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スマイル32
ウルトライダーQ・6
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俺は今までヒーローショーは全く興味無く、下らない余興だとバカにしていたが、その考えは今すぐ改めよう。
ガキ共を喜ばせる夢の舞台は、大人も感動させなきゃいけねーんだ。今からその舞台、どんな風に感動が起こるのか想像がつかない。だからこそ、この俺もワクワクしている。
プロジェクトには、ガキ共を幸せにするショーも取り入れる事にしよう。
決まりきったシナリオじゃなくて、今みたいに、自由度の高い設定なら尚面白い。
「X! 姿を現せっ!! 子供達に手出しはさせないぞ! 俺が相手だっ!!」
キュウが両手を上げ、円を描いてファイティングポーズを取った。彼の決めポーズだ。
それが合図だったようで、途端にピカピカとフラッシュが光り、遊戯室の入り口にXが現れた。
「現れたな、キュウ! 今日は負けないぞぉー! 返り討ちにしてくれるわぁー」
ドスンドスンと大きな効果音と共に、自慢の大きな尻尾を振り乱しながら、Xがステージめがけてやって来た。
ガキ共は固唾をのんでステージを見つめている。
戦いが始まった。
最初はキュウが押していた。しかしXは強い。だんだんキュウが劣勢になってきた。
「がんばれっ! がんばれーっ、ウルトライダーキュウっ!!」
簡易ステージのより近くに駆け寄ったライタが、大声でキュウを応援した。俺も引っ張られた上に、王雅にぃも大きな声で応援してっ、と怒鳴られた。
「がんばれー」
適当に小さな声で応援していると、ライタにメチャクチャ怒られた。「王雅にぃ、声が小さいっ!! もっと大きな声でっ! キュウに聞こえないっ!!」
「スンマセン」
何でお前に怒られなきゃいけねーんだよ。ったく。
「がんばれー、キュウー!」少し大きな声を出した。
「まだ小さい! もっと大きな声でっ!」
「負けるな、キュウ――っ!!」
やけくそになって叫んだ。
「王雅にぃ、いい調子っ! キュウ、がんばれ――っ!! Xに負けるな――っ!!」
「キュー! キュー! がー!!」
俺の腕の中で、キューマも応援しだした。コイツもだいぶ興奮している。
応援をやめると「おー!」と袖を引っ張られてキューマに怒られる。横にいるライタにもホンキで怒られるから、必死に声援を送り続けた。
暫く続けていると、キュイーン、と音楽と照明が変わった。真っ暗に照明が落とされ、キュウにピンスポットでブルーの照明が当てられた。
「ありがとう、マサキ施設のみんな! 君たちの応援は受け取った!! 見てくれ、このパワー!!」
照明が虹色に素早く変化した。赤、黄、青、緑、チカチカと光りながら、やがて簡易ステージに作られたスクリーンに大きな光の輪が映し出された。
キュウが両手を上げると、何時もの必殺技――スーパービームが大きな光の輪を作っている。
「君たちのパワーを、もっと俺にくれないか? スーパービームを何倍にもしよう。全員、右手を上げて!」
ショーに見入っている大人たちも含めて、全員が右手を上げた。上手い具合に照明が当たって、俺たちも光を作り出している様に錯覚する。
「ありがとう! いち、にの、さん、スーパービーム、でXにこのパワーをぶつけよう! 全員で声を揃えて、いくぞっ! せーのっ」
キュウの掛け声を目印に、全員が大きな声で叫んだ。
「いち、にの、さん! スーパービーム!!」
遊戯室に全員の声が響いた。すると、照明で作り出された光の輪がXめがけて飛んでいき、轟音と共に光の大爆発を起こした。
「ぐわあああああ――っ!! まいったぁ――っ!!」
Xはその場に倒れこんだ。
暗く落とされていた照明が明るくなり、動かなくなったXの傍にキュウが立った。
「今日はここまでだ。もう悪い事はしないと約束してくれ、X」
「キュウ・・・・」Xが呻いた。
「今日は、俺を呼んでくれた友達のライタ君が、四歳のお誕生日なんだ。今日の所は戦いを中断し、手を取り合って一緒に祝おう」
「えっ、俺のコト!? キュウ、俺の誕生日知ってんのっ!? ギャーッッ、どーしよーっ!!」
ギャーって、ライタ・・・・面白いヤツ。
しかし、こんな演出は頼んでなかったけど、なかなかやってくれるな。感動だ。
これは絶対、ガキだけじゃなく、大人も一生忘れられない誕生日イベントになる。
はいこれ、イタダキ。プロジェクトの一環に加えよう。
男はヒーロー、女はヒロインがいいだろう。今度はアイリかミイの誕生日辺りに、プリンセスアラモード(女の子向けアニメのキャラ)でも呼んでやろう。
「さあ、ライタ君。ステージに上がっておいで」
「えっ、いいの!?」
「勿論だ。さあ、俺に掴まって」
キュウがライタに向かって、右手を差し出してくれた。
「あ、あのっ、キューマも一緒に上がってもいい?」
「いいよ」
「あ、あのっ、サトルっちとリョウちゃんとガックンと王雅にぃも、一緒にいい? みんな、キュウが大好きなんだ!」
「何人でも」
俺もかよ!?
ステージ行きのメンバーに加えられた。大人なのに恥ずかしいぞ。
「王雅にぃ、ホラ、一緒にいくぞぉ」
キューマを一人で行かせられねーから、仕方なくステージに上がった。
何で俺まで・・・・。
「ライタ君。今日は君と、マサキ施設のみんなと友達になることが出来た。ありがとう。これからも俺の事を応援してくれるかい?」
「勿論!! 毎週応援するぞっ!」ライタが笑った。
「俺も友達になってー」
キュウとライタの間に、倒れていたXが起き上がって割り込んできた。
「いいよ! 仲良くしよーっ」
キュウとXの間にライタが入り、握手した。「コレで友達!」
「じゃあ友達になった証に、ライタ君に歌をプレゼントしよう。みんなも一緒に歌ってくれ」キュウが言った。
「ライタ君のお祝いに、ハッピーバースデー、歌っちゃうーぅ」
Xがノリよく尻尾をフリフリした。怪獣のクセに愛嬌があるな。
ガキ共もその様子がおかしかったようで、最初はXを見て怖くて泣いていたのに、今では笑っている。
「ハッピーバースデー トゥユー」
キュウが先陣切って歌い出し、ライタの為に全員で合掌した。
感動のヒーローショーのステージは、ハッピーバースデーの大合唱で幕を閉じた。
ガキ共を喜ばせる夢の舞台は、大人も感動させなきゃいけねーんだ。今からその舞台、どんな風に感動が起こるのか想像がつかない。だからこそ、この俺もワクワクしている。
プロジェクトには、ガキ共を幸せにするショーも取り入れる事にしよう。
決まりきったシナリオじゃなくて、今みたいに、自由度の高い設定なら尚面白い。
「X! 姿を現せっ!! 子供達に手出しはさせないぞ! 俺が相手だっ!!」
キュウが両手を上げ、円を描いてファイティングポーズを取った。彼の決めポーズだ。
それが合図だったようで、途端にピカピカとフラッシュが光り、遊戯室の入り口にXが現れた。
「現れたな、キュウ! 今日は負けないぞぉー! 返り討ちにしてくれるわぁー」
ドスンドスンと大きな効果音と共に、自慢の大きな尻尾を振り乱しながら、Xがステージめがけてやって来た。
ガキ共は固唾をのんでステージを見つめている。
戦いが始まった。
最初はキュウが押していた。しかしXは強い。だんだんキュウが劣勢になってきた。
「がんばれっ! がんばれーっ、ウルトライダーキュウっ!!」
簡易ステージのより近くに駆け寄ったライタが、大声でキュウを応援した。俺も引っ張られた上に、王雅にぃも大きな声で応援してっ、と怒鳴られた。
「がんばれー」
適当に小さな声で応援していると、ライタにメチャクチャ怒られた。「王雅にぃ、声が小さいっ!! もっと大きな声でっ! キュウに聞こえないっ!!」
「スンマセン」
何でお前に怒られなきゃいけねーんだよ。ったく。
「がんばれー、キュウー!」少し大きな声を出した。
「まだ小さい! もっと大きな声でっ!」
「負けるな、キュウ――っ!!」
やけくそになって叫んだ。
「王雅にぃ、いい調子っ! キュウ、がんばれ――っ!! Xに負けるな――っ!!」
「キュー! キュー! がー!!」
俺の腕の中で、キューマも応援しだした。コイツもだいぶ興奮している。
応援をやめると「おー!」と袖を引っ張られてキューマに怒られる。横にいるライタにもホンキで怒られるから、必死に声援を送り続けた。
暫く続けていると、キュイーン、と音楽と照明が変わった。真っ暗に照明が落とされ、キュウにピンスポットでブルーの照明が当てられた。
「ありがとう、マサキ施設のみんな! 君たちの応援は受け取った!! 見てくれ、このパワー!!」
照明が虹色に素早く変化した。赤、黄、青、緑、チカチカと光りながら、やがて簡易ステージに作られたスクリーンに大きな光の輪が映し出された。
キュウが両手を上げると、何時もの必殺技――スーパービームが大きな光の輪を作っている。
「君たちのパワーを、もっと俺にくれないか? スーパービームを何倍にもしよう。全員、右手を上げて!」
ショーに見入っている大人たちも含めて、全員が右手を上げた。上手い具合に照明が当たって、俺たちも光を作り出している様に錯覚する。
「ありがとう! いち、にの、さん、スーパービーム、でXにこのパワーをぶつけよう! 全員で声を揃えて、いくぞっ! せーのっ」
キュウの掛け声を目印に、全員が大きな声で叫んだ。
「いち、にの、さん! スーパービーム!!」
遊戯室に全員の声が響いた。すると、照明で作り出された光の輪がXめがけて飛んでいき、轟音と共に光の大爆発を起こした。
「ぐわあああああ――っ!! まいったぁ――っ!!」
Xはその場に倒れこんだ。
暗く落とされていた照明が明るくなり、動かなくなったXの傍にキュウが立った。
「今日はここまでだ。もう悪い事はしないと約束してくれ、X」
「キュウ・・・・」Xが呻いた。
「今日は、俺を呼んでくれた友達のライタ君が、四歳のお誕生日なんだ。今日の所は戦いを中断し、手を取り合って一緒に祝おう」
「えっ、俺のコト!? キュウ、俺の誕生日知ってんのっ!? ギャーッッ、どーしよーっ!!」
ギャーって、ライタ・・・・面白いヤツ。
しかし、こんな演出は頼んでなかったけど、なかなかやってくれるな。感動だ。
これは絶対、ガキだけじゃなく、大人も一生忘れられない誕生日イベントになる。
はいこれ、イタダキ。プロジェクトの一環に加えよう。
男はヒーロー、女はヒロインがいいだろう。今度はアイリかミイの誕生日辺りに、プリンセスアラモード(女の子向けアニメのキャラ)でも呼んでやろう。
「さあ、ライタ君。ステージに上がっておいで」
「えっ、いいの!?」
「勿論だ。さあ、俺に掴まって」
キュウがライタに向かって、右手を差し出してくれた。
「あ、あのっ、キューマも一緒に上がってもいい?」
「いいよ」
「あ、あのっ、サトルっちとリョウちゃんとガックンと王雅にぃも、一緒にいい? みんな、キュウが大好きなんだ!」
「何人でも」
俺もかよ!?
ステージ行きのメンバーに加えられた。大人なのに恥ずかしいぞ。
「王雅にぃ、ホラ、一緒にいくぞぉ」
キューマを一人で行かせられねーから、仕方なくステージに上がった。
何で俺まで・・・・。
「ライタ君。今日は君と、マサキ施設のみんなと友達になることが出来た。ありがとう。これからも俺の事を応援してくれるかい?」
「勿論!! 毎週応援するぞっ!」ライタが笑った。
「俺も友達になってー」
キュウとライタの間に、倒れていたXが起き上がって割り込んできた。
「いいよ! 仲良くしよーっ」
キュウとXの間にライタが入り、握手した。「コレで友達!」
「じゃあ友達になった証に、ライタ君に歌をプレゼントしよう。みんなも一緒に歌ってくれ」キュウが言った。
「ライタ君のお祝いに、ハッピーバースデー、歌っちゃうーぅ」
Xがノリよく尻尾をフリフリした。怪獣のクセに愛嬌があるな。
ガキ共もその様子がおかしかったようで、最初はXを見て怖くて泣いていたのに、今では笑っている。
「ハッピーバースデー トゥユー」
キュウが先陣切って歌い出し、ライタの為に全員で合掌した。
感動のヒーローショーのステージは、ハッピーバースデーの大合唱で幕を閉じた。
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