105 / 150
スマイル34
奪われた権利書・3
しおりを挟む
このままお前を連れ去ってしまいたい。
花井なんかにお前を渡したくない!!
この唇に、髪に、身体に・・・・花井が触れるのか。
もう二度と、俺の手には入らないのか。
ここまでなのか。
こんな事になるくらいなら、お前のキモチも無視して無理矢理にでも抱いて、俺のモンにしておきゃ良かった。
同意も取らず、結婚しておきゃ良かった。
キスを交わしながら、美羽の胸に触れた。温かくて柔らかい感触がすぐさま手の平に広がる。
花井に渡すくらいなら、せめて今この場で――美羽を壊して俺のモノにしてしまおうか。
「――っ!」
彼女の首筋に俺の唇が触れると、美羽の吐息が震えた。
夢にまで見た。お前を抱くこと。
こんなところで、こんな風にしかできないなんて、誰か夢だと言ってくれ。
もっと大切にしたかった。
もっと大事に抱いてやりたかった。
「お前が欲しい」
俺は一体、美羽をどうするつもりなんだ。
こんな場所で男女関係を結んだりして、彼女の尊厳をこれ以上傷つけるつもりなのか。
今の俺じゃ、酷い抱き方しかできないだろう。
ただ黒い欲をぶつけ、壊すだけの交わり――そんな風に身体を重ねても、何も満たされないのに。
でも、黒く歪んだ心が俺に行動を起こさせる。抵抗を見せない美羽に口づけして、彼女の着衣していたブラウスのボタンに手をかけた。
まるで誰かに操られているようだった。
「王雅・・・・」
彼女が再び零した涙が、俺の指に落ちた。
やめなきゃいけないと思っているのに、身体が勝手に動いてしまう。止める事が出来なかった。
俺の意志を無視した指は、彼女のブラウスのボタンを外した。
二つ目のボタンが外れた時、何かが見えた。
「美羽・・・・お前・・・・っ」
目を見開いて、彼女のブラウスを思わず握りしめた。
彼女が身に着けていたブラウスの下に、柔らかな白い肌とそれを包んでいる下着と共にシルバーのチェーンが隠れていた。その先には、美羽の誕生日、俺がプレゼントした婚約指輪として贈ったものが付けられていた。
それが、キラリと光った。
その指輪・・・・ずっと、大切に持っていてくれたのか。
それが、お前の本当のキモチなのか、美羽――
何やってんだ、俺はっ!!
「本当にごめん。気が動転して・・・・悪かった。もう二度とこんな事しない」
彼女の乱れた着衣を整え、頭を下げた。
「いいの。どうせだったら、このまま・・・・メチャクチャにしてくれたらいいのに」
美羽が顔を覆った。「もう、あんなジジイの所にお嫁にいくんだもん・・・・それならせめて、最後くらい・・・・王雅と・・・・」
堪らず、美羽を抱きしめた。
一体、どんな思いでそんな言葉を・・・・。胸が張り裂けそうだった。
「俺・・・・絶対にお前を取り返す! でも、花井の計算通り、今の俺にはどーすることもできねー。なあ、入籍日って何時だ? 明日か? 明後日か? もっとゴチャゴチャ適当な理由つけて、俺が帰って来るくらいまで、何とか伸ばすことはできねーか?」
「・・・・入籍日は、今年のクリスマス――この日は、美幸おかあさんの命日なの。花井が、この日がいいって」
「クリスマスだな、解った。それまで花井に指一本触れさせるな。難しいとは思うけど、何とか堪えて頑張ってくれ。本当は色々連絡したいけど、コソコソやりあってたら絶対に花井に感づかれる。だからこれから一切連絡は断つ。心にもない嘘も沢山つく。不安にさせちまうと思うけど、俺は絶対に裏切らない。だから俺を信じて、待っていてくれ!」
「王雅・・・・」
「この状況を打破するための時間をくれ。絶対に何とかする。お前も、施設も、ガキ共も、全部俺が守ってやるから! だからお前が、お帰りって・・・・俺に言ってくれ。お前の傍に、必ず帰って来るから」
美羽の瞳が閉じられた。彼女の溢れた涙を拭い、再び抱きしめた。
なあ。どうして俺が贈った指輪をそんな大切に、誰にも見つからないように隠したりしているんだ。
俺の事、好きだって思ってくれてたのか?
この前、俺の事好きかって聞いた時、『わかんない』とか言ってはぐらかしたのは、どういうつもりなんだ。
あぁ・・・・今すぐ問いただして、お前の返事聞いて、抱きしめて、愛して、ずっとずっと大切にしたい。
お前をこの腕に閉じ込めて、誰にも触れさせたくない。
それなのに、花井の許へ置いて行かなきゃいけない事――発狂しそうだ。
アイツの薄汚い手が美羽に触れるかもしれないと思うと、胸が潰れてしまいそうになる。
心臓ごと抉り出されて、叩き壊されるんじゃないかって思う程だ。
どうしてこんな事に・・・・。
でも、今は嘆き悲しんでいる場合じゃねえ。
花井を潰すには時間が足りない。一刻も早く、ありとあらゆる準備をしなくては。
二度と日の目を見れないよう、徹底的に叩き潰してやる!!
