97 / 150
スマイル32
ウルトライダーQ・6
しおりを挟む
俺は今までヒーローショーは全く興味無く、下らない余興だとバカにしていたが、その考えは今すぐ改めよう。
ガキ共を喜ばせる夢の舞台は、大人も感動させなきゃいけねーんだ。今からその舞台、どんな風に感動が起こるのか想像がつかない。だからこそ、この俺もワクワクしている。
プロジェクトには、ガキ共を幸せにするショーも取り入れる事にしよう。
決まりきったシナリオじゃなくて、今みたいに、自由度の高い設定なら尚面白い。
「X! 姿を現せっ!! 子供達に手出しはさせないぞ! 俺が相手だっ!!」
キュウが両手を上げ、円を描いてファイティングポーズを取った。彼の決めポーズだ。
それが合図だったようで、途端にピカピカとフラッシュが光り、遊戯室の入り口にXが現れた。
「現れたな、キュウ! 今日は負けないぞぉー! 返り討ちにしてくれるわぁー」
ドスンドスンと大きな効果音と共に、自慢の大きな尻尾を振り乱しながら、Xがステージめがけてやって来た。
ガキ共は固唾をのんでステージを見つめている。
戦いが始まった。
最初はキュウが押していた。しかしXは強い。だんだんキュウが劣勢になってきた。
「がんばれっ! がんばれーっ、ウルトライダーキュウっ!!」
簡易ステージのより近くに駆け寄ったライタが、大声でキュウを応援した。俺も引っ張られた上に、王雅にぃも大きな声で応援してっ、と怒鳴られた。
「がんばれー」
適当に小さな声で応援していると、ライタにメチャクチャ怒られた。「王雅にぃ、声が小さいっ!! もっと大きな声でっ! キュウに聞こえないっ!!」
「スンマセン」
何でお前に怒られなきゃいけねーんだよ。ったく。
「がんばれー、キュウー!」少し大きな声を出した。
「まだ小さい! もっと大きな声でっ!」
「負けるな、キュウ――っ!!」
やけくそになって叫んだ。
「王雅にぃ、いい調子っ! キュウ、がんばれ――っ!! Xに負けるな――っ!!」
「キュー! キュー! がー!!」
俺の腕の中で、キューマも応援しだした。コイツもだいぶ興奮している。
応援をやめると「おー!」と袖を引っ張られてキューマに怒られる。横にいるライタにもホンキで怒られるから、必死に声援を送り続けた。
暫く続けていると、キュイーン、と音楽と照明が変わった。真っ暗に照明が落とされ、キュウにピンスポットでブルーの照明が当てられた。
「ありがとう、マサキ施設のみんな! 君たちの応援は受け取った!! 見てくれ、このパワー!!」
照明が虹色に素早く変化した。赤、黄、青、緑、チカチカと光りながら、やがて簡易ステージに作られたスクリーンに大きな光の輪が映し出された。
キュウが両手を上げると、何時もの必殺技――スーパービームが大きな光の輪を作っている。
「君たちのパワーを、もっと俺にくれないか? スーパービームを何倍にもしよう。全員、右手を上げて!」
ショーに見入っている大人たちも含めて、全員が右手を上げた。上手い具合に照明が当たって、俺たちも光を作り出している様に錯覚する。
「ありがとう! いち、にの、さん、スーパービーム、でXにこのパワーをぶつけよう! 全員で声を揃えて、いくぞっ! せーのっ」
キュウの掛け声を目印に、全員が大きな声で叫んだ。
「いち、にの、さん! スーパービーム!!」
遊戯室に全員の声が響いた。すると、照明で作り出された光の輪がXめがけて飛んでいき、轟音と共に光の大爆発を起こした。
「ぐわあああああ――っ!! まいったぁ――っ!!」
Xはその場に倒れこんだ。
暗く落とされていた照明が明るくなり、動かなくなったXの傍にキュウが立った。
「今日はここまでだ。もう悪い事はしないと約束してくれ、X」
「キュウ・・・・」Xが呻いた。
「今日は、俺を呼んでくれた友達のライタ君が、四歳のお誕生日なんだ。今日の所は戦いを中断し、手を取り合って一緒に祝おう」
「えっ、俺のコト!? キュウ、俺の誕生日知ってんのっ!? ギャーッッ、どーしよーっ!!」
ギャーって、ライタ・・・・面白いヤツ。
しかし、こんな演出は頼んでなかったけど、なかなかやってくれるな。感動だ。
これは絶対、ガキだけじゃなく、大人も一生忘れられない誕生日イベントになる。
はいこれ、イタダキ。プロジェクトの一環に加えよう。
男はヒーロー、女はヒロインがいいだろう。今度はアイリかミイの誕生日辺りに、プリンセスアラモード(女の子向けアニメのキャラ)でも呼んでやろう。
「さあ、ライタ君。ステージに上がっておいで」
「えっ、いいの!?」
「勿論だ。さあ、俺に掴まって」
キュウがライタに向かって、右手を差し出してくれた。
「あ、あのっ、キューマも一緒に上がってもいい?」
「いいよ」
「あ、あのっ、サトルっちとリョウちゃんとガックンと王雅にぃも、一緒にいい? みんな、キュウが大好きなんだ!」
「何人でも」
俺もかよ!?
