コロッケスマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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会見・5

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「いいか、よく聞けっ! マサキ施設経営者の、真崎美羽!! 美羽のおかげで、俺はここまでやり遂げる事ができた。俺をここまでの男に育ててくれて、本当にありがとう。でも、まだまだこれから、やるべきことが沢山ある。俺は全てを実現、成し遂げ、もっとスゲー男になるから。だから俺の傍にいて、ずっと俺を支えてくれ! 俺は、お前やガキ共が傍にいなきゃダメなんだ。美羽、愛してる! 俺が愛しているのは、お前だけだ! だから俺と結婚してくれ!!」



 静まり返った会場に、俺の恥ずかしいセリフが反響した。



「以上で、会見を終了させて頂きます」



 俺が、『会見終わり』と言ったら終了の合図というのは横山、恭一郎、和歌子には伝えてある。

 俺の突然の告白に、鳩が豆鉄砲を喰らったようなマスコミ関係者も、俺が席を立った途端、慌てて立ち上がって、あっ、と声を漏らした。
 ちょっと待ってください、今の告白について詳しくお話を――という声やフラッシュを背に、捕まる前にいくぞ、と三人を引っ張って壇上を後にした。




 ※





「櫻井君には驚かされたよ。まさか・・・・あんなところで美羽にプロポーズするなんて」


 マスコミに掴まる前に、三人で急いで控室に戻ったところだ。恭一郎が苦笑交じりに俺を見つめている。

「そーいうワケだから恭一郎、美羽はもらうぜ。文句ねーよな?」

「あるって言ったら、プロポーズ取り下げてくれるのか」

 恭一郎が真剣な顔して言うモンだから、俺の方が焦った。

「あっ・・・・いやその・・・・エラソーに言ってスミマセン。お義兄さん、美羽・・・・さんを、俺に下さい。どうか宜しくお願いします」

 ここは土下座すりゃーいいのか。よく解らないから、とりあえず頭を深く下げた。

 美羽のオヤジになら土下座してもいいが、死んじまっていて、もういねーしな。恭一郎に土下座は・・・・ちょっとイヤだ。何となくだけど。
 でも、コイツが美羽のアニキじゃなくてオヤジ代わりっつーなら、腹を括ろう。


 ここまで来たんだ。こーなりゃ、土下座でも何でもしてやる!


「冗談だよ。櫻井君・・・・美羽を宜しく頼む。彼女を、幸せにして欲しい」

 アニキの顔を見せた、恭一郎が笑った。
 ああ、焦った。恭一郎のクセにエラソーにすんじゃねーよ。
 俺は何時もの調子を取り戻して言った。「誰に向かって言ってんだ。全力で幸せにするっつーの! あ、今日の夜は美羽と決着つけるから、美羽の事借りるな。だからワリぃけど、ガキ共の面倒頼んだぜ。真秀や真凛にも頼んであるから。美羽がここに来たら、このホテルの最上階の部屋に来るように言ってくれ。最上階は一室しかないから。これ、鍵」

 最上階の部屋のカードキーを、恭一郎に手渡した。

「子供達の事ならともかく、なんで僕が美羽にこんなものを渡さなきゃならないんだ。自分で渡してくれ」

 心底嫌そうな顔をされた。

「恭一郎からだったら、美羽も受け取るかと思って。来るように説得もしてくれ。頼む、この通り」

「・・・・仕方ないな。櫻井君には参るよ」

「恩に着るぜ」

「言っておくが、強引に迫って美羽を泣かせたりするなよ。血は繋がっていないけど、僕にとっては大切な妹なんだ。美羽を泣かせたり不幸にしたら、どんな手を使っても、高田の独占契約破棄してやるからな」

「うーわ、職権乱用」


 恭一郎のヤツ、やり口が大分俺に似てきたな。ま、それくらいの方がいい。
 
 ハッ! でも、気をつけなければ。

 高田の独占契約を破棄なんかされたら、このプロジェクト、マジでヤバくなる。
 絶対、ウェスティンのタヌキみたいな太鼓腹のあの社長、合同経営は反故にする、とか言ってきやがるぜ。
 未来プロジェクトじゃなく、未来ナシのお先真っ暗プロジェクトになるだろう。それは困る。


「まあ、あそこまでの会見をやったんだ。櫻井君、僕は君を信じているからな。美羽を幸せにしてくれるって。本当は嫌だけど、美羽を説得して行かせる。鍵、引き受けよう」


 本当は嫌だけど、というセリフは無視した。知るか。貰ったらコッチのモンだ。
 強引には迫らないっつーのも約束できかねる。
 こちとら半年程アッチ方面、我慢を強要させられた恨みがあるんだ。

 今夜こそ、メチャクチャに泣かせてやるつもりだ。
 同意が取れたらの話だけど。


「ありがとう、お義兄さん!!」


 心の中を読まれたら確実に協力してくれないだろう考えを浮かべながら、恭一郎の手を取って感謝の意を伝えた。

「君にお義兄さんなんて呼ばれたくない。もう、早く行ってくれ」

 しっしっ、と手で追い払われた。

「頼んだぜ!」

 他の人間への挨拶や雑用が諸々あるから、運命の鍵を恭一郎に託して、横山と和歌子に礼を言って、俺は控室を後にした。
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