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スマイル35
本心・6
しおりを挟む「どーしたんだよ? コッチ来いよ」
顎でしゃくって、傍に来るように指示した。
「あ、あの・・・・お兄は?」
声が震えている。
「そんなのどーでもいーだろ。真秀は暫く戻って来ねーよ」
「あ、そうなんだ。王雅、アメリカ行くんじゃなかったっけ? 確か出発って、明日だよね? 早く帰らなきゃ。ホラ、もう遅い時間だし」
「だから来たんだよ。お前に会いたくて」
「えっ・・・・」
彼女の顔が強張った。
俺はそんな真凛を無視して、間合いを詰めた。「アメリカ行く前にさ、お前と一発ヤッてこうと思って」
「あのっ、あのでもっ・・・・王雅はミューちゃんのコトが・・・・好きなんだよねっ? 私と関係したら困るじゃん」
「それはそれ、これはこれだ。お前、俺の事好きなんだろ? だったらさ」ぐいっと引き寄せて囁いた。「一回くらい、ヤらせろよ」
「やだあっ!!」
真凛が俺をはねのけた。「ご・・・・ごめん、王雅っ・・・・私、そんなコトできないよ・・・・」
「なんで? 俺が好きなんだろ? だったら――」
「好きじゃないっ!! ごめんっ、嘘ついてたっ!!」
大きな目に涙を溜めて真凛が叫んだ。「私っ、他に好きな人いるのっ! だから・・・・王雅とはできないよ!」
「ふざけんな! 今更そんなウソ、通用すると思ってんのか? お前が俺につきまとうから、美羽に嫌われちまったんだ。責任取れ」
「ごめんっ、本当にごめんっ!! 他の事だったら何でもするから。ミューちゃんに弁解もする! だから・・・・それだけは勘弁して・・・・」
「だったら好きでもないクセに、何で俺につきまとったりしたんだ!」
「それはっ・・・・お兄が・・・・」
「あぁ? 聞こえねーよ」
「お兄が困ってたからなの! 急にマサキ施設に行くことになったり、ミューちゃんが好きとか言い出したりして・・・・変だなって思ってたら・・・・お兄・・・・私のせいで変なオッサンに脅されてたんだ。随分前に家の近くで、お兄とオッサンが話してるのを見ちゃって・・・・」
遂に真凛が泣き出した。「お兄、私に何も言ってくれないし・・・・今までずっと二人きりで支え合って生きてきたのに、お兄が苦しんでるのに何もできなくて・・・・だったらせめて、お兄の助けになれるようにしようと思って・・・・だからっ・・・・王雅の目を私に向けさせようと思って、王雅のコト好きって嘘ついたの。ごめん!」
「ごめんなんて要らねーんだよ! 散々引っ掻き回しやがって! 責任取れっつったろ?」
俺が詰め寄ったら、真凛が怯えた目を向けた。お兄助けて、って呟いて涙を零している。
「お前さあ、さっきからお兄お兄って、ブラコン(ブラザーコンプレックス)かよ。真秀のコト――」
そこまで言って気が付いた。
ああ、なんだ。
コイツ等、お互い好きなんじゃねーのか。
バカバカしい。マジ茶番だな。
「おいっ、真秀、出てこいっ」
真凛から離れて立ち上がり、奥に隠している真秀を呼んだ。「後はお前等で勝手にやれっ」
驚いている真凛を一瞥し、ノコノコ出て来た真秀を引っ掴んで真凛の前に押し出した。
「真秀が話あるんだってよ。真凛、悪いけど俺、お前のコト何とも思っちゃいねーし、ヤるつもりもねーから。今のは全部ウソだ。お前だって俺にウソついてたんだから、お互い様だ。文句言うなよ。お前とヤる気があんのは、コイツの方。っつーワケだから、もう俺にちょっかいかけんじゃねーぞ、バーカ! いきさつは全部、真秀から聞け。俺は忙しーんだよ! 手間取らせんなっ」
それだけ言って、ヤツ等の部屋を出た。
一体何だったんだ。マジで。
ふざけた茶番させやがって!
色々カタついたら、二人共シメてやる。勝手にくっついて、好きにやってろ。
俺がここまでしてやったのに、これで進展なし、とかいう間抜けな結果に終わったら、それは真秀がヘタレだったっつーコトだ。もう俺は知らん。
歩き出そうとしたら、王雅、久しぶり、と呼ばれて前を見た。
肩までのふわふわの金髪に、団栗目が特徴のこの女は――
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