花井なんかにお前を渡したくない!!
この唇に、髪に、身体に・・・・花井が触れるのか。
もう二度と、俺の手には入らないのか。
ここまでなのか。
こんな事になるくらいなら、お前のキモチも無視して無理矢理にでも抱いて、俺のモンにしておきゃ良かった。
同意も取らず、結婚しておきゃ良かった。
キスを交わしながら、美羽の胸に触れた。温かくて柔らかい感触がすぐさま手の平に広がる。
花井に渡すくらいなら、せめて今この場で――美羽を壊して俺のモノにしてしまおうか。
「――っ!」
彼女の首筋に俺の唇が触れると、美羽の吐息が震えた。
夢にまで見た。お前を抱くこと。
こんなところで、こんな風にしかできないなんて、誰か夢だと言ってくれ。
もっと大切にしたかった。
もっと大事に抱いてやりたかった。
「お前が欲しい」
俺は一体、美羽をどうするつもりなんだ。
こんな場所で男女関係を結んだりして、彼女の尊厳をこれ以上傷つけるつもりなのか。
今の俺じゃ、酷い抱き方しかできないだろう。
ただ黒い欲をぶつけ、壊すだけの交わり――そんな風に身体を重ねても、何も満たされないのに。
でも、黒く歪んだ心が俺に行動を起こさせる。抵抗を見せない美羽に口づけして、彼女の着衣していたブラウスのボタンに手をかけた。
まるで誰かに操られているようだった。
「王雅・・・・」
彼女が再び零した涙が、俺の指に落ちた。
やめなきゃいけないと思っているのに、身体が勝手に動いてしまう。止める事が出来なかった。
俺の意志を無視した指は、彼女のブラウスのボタンを外した。
二つ目のボタンが外れた時、何かが見えた。
「美羽・・・・お前・・・・っ」
目を見開いて、彼女のブラウスを思わず握りしめた。
彼女が身に着けていたブラウスの下に、柔らかな白い肌とそれを包んでいる下着と共にシルバーのチェーンが隠れていた。その先には、美羽の誕生日、俺がプレゼントした婚約指輪として贈ったものが付けられていた。
それが、キラリと光った。
その指輪・・・・ずっと、大切に持っていてくれたのか。
それが、お前の本当のキモチなのか、美羽――
何やってんだ、俺はっ!!
「本当にごめん。気が動転して・・・・悪かった。もう二度とこんな事しない」
彼女の乱れた着衣を整え、頭を下げた。
「いいの。どうせだったら、このまま・・・・メチャクチャにしてくれたらいいのに」
美羽が顔を覆った。「もう、あんなジジイの所にお嫁にいくんだもん・・・・それならせめて、最後くらい・・・・王雅と・・・・」
堪らず、美羽を抱きしめた。
一体、どんな思いでそんな言葉を・・・・。胸が張り裂けそうだった。
「俺・・・・絶対にお前を取り返す! でも、花井の計算通り、今の俺にはどーすることもできねー。なあ、入籍日って何時だ? 明日か? 明後日か? もっとゴチャゴチャ適当な理由つけて、俺が帰って来るくらいまで、何とか伸ばすことはできねーか?」
「・・・・入籍日は、今年のクリスマス――この日は、美幸おかあさんの命日なの。花井が、この日がいいって」
「クリスマスだな、解った。それまで花井に指一本触れさせるな。難しいとは思うけど、何とか堪えて頑張ってくれ。本当は色々連絡したいけど、コソコソやりあってたら絶対に花井に感づかれる。だからこれから一切連絡は断つ。心にもない嘘も沢山つく。不安にさせちまうと思うけど、俺は絶対に裏切らない。だから俺を信じて、待っていてくれ!」
「王雅・・・・」
「この状況を打破するための時間をくれ。絶対に何とかする。お前も、施設も、ガキ共も、全部俺が守ってやるから! だからお前が、お帰りって・・・・俺に言ってくれ。お前の傍に、必ず帰って来るから」
美羽の瞳が閉じられた。彼女の溢れた涙を拭い、再び抱きしめた。
なあ。どうして俺が贈った指輪をそんな大切に、誰にも見つからないように隠したりしているんだ。
俺の事、好きだって思ってくれてたのか?
この前、俺の事好きかって聞いた時、『わかんない』とか言ってはぐらかしたのは、どういうつもりなんだ。
あぁ・・・・今すぐ問いただして、お前の返事聞いて、抱きしめて、愛して、ずっとずっと大切にしたい。
お前をこの腕に閉じ込めて、誰にも触れさせたくない。
それなのに、花井の許へ置いて行かなきゃいけない事――発狂しそうだ。
アイツの薄汚い手が美羽に触れるかもしれないと思うと、胸が潰れてしまいそうになる。
心臓ごと抉り出されて、叩き壊されるんじゃないかって思う程だ。
どうしてこんな事に・・・・。
でも、今は嘆き悲しんでいる場合じゃねえ。
花井を潰すには時間が足りない。一刻も早く、ありとあらゆる準備をしなくては。
二度と日の目を見れないよう、徹底的に叩き潰してやる!!
0
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説

それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる