無いの。私がどれだけ大切に思っていても、私の傍には、誰も残らないのよ。みんな何処かへ帰る場所があって、私の元からは巣立っていくの。王雅だってそうでしょ。私は、何時もたった独りで残される、淋しい孤独な女なの」
美羽は泣いていた。「そんな私の気持ちわかる? わからないでしょう? 貴方の事、本当は好きよ。でも、貴方への気持ちに気づかないフリをしてた。だって、もし王雅に捨てられたりしたら・・・・私もうっ・・・・今までみたいに・・・・強く生きていけないっ・・・・!」
俺は、美羽のこんな弱い部分を初めて見た。
いつも強い女だと思っていたけど、お前だって必死に崩れそうなキモチ抱えて、今まで生きて来たんだな。
そりゃそうだよな。お前だって、か弱い一人の女なんだ。
恭一郎も居なくなってしまい、寂しさは尚一層お前にのしかかったに違いない。
今じゃ苦しい胸の内を打ち明けたりできるような、頼れるヤツが誰もお前の傍に居ないんだ。
強く生きなきゃ、と自分に鞭を奮って今まで頑張って来たんだ。
少しの隙を見せちゃ、足元をすくわれちまう。そんな俺の生きてる世界とよく似た世界で、お前も苦しい思い抱えて、生きてきたんだな。
だからこそお前には、俺を必要として欲しい。
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