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スマイル33
美羽のキモチ・3
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俺の涙腺はチイの時に崩壊してから、随分と脆弱になった。
一度壊れると、元には戻らないらしい。
例えば、主人公のガキが痛めつけられ、しかし歯を食いしばって立ち上がるような定番ドラマでさえ、感動して泣きそうになったりするようになっちまったんだ。
ついこの間、何かのテレビでそーいったドラマが放送されていたのを偶然見て、ワンシーンに感動しちまった。危うく泣きかけたんだぜ、この俺が!
俺は冷徹非情な男だったんだ。そんな男がガキ共に囲まれて泣いてるなんて、社のヤツに知れてみろ? 威厳が崩れるぞ。
でも、もしかしたら俺の事を昔から知っているヤツがそれを見たら、きっと俺って認識できないんじゃないかな。
そんくらい、俺は別人になった。この物語を最初から読み返したら、間違いなくお前誰だって思うだろ。それと同じだ。
ま、無事にエンディングまで辿り着けたら、一度やってみたら面白いかもしんねーな。何かの機会に暇があったら、是非やって楽しんでくれ。
「わっ・・・・私は泣かないわよ」美羽が焦ったように言った。
お前のことじゃねーよ。
っつーか、お前に泣かれたら俺、絶対ヤバい。
人目もはばからず俺も泣いて、お前の事抱きしめて離さねーと思う。
見送りは俺にとっちゃ、かなりハードル高いな。
でも、見送って欲しい。
でも、色々問題アリだ。どうしよう。
どうしようとは思うが、色々崩れちまったとしても、たとえボロ泣きしたとしても、お前等のあったかい言葉聞いたら、絶対、何があってもへこたれずにアメリカで頑張れると思う。
離れている辛い時間も、それを思い出したら乗り越えられるハズだ。
やっぱ、見送ってもらおう。
「あ、あのっ、だから、悲しくて泣いたりしないってコトだから! 王雅が行ってしまうのは私だって淋しいけど、でも、すぐ帰って来るんでしょう?」
あれこれ考えて随分難しい顔していたから、泣いたりしないって美羽が言った事に俺が傷ついたと勘違いしたのか、彼女は更に焦ってベラベラ喋っている。
面白いから続き聞こう。俺はわざと傷ついた顔をして見せた。
美羽も俺と離れる事、淋しいって思ってくれてんのか。
ニヤけそうになるのを必死で堪えた。
「大事なお仕事に行くのに、淋しいからって私が泣いたりしたら、王雅が困るでしょ。もう、何時までそんな顔してんのよっ。アンタらしくないわねっ!」
最後の方は、半分キレ気味でまくし立てられた。
しょげた部分を見せた方が、お前のキモチ聞き出せんのか。
押してもダメなら引いてみな、ってヤツか?
暫く様子を見よう。
「ホラっ、元気出しなさいよ。王雅のコト、待っててあげるから。おかえりって、みんなで言ってあげるから!」
よし。とりあえずお帰りの約束はとりつけた。
後から嘘でしたーとか言ったら、合意取った上で××(自主規制)してやるからな。覚悟しとけよ。
「本当か?」
「嘘なんか言わないわ」
「よし。じゃあ今の詫びとして、俺へのお前のキモチ、聞かせてくれよ」
俺の事どう思ってんのか、もういーかげん、自分で解るだろ。
良い感触だったら、同意とみなす。んで、今このまま、一気にゴールまで駆け抜ける。
渡米前のラストチャンスだ。ドキドキしてきた。
「キモチ・・・・?」
美羽が首を傾げた。
このっ、ニブチンが――っ!!
さっきのキノコの事、お前のコト好きじゃないとか、他に好きな女がいるとか、あれ、お前の妄想だろっ! 絶対そうに決まってる!
何でこんなに鈍いんだこの女はっ!! この領域は天然記念物クラスだ。
ラストチャンスは、鈍感女のせいで見事に砕け散った。
一度壊れると、元には戻らないらしい。
例えば、主人公のガキが痛めつけられ、しかし歯を食いしばって立ち上がるような定番ドラマでさえ、感動して泣きそうになったりするようになっちまったんだ。
ついこの間、何かのテレビでそーいったドラマが放送されていたのを偶然見て、ワンシーンに感動しちまった。危うく泣きかけたんだぜ、この俺が!
俺は冷徹非情な男だったんだ。そんな男がガキ共に囲まれて泣いてるなんて、社のヤツに知れてみろ? 威厳が崩れるぞ。
でも、もしかしたら俺の事を昔から知っているヤツがそれを見たら、きっと俺って認識できないんじゃないかな。
そんくらい、俺は別人になった。この物語を最初から読み返したら、間違いなくお前誰だって思うだろ。それと同じだ。
ま、無事にエンディングまで辿り着けたら、一度やってみたら面白いかもしんねーな。何かの機会に暇があったら、是非やって楽しんでくれ。
「わっ・・・・私は泣かないわよ」美羽が焦ったように言った。
お前のことじゃねーよ。
っつーか、お前に泣かれたら俺、絶対ヤバい。
人目もはばからず俺も泣いて、お前の事抱きしめて離さねーと思う。
見送りは俺にとっちゃ、かなりハードル高いな。
でも、見送って欲しい。
でも、色々問題アリだ。どうしよう。
どうしようとは思うが、色々崩れちまったとしても、たとえボロ泣きしたとしても、お前等のあったかい言葉聞いたら、絶対、何があってもへこたれずにアメリカで頑張れると思う。
離れている辛い時間も、それを思い出したら乗り越えられるハズだ。
やっぱ、見送ってもらおう。
「あ、あのっ、だから、悲しくて泣いたりしないってコトだから! 王雅が行ってしまうのは私だって淋しいけど、でも、すぐ帰って来るんでしょう?」
あれこれ考えて随分難しい顔していたから、泣いたりしないって美羽が言った事に俺が傷ついたと勘違いしたのか、彼女は更に焦ってベラベラ喋っている。
面白いから続き聞こう。俺はわざと傷ついた顔をして見せた。
美羽も俺と離れる事、淋しいって思ってくれてんのか。
ニヤけそうになるのを必死で堪えた。
「大事なお仕事に行くのに、淋しいからって私が泣いたりしたら、王雅が困るでしょ。もう、何時までそんな顔してんのよっ。アンタらしくないわねっ!」
最後の方は、半分キレ気味でまくし立てられた。
しょげた部分を見せた方が、お前のキモチ聞き出せんのか。
押してもダメなら引いてみな、ってヤツか?
暫く様子を見よう。
「ホラっ、元気出しなさいよ。王雅のコト、待っててあげるから。おかえりって、みんなで言ってあげるから!」
よし。とりあえずお帰りの約束はとりつけた。
後から嘘でしたーとか言ったら、合意取った上で××(自主規制)してやるからな。覚悟しとけよ。
「本当か?」
「嘘なんか言わないわ」
「よし。じゃあ今の詫びとして、俺へのお前のキモチ、聞かせてくれよ」
俺の事どう思ってんのか、もういーかげん、自分で解るだろ。
良い感触だったら、同意とみなす。んで、今このまま、一気にゴールまで駆け抜ける。
渡米前のラストチャンスだ。ドキドキしてきた。
「キモチ・・・・?」
美羽が首を傾げた。
このっ、ニブチンが――っ!!
さっきのキノコの事、お前のコト好きじゃないとか、他に好きな女がいるとか、あれ、お前の妄想だろっ! 絶対そうに決まってる!
何でこんなに鈍いんだこの女はっ!! この領域は天然記念物クラスだ。
ラストチャンスは、鈍感女のせいで見事に砕け散った。
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