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奪われた権利書・4

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 美羽に別れを告げ、断腸の思いで離れて遊戯室に向かった。中を覗くと、ガキ共は隅の方に固まって泣いていたり沈んでいたりして、誰も遊んだり話をしていなかった。
 アイツ等は、俺の事で泣いてくれてんのか――そう思ったら、ますます花井が許せなくなった。

 勿論、理由は俺の事だけじゃないと思う。突然見知らぬオッサンが来て、施設の自由を奪い、美羽を奪うんだ。楽しく暮らしていけるハズのアイツ等の生活を、花井の勝手な欲望の為に犠牲にさせてたまるか!


 でも今の俺には、花井を潰せる時間も、ヤツから権利書諸々奪い返す術も無い。


 ごめんな。辛い思いさせちまうけど、絶対に、俺が花井からお前等の幸せは取り返してやるからな。

「王雅にぃっ!!」

 俺の姿を見つけてくれたライタが飛んできた。「もう施設に来ちゃダメって、ホントか!? もう、王雅にぃに会えないのかよっ!?」

「ごめん」

 ライタを抱きしめた。「俺だって帰って来たい。ちょっとだけ仕事で遠くに行くけど、またすぐ帰って来て、お前と一緒にウルトライダーごっこして遊ぼうと思ってたんだ。でも・・・・ごめん」
 
「いやだよおっ! 王雅にぃ、いっぱい遊ぶ約束したのにっ・・・・うわああーん!! いやだよーっっ」

 他のガキ共も口々に俺の事を呼び、泣きながら傍に来てくれた。


 迷ったが、俺とガキ共は今まで築いてきた信頼関係がある。ガキ共を信じて賭けに出よう。
 危険だとは思うが、俺は彼等に自分の想いを打ち明け、託すことにした。

「いいか。よく聞け、お前等。悪いヤツに聞こえちゃいけないから、小さな声で話すぞ。もっと傍に来い」

 めいっぱいガキ共を抱きしめながら言った。

「施設に新しくやってきた花井っていうオッサンは、美羽先生を手に入れようとして、お前等の幸せを壊しにきた、悪い奴なんだ。でも、アイツに逆らったら、お前等も酷い目に遭う。美羽先生も悲しむ。だから、出来るだけ言う事を聞け。お前等は賢いから、アイツに従うフリをするんだ。なに、大丈夫。少しの辛抱だ。俺が絶対に助けてやる。でも、俺の事は内緒だ。俺の事を言ったりしたら、美羽先生が酷い目に遭うんだ。だから、俺がここに帰って来るとか、俺が悪いオッサンをやっつけてやるとか、そんな事、花井に向かって絶対に言わないでくれ。約束できるか?」

「約束するっ!!」

 全員が即答してくれた。勿論、小さな声で。
 ガキ共は賢い。
 
「よし。俺は今から、その悪いオッサンを退治する旅に行って来る。ちょっと時間がかかるけど、頑張って出来るだけ早く帰って来るようにする。だからそれまでは、お前等が美羽先生を守ってくれ。俺の代わりに、美羽先生を頼む」

「はいっ!!」

「お前等サイコー! いい返事だ。俺は必ず帰って来るから、信じて待っていてくれ。だからお前等、それまでは頼んだぞ! お前等が美羽先生を守って、支えて、助けるんだ!」

「任せてっ!!」

 口々に了解を得た。

「よーし、いいぞ。俺も安心して出発できる。じゃあ、いつもの気合入るヤツ、してくれ。小さな声でだぞ」

「お兄さん、いってらっしゃーい!!」

 他にも、おーちゃんがんばれ―とか、おー、とか、王雅にぃ早く帰ってこいよー、とか色々、ガキ共にひそひそ声で言われた。

「ありがとう。行って来る」

 俺もひそひそ声で返した。


 よし! ガキ共のおかげで気合い入った。


 さあ。行くぞ!
 姫(みう)を取り戻すんだ。


 美羽、待っててくれ。
 俺はどんなことをしてでも、たとえこの手を血で汚すようなことになったとしても、構わねえ。


 俺の全てを懸け、絶対にお前を花井から守ってやるからな!!


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