ステージ行きのメンバーに加えられた。大人なのに恥ずかしいぞ。
「王雅にぃ、ホラ、一緒にいくぞぉ」
キューマを一人で行かせられねーから、仕方なくステージに上がった。
何で俺まで・・・・。
「ライタ君。今日は君と、マサキ施設のみんなと友達になることが出来た。ありがとう。これからも俺の事を応援してくれるかい?」
「勿論!! 毎週応援するぞっ!」ライタが笑った。
「俺も友達になってー」
キュウとライタの間に、倒れていたXが起き上がって割り込んできた。
「いいよ! 仲良くしよーっ」
キュウとXの間にライタが入り、握手した。「コレで友達!」
「じゃあ友達になった証に、ライタ君に歌をプレゼントしよう。みんなも一緒に歌ってくれ」キュウが言った。
「ライタ君のお祝いに、ハッピーバースデー、歌っちゃうーぅ」
Xがノリよく尻尾をフリフリした。怪獣のクセに愛嬌があるな。
ガキ共もその様子がおかしかったようで、最初はXを見て怖くて泣いていたのに、今では笑っている。
「ハッピーバースデー トゥユー」
キュウが先陣切って歌い出し、ライタの為に全員で合掌した。
感動のヒーローショーのステージは、ハッピーバースデーの大合唱で幕を閉じた。
ガキ共を喜ばせる夢の舞台は、大人も感動させなきゃいけねーんだ。今からその舞台、どんな風に感動が起こるのか想像がつかない。だからこそ、この俺もワクワクしている。
プロジェクトには、ガキ共を幸せにするショーも取り入れる事にしよう。
決まりきったシナリオじゃなくて、今みたいに、自由度の高い設定なら尚面白い。
「X! 姿を現せっ!! 子供達に手出しはさせないぞ! 俺が相手だっ!!」
キュウが両手を上げ、円を描いてファイティングポーズを取った。彼の決めポーズだ。
それが合図だったようで、途端にピカピカとフラッシュが光り、遊戯室の入り口にXが現れた。
「現れたな、キュウ! 今日は負けないぞぉー! 返り討ちにしてくれるわぁー」
ドスンドスンと大きな効果音と共に、自慢の大きな尻尾を振り乱しながら、Xがステージめがけてやって来た。
ガキ共は固唾をのんでステージを見つめている。
戦いが始まった。
最初はキュウが押していた。しかしXは強い。だんだんキュウが劣勢になってきた。
「がんばれっ! がんばれーっ、ウルトライダーキュウっ!!」
簡易ステージのより近くに駆け寄ったライタが、大声でキュウを応援した。俺も引っ張られた上に、王雅にぃも大きな声で応援してっ、と怒鳴られた。
「がんばれー」
適当に小さな声で応援していると、ライタにメチャクチャ怒られた。「王雅にぃ、声が小さいっ!! もっと大きな声でっ! キュウに聞こえないっ!!」
「スンマセン」
何でお前に怒られなきゃいけねーんだよ。ったく。
「がんばれー、キュウー!」少し大きな声を出した。
「まだ小さい! もっと大きな声でっ!」
「負けるな、キュウ――っ!!」
やけくそになって叫んだ。
「王雅にぃ、いい調子っ! キュウ、がんばれ――っ!! Xに負けるな――っ!!」
「キュー! キュー! がー!!」
俺の腕の中で、キューマも応援しだした。コイツもだいぶ興奮している。
応援をやめると「おー!」と袖を引っ張られてキューマに怒られる。横にいるライタにもホンキで怒られるから、必死に声援を送り続けた。
暫く続けていると、キュイーン、と音楽と照明が変わった。真っ暗に照明が落とされ、キュウにピンスポットでブルーの照明が当てられた。
「ありがとう、マサキ施設のみんな! 君たちの応援は受け取った!! 見てくれ、このパワー!!」
照明が虹色に素早く変化した。赤、黄、青、緑、チカチカと光りながら、やがて簡易ステージに作られたスクリーンに大きな光の輪が映し出された。
キュウが両手を上げると、何時もの必殺技――スーパービームが大きな光の輪を作っている。
「君たちのパワーを、もっと俺にくれないか? スーパービームを何倍にもしよう。全員、右手を上げて!」
ショーに見入っている大人たちも含めて、全員が右手を上げた。上手い具合に照明が当たって、俺たちも光を作り出している様に錯覚する。
「ありがとう! いち、にの、さん、スーパービーム、でXにこのパワーをぶつけよう! 全員で声を揃えて、いくぞっ! せーのっ」
キュウの掛け声を目印に、全員が大きな声で叫んだ。
「いち、にの、さん! スーパービーム!!」
遊戯室に全員の声が響いた。すると、照明で作り出された光の輪がXめがけて飛んでいき、轟音と共に光の大爆発を起こした。
「ぐわあああああ――っ!! まいったぁ――っ!!」
Xはその場に倒れこんだ。
暗く落とされていた照明が明るくなり、動かなくなったXの傍にキュウが立った。
「今日はここまでだ。もう悪い事はしないと約束してくれ、X」
「キュウ・・・・」Xが呻いた。
「今日は、俺を呼んでくれた友達のライタ君が、四歳のお誕生日なんだ。今日の所は戦いを中断し、手を取り合って一緒に祝おう」
「えっ、俺のコト!? キュウ、俺の誕生日知ってんのっ!? ギャーッッ、どーしよーっ!!」
ギャーって、ライタ・・・・面白いヤツ。
しかし、こんな演出は頼んでなかったけど、なかなかやってくれるな。感動だ。
これは絶対、ガキだけじゃなく、大人も一生忘れられない誕生日イベントになる。
はいこれ、イタダキ。プロジェクトの一環に加えよう。
男はヒーロー、女はヒロインがいいだろう。今度はアイリかミイの誕生日辺りに、プリンセスアラモード(女の子向けアニメのキャラ)でも呼んでやろう。
「さあ、ライタ君。ステージに上がっておいで」
「えっ、いいの!?」
「勿論だ。さあ、俺に掴まって」
キュウがライタに向かって、右手を差し出してくれた。
「あ、あのっ、キューマも一緒に上がってもいい?」
「いいよ」
「あ、あのっ、サトルっちとリョウちゃんとガックンと王雅にぃも、一緒にいい? みんな、キュウが大好きなんだ!」
「何人でも」
俺もかよ!?
ステージ行きのメンバーに加えられた。大人なのに恥ずかしいぞ。
「王雅にぃ、ホラ、一緒にいくぞぉ」
キューマを一人で行かせられねーから、仕方なくステージに上がった。
何で俺まで・・・・。
「ライタ君。今日は君と、マサキ施設のみんなと友達になることが出来た。ありがとう。これからも俺の事を応援してくれるかい?」
「勿論!! 毎週応援するぞっ!」ライタが笑った。
「俺も友達になってー」
キュウとライタの間に、倒れていたXが起き上がって割り込んできた。
「いいよ! 仲良くしよーっ」
キュウとXの間にライタが入り、握手した。「コレで友達!」
「じゃあ友達になった証に、ライタ君に歌をプレゼントしよう。みんなも一緒に歌ってくれ」キュウが言った。
「ライタ君のお祝いに、ハッピーバースデー、歌っちゃうーぅ」
Xがノリよく尻尾をフリフリした。怪獣のクセに愛嬌があるな。
ガキ共もその様子がおかしかったようで、最初はXを見て怖くて泣いていたのに、今では笑っている。
「ハッピーバースデー トゥユー」
キュウが先陣切って歌い出し、ライタの為に全員で合掌した。
感動のヒーローショーのステージは、ハッピーバースデーの大合唱で幕を閉じた。
0
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説

それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる