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スマイル34
奪われた権利書・3
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このままお前を連れ去ってしまいたい。
花井なんかにお前を渡したくない!!
この唇に、髪に、身体に・・・・花井が触れるのか。
もう二度と、俺の手には入らないのか。
ここまでなのか。
こんな事になるくらいなら、お前のキモチも無視して無理矢理にでも抱いて、俺のモンにしておきゃ良かった。
同意も取らず、結婚しておきゃ良かった。
キスを交わしながら、美羽の胸に触れた。温かくて柔らかい感触がすぐさま手の平に広がる。
花井に渡すくらいなら、せめて今この場で――美羽を壊して俺のモノにしてしまおうか。
「――っ!」
彼女の首筋に俺の唇が触れると、美羽の吐息が震えた。
夢にまで見た。お前を抱くこと。
こんなところで、こんな風にしかできないなんて、誰か夢だと言ってくれ。
もっと大切にしたかった。
もっと大事に抱いてやりたかった。
「お前が欲しい」
俺は一体、美羽をどうするつもりなんだ。
こんな場所で男女関係を結んだりして、彼女の尊厳をこれ以上傷つけるつもりなのか。
今の俺じゃ、酷い抱き方しかできないだろう。
ただ黒い欲をぶつけ、壊すだけの交わり――そんな風に身体を重ねても、何も満たされないのに。
でも、黒く歪んだ心が俺に行動を起こさせる。抵抗を見せない美羽に口づけして、彼女の着衣していたブラウスのボタンに手をかけた。
まるで誰かに操られているようだった。
「王雅・・・・」
彼女が再び零した涙が、俺の指に落ちた。
やめなきゃいけないと思っているのに、身体が勝手に動いてしまう。止める事が出来なかった。
俺の意志を無視した指は、彼女のブラウスのボタンを外した。
二つ目のボタンが外れた時、何かが見えた。
「美羽・・・・お前・・・・っ」
目を見開いて、彼女のブラウスを思わず握りしめた。
彼女が身に着けていたブラウスの下に、柔らかな白い肌とそれを包んでいる下着と共にシルバーのチェーンが隠れていた。その先には、美羽の誕生日、俺がプレゼントした婚約指輪として贈ったものが付けられていた。
それが、キラリと光った。
その指輪・・・・ずっと、大切に持っていてくれたのか。
それが、お前の本当のキモチなのか、美羽――
何やってんだ、俺はっ!!
「本当にごめん。気が動転して・・・・悪かった。もう二度とこんな事しない」
彼女の乱れた着衣を整え、頭を下げた。
「いいの。どうせだったら、このまま・・・・メチャクチャにしてくれたらいいのに」
美羽が顔を覆った。「もう、あんなジジイの所にお嫁にいくんだもん・・・・それならせめて、最後くらい・・・・王雅と・・・・」
堪らず、美羽を抱きしめた。
一体、どんな思いでそんな言葉を・・・・。胸が張り裂けそうだった。
「俺・・・・絶対にお前を取り返す! でも、花井の計算通り、今の俺にはどーすることもできねー。なあ、入籍日って何時だ? 明日か? 明後日か? もっとゴチャゴチャ適当な理由つけて、俺が帰って来るくらいまで、何とか伸ばすことはできねーか?」
「・・・・入籍日は、今年のクリスマス――この日は、美幸おかあさんの命日なの。花井が、この日がいいって」
「クリスマスだな、解った。それまで花井に指一本触れさせるな。難しいとは思うけど、何とか堪えて頑張ってくれ。本当は色々連絡したいけど、コソコソやりあってたら絶対に花井に感づかれる。だからこれから一切連絡は断つ。心にもない嘘も沢山つく。不安にさせちまうと思うけど、俺は絶対に裏切らない。だから俺を信じて、待っていてくれ!」
「王雅・・・・」
「この状況を打破するための時間をくれ。絶対に何とかする。お前も、施設も、ガキ共も、全部俺が守ってやるから! だからお前が、お帰りって・・・・俺に言ってくれ。お前の傍に、必ず帰って来るから」
美羽の瞳が閉じられた。彼女の溢れた涙を拭い、再び抱きしめた。
なあ。どうして俺が贈った指輪をそんな大切に、誰にも見つからないように隠したりしているんだ。
俺の事、好きだって思ってくれてたのか?
この前、俺の事好きかって聞いた時、『わかんない』とか言ってはぐらかしたのは、どういうつもりなんだ。
あぁ・・・・今すぐ問いただして、お前の返事聞いて、抱きしめて、愛して、ずっとずっと大切にしたい。
お前をこの腕に閉じ込めて、誰にも触れさせたくない。
それなのに、花井の許へ置いて行かなきゃいけない事――発狂しそうだ。
アイツの薄汚い手が美羽に触れるかもしれないと思うと、胸が潰れてしまいそうになる。
心臓ごと抉り出されて、叩き壊されるんじゃないかって思う程だ。
どうしてこんな事に・・・・。
でも、今は嘆き悲しんでいる場合じゃねえ。
花井を潰すには時間が足りない。一刻も早く、ありとあらゆる準備をしなくては。
二度と日の目を見れないよう、徹底的に叩き潰してやる!!
花井なんかにお前を渡したくない!!
この唇に、髪に、身体に・・・・花井が触れるのか。
もう二度と、俺の手には入らないのか。
ここまでなのか。
こんな事になるくらいなら、お前のキモチも無視して無理矢理にでも抱いて、俺のモンにしておきゃ良かった。
同意も取らず、結婚しておきゃ良かった。
キスを交わしながら、美羽の胸に触れた。温かくて柔らかい感触がすぐさま手の平に広がる。
花井に渡すくらいなら、せめて今この場で――美羽を壊して俺のモノにしてしまおうか。
「――っ!」
彼女の首筋に俺の唇が触れると、美羽の吐息が震えた。
夢にまで見た。お前を抱くこと。
こんなところで、こんな風にしかできないなんて、誰か夢だと言ってくれ。
もっと大切にしたかった。
もっと大事に抱いてやりたかった。
「お前が欲しい」
俺は一体、美羽をどうするつもりなんだ。
こんな場所で男女関係を結んだりして、彼女の尊厳をこれ以上傷つけるつもりなのか。
今の俺じゃ、酷い抱き方しかできないだろう。
ただ黒い欲をぶつけ、壊すだけの交わり――そんな風に身体を重ねても、何も満たされないのに。
でも、黒く歪んだ心が俺に行動を起こさせる。抵抗を見せない美羽に口づけして、彼女の着衣していたブラウスのボタンに手をかけた。
まるで誰かに操られているようだった。
「王雅・・・・」
彼女が再び零した涙が、俺の指に落ちた。
やめなきゃいけないと思っているのに、身体が勝手に動いてしまう。止める事が出来なかった。
俺の意志を無視した指は、彼女のブラウスのボタンを外した。
二つ目のボタンが外れた時、何かが見えた。
「美羽・・・・お前・・・・っ」
目を見開いて、彼女のブラウスを思わず握りしめた。
彼女が身に着けていたブラウスの下に、柔らかな白い肌とそれを包んでいる下着と共にシルバーのチェーンが隠れていた。その先には、美羽の誕生日、俺がプレゼントした婚約指輪として贈ったものが付けられていた。
それが、キラリと光った。
その指輪・・・・ずっと、大切に持っていてくれたのか。
それが、お前の本当のキモチなのか、美羽――
何やってんだ、俺はっ!!
「本当にごめん。気が動転して・・・・悪かった。もう二度とこんな事しない」
彼女の乱れた着衣を整え、頭を下げた。
「いいの。どうせだったら、このまま・・・・メチャクチャにしてくれたらいいのに」
美羽が顔を覆った。「もう、あんなジジイの所にお嫁にいくんだもん・・・・それならせめて、最後くらい・・・・王雅と・・・・」
堪らず、美羽を抱きしめた。
一体、どんな思いでそんな言葉を・・・・。胸が張り裂けそうだった。
「俺・・・・絶対にお前を取り返す! でも、花井の計算通り、今の俺にはどーすることもできねー。なあ、入籍日って何時だ? 明日か? 明後日か? もっとゴチャゴチャ適当な理由つけて、俺が帰って来るくらいまで、何とか伸ばすことはできねーか?」
「・・・・入籍日は、今年のクリスマス――この日は、美幸おかあさんの命日なの。花井が、この日がいいって」
「クリスマスだな、解った。それまで花井に指一本触れさせるな。難しいとは思うけど、何とか堪えて頑張ってくれ。本当は色々連絡したいけど、コソコソやりあってたら絶対に花井に感づかれる。だからこれから一切連絡は断つ。心にもない嘘も沢山つく。不安にさせちまうと思うけど、俺は絶対に裏切らない。だから俺を信じて、待っていてくれ!」
「王雅・・・・」
「この状況を打破するための時間をくれ。絶対に何とかする。お前も、施設も、ガキ共も、全部俺が守ってやるから! だからお前が、お帰りって・・・・俺に言ってくれ。お前の傍に、必ず帰って来るから」
美羽の瞳が閉じられた。彼女の溢れた涙を拭い、再び抱きしめた。
なあ。どうして俺が贈った指輪をそんな大切に、誰にも見つからないように隠したりしているんだ。
俺の事、好きだって思ってくれてたのか?
この前、俺の事好きかって聞いた時、『わかんない』とか言ってはぐらかしたのは、どういうつもりなんだ。
あぁ・・・・今すぐ問いただして、お前の返事聞いて、抱きしめて、愛して、ずっとずっと大切にしたい。
お前をこの腕に閉じ込めて、誰にも触れさせたくない。
それなのに、花井の許へ置いて行かなきゃいけない事――発狂しそうだ。
アイツの薄汚い手が美羽に触れるかもしれないと思うと、胸が潰れてしまいそうになる。
心臓ごと抉り出されて、叩き壊されるんじゃないかって思う程だ。
どうしてこんな事に・・・・。
でも、今は嘆き悲しんでいる場合じゃねえ。
花井を潰すには時間が足りない。一刻も早く、ありとあらゆる準備をしなくては。
二度と日の目を見れないよう、徹底的に叩き潰してやる!!
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