106 / 150
スマイル34
奪われた権利書・4
しおりを挟む
美羽に別れを告げ、断腸の思いで離れて遊戯室に向かった。中を覗くと、ガキ共は隅の方に固まって泣いていたり沈んでいたりして、誰も遊んだり話をしていなかった。
アイツ等は、俺の事で泣いてくれてんのか――そう思ったら、ますます花井が許せなくなった。
勿論、理由は俺の事だけじゃないと思う。突然見知らぬオッサンが来て、施設の自由を奪い、美羽を奪うんだ。楽しく暮らしていけるハズのアイツ等の生活を、花井の勝手な欲望の為に犠牲にさせてたまるか!
でも今の俺には、花井を潰せる時間も、ヤツから権利書諸々奪い返す術も無い。
ごめんな。辛い思いさせちまうけど、絶対に、俺が花井からお前等の幸せは取り返してやるからな。
「王雅にぃっ!!」
俺の姿を見つけてくれたライタが飛んできた。「もう施設に来ちゃダメって、ホントか!? もう、王雅にぃに会えないのかよっ!?」
「ごめん」
ライタを抱きしめた。「俺だって帰って来たい。ちょっとだけ仕事で遠くに行くけど、またすぐ帰って来て、お前と一緒にウルトライダーごっこして遊ぼうと思ってたんだ。でも・・・・ごめん」
「いやだよおっ! 王雅にぃ、いっぱい遊ぶ約束したのにっ・・・・うわああーん!! いやだよーっっ」
他のガキ共も口々に俺の事を呼び、泣きながら傍に来てくれた。
迷ったが、俺とガキ共は今まで築いてきた信頼関係がある。ガキ共を信じて賭けに出よう。
危険だとは思うが、俺は彼等に自分の想いを打ち明け、託すことにした。
「いいか。よく聞け、お前等。悪いヤツに聞こえちゃいけないから、小さな声で話すぞ。もっと傍に来い」
めいっぱいガキ共を抱きしめながら言った。
「施設に新しくやってきた花井っていうオッサンは、美羽先生を手に入れようとして、お前等の幸せを壊しにきた、悪い奴なんだ。でも、アイツに逆らったら、お前等も酷い目に遭う。美羽先生も悲しむ。だから、出来るだけ言う事を聞け。お前等は賢いから、アイツに従うフリをするんだ。なに、大丈夫。少しの辛抱だ。俺が絶対に助けてやる。でも、俺の事は内緒だ。俺の事を言ったりしたら、美羽先生が酷い目に遭うんだ。だから、俺がここに帰って来るとか、俺が悪いオッサンをやっつけてやるとか、そんな事、花井に向かって絶対に言わないでくれ。約束できるか?」
「約束するっ!!」
全員が即答してくれた。勿論、小さな声で。
ガキ共は賢い。
「よし。俺は今から、その悪いオッサンを退治する旅に行って来る。ちょっと時間がかかるけど、頑張って出来るだけ早く帰って来るようにする。だからそれまでは、お前等が美羽先生を守ってくれ。俺の代わりに、美羽先生を頼む」
「はいっ!!」
「お前等サイコー! いい返事だ。俺は必ず帰って来るから、信じて待っていてくれ。だからお前等、それまでは頼んだぞ! お前等が美羽先生を守って、支えて、助けるんだ!」
「任せてっ!!」
口々に了解を得た。
「よーし、いいぞ。俺も安心して出発できる。じゃあ、いつもの気合入るヤツ、してくれ。小さな声でだぞ」
「お兄さん、いってらっしゃーい!!」
他にも、おーちゃんがんばれ―とか、おー、とか、王雅にぃ早く帰ってこいよー、とか色々、ガキ共にひそひそ声で言われた。
「ありがとう。行って来る」
俺もひそひそ声で返した。
よし! ガキ共のおかげで気合い入った。
さあ。行くぞ!
姫(みう)を取り戻すんだ。
美羽、待っててくれ。
俺はどんなことをしてでも、たとえこの手を血で汚すようなことになったとしても、構わねえ。
俺の全てを懸け、絶対にお前を花井から守ってやるからな!!
アイツ等は、俺の事で泣いてくれてんのか――そう思ったら、ますます花井が許せなくなった。
勿論、理由は俺の事だけじゃないと思う。突然見知らぬオッサンが来て、施設の自由を奪い、美羽を奪うんだ。楽しく暮らしていけるハズのアイツ等の生活を、花井の勝手な欲望の為に犠牲にさせてたまるか!
でも今の俺には、花井を潰せる時間も、ヤツから権利書諸々奪い返す術も無い。
ごめんな。辛い思いさせちまうけど、絶対に、俺が花井からお前等の幸せは取り返してやるからな。
「王雅にぃっ!!」
俺の姿を見つけてくれたライタが飛んできた。「もう施設に来ちゃダメって、ホントか!? もう、王雅にぃに会えないのかよっ!?」
「ごめん」
ライタを抱きしめた。「俺だって帰って来たい。ちょっとだけ仕事で遠くに行くけど、またすぐ帰って来て、お前と一緒にウルトライダーごっこして遊ぼうと思ってたんだ。でも・・・・ごめん」
「いやだよおっ! 王雅にぃ、いっぱい遊ぶ約束したのにっ・・・・うわああーん!! いやだよーっっ」
他のガキ共も口々に俺の事を呼び、泣きながら傍に来てくれた。
迷ったが、俺とガキ共は今まで築いてきた信頼関係がある。ガキ共を信じて賭けに出よう。
危険だとは思うが、俺は彼等に自分の想いを打ち明け、託すことにした。
「いいか。よく聞け、お前等。悪いヤツに聞こえちゃいけないから、小さな声で話すぞ。もっと傍に来い」
めいっぱいガキ共を抱きしめながら言った。
「施設に新しくやってきた花井っていうオッサンは、美羽先生を手に入れようとして、お前等の幸せを壊しにきた、悪い奴なんだ。でも、アイツに逆らったら、お前等も酷い目に遭う。美羽先生も悲しむ。だから、出来るだけ言う事を聞け。お前等は賢いから、アイツに従うフリをするんだ。なに、大丈夫。少しの辛抱だ。俺が絶対に助けてやる。でも、俺の事は内緒だ。俺の事を言ったりしたら、美羽先生が酷い目に遭うんだ。だから、俺がここに帰って来るとか、俺が悪いオッサンをやっつけてやるとか、そんな事、花井に向かって絶対に言わないでくれ。約束できるか?」
「約束するっ!!」
全員が即答してくれた。勿論、小さな声で。
ガキ共は賢い。
「よし。俺は今から、その悪いオッサンを退治する旅に行って来る。ちょっと時間がかかるけど、頑張って出来るだけ早く帰って来るようにする。だからそれまでは、お前等が美羽先生を守ってくれ。俺の代わりに、美羽先生を頼む」
「はいっ!!」
「お前等サイコー! いい返事だ。俺は必ず帰って来るから、信じて待っていてくれ。だからお前等、それまでは頼んだぞ! お前等が美羽先生を守って、支えて、助けるんだ!」
「任せてっ!!」
口々に了解を得た。
「よーし、いいぞ。俺も安心して出発できる。じゃあ、いつもの気合入るヤツ、してくれ。小さな声でだぞ」
「お兄さん、いってらっしゃーい!!」
他にも、おーちゃんがんばれ―とか、おー、とか、王雅にぃ早く帰ってこいよー、とか色々、ガキ共にひそひそ声で言われた。
「ありがとう。行って来る」
俺もひそひそ声で返した。
よし! ガキ共のおかげで気合い入った。
さあ。行くぞ!
姫(みう)を取り戻すんだ。
美羽、待っててくれ。
俺はどんなことをしてでも、たとえこの手を血で汚すようなことになったとしても、構わねえ。
俺の全てを懸け、絶対にお前を花井から守ってやるからな!!
0
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる