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スマイル35
本心・3
しおりを挟む「・・・・普通に、好きだけど」
「美羽を今も女として好きなのかどうか、って聞いてんだ。美羽がさ、真秀が女として好きなのは、自分じゃなくて他にいるって言ってた。本当か? お前は俺のライバルなんかじゃねーのか?」
「・・・・凄いな、美羽ねーちゃん。王雅もだけど、どうしてそんなに頭がキレて、解っちゃうんだよ?」
「じゃあ、美羽の言う事は・・・・」
「本当だよ。確かに俺は昔、美羽ねーちゃんが好きだったし、結婚の約束もした。でも、それは子供の頃の話だし、それを持ち出したのは王雅の推測通り、王雅の目を俺に向けさせるための芝居だよ」
「そうか」
美羽――お前、全然鈍感女じゃなかったんだな。
本当は俺の事好きなクセに、身体を赦したらポイ捨てされると思って、わざと鈍感なフリして俺へのキモチを隠して振舞っていたんだな。
何時からだ、美羽。
お前、俺の事好きなんだったら、どうしてもっと早く俺にそのコト、伝えてくれなかったんだよ!
バカだよ、お前。
俺がこんなにお前のコト愛してんのにさ。俺の事一切信用せず、疑ってばっかで・・・・。
お前をポイ捨てなんか、するワケねーのに。
でも、俺はそれ以上にバカだ。
今まで散々、女をいいように使ってポイ捨てしてきた俺の行いが、女をきちんと愛したこともなかった俺の姿が、彼女を不安にさせてたんだ。
美羽のキモチに気づきもしねーで、アイツの本心見抜けなかった俺が、一番バカだ。
もっと早くに美羽のキモチ汲んでやって、大事に愛してやれてたら――今、この状況で悔やんでも仕方ない。
そんな美羽が、真秀は別に好きな女がいるって言ったんだ。
お前の人を見る目は、本当に確かだな。
でも、真秀の悪事には気が付かなかったんだな。お人よしだもんな。人間不信だけど、まさか真秀が権利書盗んだりするなんて、お前は微塵も疑ったりしなかったんだろーな。
真秀に裏切られたって知った時、スゲー傷ついて辛かっただろうな。
「そうか・・・・真秀。お前が好きな女は、真凛か」
美羽の事を考えていたら、真秀の好きな女について閃いた。
秘密って言ってたし、コイツの傍にいる女は真凛しかいねーし、それしか考えられない。
あの花井に加担するくらいだ。映像の事も然り、真凛を愛していなきゃ、そんな犯罪に手を貸すような真似、いくら何でもできねーだろ。
図星だったようで、ヤツは狼狽えた顔を見せた。それで、確信した。
だからお前は、美羽を裏切ってでも真凛を守ろうとしたんだな。
「そりゃ、好きな女に手を出されそうになったら、キレるよな。お前が店長ボッコボコにしたの、よーく解るぜ。防犯カメラの映像だって、怖いよな。ネットに流されたりしたら、一生消えない傷になって、真凛に付きまとっちまうもんな。俺だって法律に問題が無いなら、今すぐ花井を殺しに行きてーくらいだし」
笑顔で言ったら、キノコが目を剥いた。
「ま、そーいうワケだから、俺を怒らせるな。さあ、お前の好きな女の話はもういい。お前が実の妹だろうが、誰だろうが、好きになるのは自由だ。俺には関係ねー。それから、演技なんだったら真凛が俺につきまとうのをやめさせろ。目障りだし、美羽に誤解されて迷惑だ」
「真凛はこの件については関係ない。全部俺が一人でやったんだ。花井の事も知らない。アイツは・・・・純粋に施設と関われたことを喜んでいるし、王雅が好きなんだと思う」
それを聞いて、ため息をつきたくなった。
「好きになられても困る。お前が何とかしろ。真凛が好きなんだろ? 好きな女が別の男を追いかけてんの、我慢なんねーのかよ。俺は絶対イヤだけどな」
「あ、いや・・・・でも、俺達は兄妹だし・・・・俺がキモチを打ち明けるワケには・・・・。こんなの、キモイだろ。実の兄貴なのに・・・・」
「キモイかどーか、それを判断するのは真凛だ。キモチ伝えてもいないのに、最初から諦めんなよ。でもお前等、全然似てねーよな。血、ホントに繋がってんのか?」
「・・・・わからない。捨てられたから。確認のしようがない」
「面倒くせーな。もう、好きなんだったら、かっさらえ! 俺が協力してやる。でも、お前も俺に協力しろ。花井を見張って、美羽に手を出させるな。死ぬ気で守ってくれ! 頼む、美羽を・・・・」
この通りだ、と、キノコに土下座した。
俺は、生まれて初めて土下座っつーモンをした。
不思議と屈辱は無かった。
美羽を守る為だったら、どんなことでもできるんだな。
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