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スマイル37
生い立ち・2
しおりを挟む「俺の土地だったっつー証拠だ。お前が権利書を偽造した証明だ。公文書偽造――これで警察にお前を逮捕してもらう」
「そんな偽の証拠書類なんか――」
「偽じゃねーことは、偽造書類作るのが得意なお前が、一番よくわかってんだろ?」更に笑顔で言ってやった。「そうそう。レディアトゥルの株、沢山買ってくれてありがとよ。お陰で儲かったぜ」
「なっ・・・・なんで・・・・レディアトゥルの株の事を・・・・」
今まで花井の傍についていた真秀が、すかさず俺の傍にやって来て、託したノートパソコンを開いて画面を花井に見せた。
大暴落した株価の数値を見て、花井が目を剥いて口をぱくぱくさせ、陸に上げられた魚のようになっている。
アメリカで地獄の日々を送り続け、お前をぶちのめす事だけを目標にしてきた成果がようやく実ったんだ。
お前のその顔、本当に最高だな。
俺が過ごしてきた地獄の日々が、これで報われるっつーワケだ。
「こういう事だ、花井。もうお前の飼い犬は終了だ。美羽ねーちゃんや施設を裏切らせるような事をさせて、俺がどんな思いで過ごしてきたと思っているんだ。全部お前を、王雅とぶちのめす為だよ」
真秀が晴れ晴れとした笑顔で言った。
「この株、もう売れねーぞ。お前の証券は全部ゴミクズだ。良かったな。これからは借金地獄が待ってんだぜ。俺様を敵に回すから、こーいう目に遭うんだ」
俺も真秀と同じく笑顔で言ってやった。
そんなバカな、と一言呟いて、花井が震えている。
「あっはははは! 傑作だわ!!」
突然、美羽が笑い出した。
あまりの出来事で、驚いて全員が美羽を見た。
美羽がガキ共に、ちょっとごめんね、先生を助けに来てくれて本当にありがとう、と言い、花井の前に立った。
「ねえ、花井。施設が絶対に大丈夫になったら、アンタに言おうと思っていた事があるのよ」
彼女は、俺が今まで見た事もないくらい怖い笑顔を湛えていた。
そして、衝撃の秘密を語り出す――
「私、美幸おかあさんとは、血が繋がってないの。血筋不明の、どこの誰かもわからない人間なの。ごめんなさいね?」
美羽の言葉が理解できなかったのか、花井は金魚のデメキンに負けず劣らず目を飛び出させそうな程、カッ、と目を見開いている。その様子は、本当に目が飛び出てきそうだ。
「そっ・・・・そんなっ・・・・ウソだっ、デタラメだ!! こんなに美幸さんに似ているのに!」
我に返った花井は、レディアトゥル株の暴落の時より狼狽えて美羽に食って掛かる。しかし彼女はそんな花井を一蹴した。
「それは、私が美幸おかあさんに似せているからよ。髪型や雰囲気で、女はどうにでもなるのよ」
「じゃあ・・・・私が・・・・今まで追いかけて来たのは・・・・」
「残念でした。私は、美幸おかあさんと、血の繋がりもない、何の関係もない、素性も解らない、ただの女なの。嘘だと思うなら、横山さんに聞いてみて? 幼い時、私が虐待されて、憔悴しきっていたところを助けてくれたのが、横山さんだから」
恐る恐る横山を見た花井に向かって、彼は、美羽ちゃんの言う通りだ、と漏らした。
花井はこれ以上にないくらい、目を見開いて震えている。
顔が真っ白になって、今にも倒れそうだ。
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