コロッケスマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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スマイル35

本心・5

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「俺は至急、花井の事を徹底的に調査する。どうしてあそこまで美羽に拘るのか・・・・正直、五十手前のオッサンがやっきになって固執するような女じゃねーだろって思うんだ。過去に何かあるにしても、花井と歳も離れてるし、美羽は若すぎる。・・・・そういえば疑問だったんだ。入籍はクリスマスとか。何でそんな先延ばしにするんだろう。俺だったら何をさておいても即入籍するけどな。・・・・そうだ。その日は美幸おかあさんの命日とか・・・・確か美羽がそんな事言ってたな」

「そうだよ。美幸さんは、美羽ねーちゃんのおかあさんだ。言う通り、彼女はもう亡くなってる」

「美幸・・・・」

 思い当たる名前だった。そうだ。美羽が偽名で、クラブの面接の時に使った履歴書に書いていた名前が美幸だったな。スマイル2(第二話)くらいの話だ。

 

 美幸って、母親の名前だったんだな。


 そうか。美羽よりも母親の方と何か確執がありそうだな。年齢も近いだろう。その方がしっくりきて納得できる。調査しよう。


「真秀。お前の知ってる施設のコト、とりあえず洗いざらい教えてくれ。美羽も、異常に施設に拘ってる。確かに両親が遺してくれたものは大切だと思う。でも、あんなジジイと結婚までして守ろうとするなんて、どうしてだろう。移転や移築でも、ダメだって。俺の提案もはねのけて、花井との結婚を選んだんだ。だから困ってる」

「俺が知っている事は、そんなに無いよ。施設については、横山さんの方が詳しいんじゃないかな。俺や真凛が施設にいた頃は、お菓子とか持ってしょっちゅう施設に様子見に来てくれていたし」

「横山か。解った。丁度、相談もあるから後で工場に行ってみる」

 横山は、確かに美羽や施設について詳しいだろう。もともとの土地の持ち主だったワケだしな。


「よし。もういい。それより出発前に、お前の為にひと肌脱いでやるよ。真凛呼び戻せ。で、お前は俺が出てこいって言うまで、奥の部屋に隠れてろ。俺の計画に協力してくれる礼だ。特別に先払いしてやる」

「え、でも、なんで奥の部屋に・・・・?」

「いいから、言われた通りにしろ」

「わ、わかった」

 真秀は真凛を呼び戻し、俺の指示通り奥の部屋に入って身を隠した。
 真凛は隣の仲良くなった二号室の住人の部屋に、大事な用事が終わるまではそっちへ行くように真秀に言われていただけだから、連絡を入れて五分も経たないうちに家に戻ってきた。
 ま、隣だもんな。

 真凛の事だが、俺の事好きだっつーのはもしかしたら演技じゃないかと――何となくだけど、そんな風に思ったんだ。

 真凛は何も知らないって真秀は言ってたけど、本当にそうかな。
 これだけ近くに居て、こんな狭い部屋で一緒に暮らしていて、兄の変化に気が付かない程の鈍感な女じゃねーと思うんだ。


 だから、化けの皮剥がしてやる。


 俺の読みが外れた時は、事態の収拾は真秀につけさせりゃいい。アイツは保険だ。
 これ以上付きまとわれても困るから、ここらでイヤな男を演じて嫌われておくのも良いだろう。


「あれっ・・・・王雅? どうしてここに・・・・?」


 部屋に入ると兄ではなく俺の姿が見えたモンだから、真凛が狼狽えている。

「真秀と話があったんだ。折り合いついたからさ、それはもういいんだ。ま、折角だから、来いよ」

「あ、うん・・・・」

 心なしか警戒しているように思える。普段、見境なくバンバン俺に抱きついてきやがるくせに、ひょっとしたら、真秀が必死に隠そうとしていた例のスーパーの事件があったせいで、男が怖いのかもしんねーな。

 そんな女が普段男に抱きついたり出来るのは、絶対に安全な場所だからだ。
 美羽がいて、ガキ共がいて、一番信頼している真秀もいる。俺が手を出したりできないって解ってるから、出来るんだ。
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