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スマイル32
ウルトライダーQ・5
しおりを挟む「王雅にぃ、やっぱりキューマいない」
ライタも気づいたようで、キョロキョロ見回している。
「探してくる」
再び食堂の方へライタが向かおうとしたその時だった。
パッ、と遊戯室の電気が消され、辺りが暗くなってパチパチと照明のフラッシュが光った。
「キャーっ」
「怖いよーっ」
ガキ共が互いに身体を寄せ合って、震えている。
あんまり怖がらせちゃいけないから、暗い照明は手短に頼むという旨は伝えてある。
「王雅にぃ・・・・どうしよう・・・・キューマ絶対一人で怖がってるよぉ・・・・」
自分も怖くて震えているのに、ライタは未だにキューマの心配をしている。
お前、最高だ。世界一カッコイイ四歳児だ。ご褒美に、後で死ぬ程キュウに抱っこしてもらえ。
キュウの一日貸し切り券、お前にプレゼントしてやる。
「大丈夫だ。ピンチになった時は、誰を呼ぶんだったっけ?」
キューマはどこかに紛れちまったのかな。俺が探しに行こう。
「えっ。でも、マサキ施設になんかキュウは来ないって・・・・王雅にぃ、言ったぞー」
そーいやちょっと前、そんな事言ったか。
ガキは本当に些細なコトをイチイチ覚えているんだな。下手な嘘はつけないな。
「いーからっ。Xが来たから助けてくれっつったら、キュウだってマサキ施設に来てくれんだろ」
「そっか。よし、呼ぶぞー」
ライタが単純で良かった。
「キュウ! 助けてーっ!! 友達のキューマがいなくなっちゃったーっ!! Xも来たよーっ!!」
大きな声でライタが叫んだ。
ライタに習って、ガキ共も一斉にキュウを呼び始めた。
すると、ピカっと簡易ステージの上が光りって雷鳴が轟き、キュウの登場する時の曲が鳴り出した。
「キューマ君は無事だっ! 俺と一緒ににいるから大丈夫だ!」キュウの声が響いた。
インカムを付けているので、キュウの声は音響を通して流れる。後からステージに上がるXも同様だ。
ま、この辺は通常のヒーローショーと同じだ。
それより相変わらず奇抜なボディーだな、キュウは。
シルバーがベースになっているボディに、赤と青が交差したペイントがあしらわれている。ボディー中央に取り付けられたデザインベルトには、剣や秘密武器が収納できるようになっていて、戦いによってその武器を使い分けている。
仮面と言うか顔は、ゴツいゴーグルのようなものが目の部分にデザインされている。
まあ、よくある戦隊ものシリーズの主人公といった感じだ。
今日は真っ赤なマントを身に着けている。普段の戦いのときは邪魔だから付けていないが、これは、光の国の王子の証らしい。
「キュウだっ!!」
ライタが目を輝かせた。「どーしよっ、王雅にぃの言う通り、本当にキュウが来てくれたんだっ!! やったぁ!」
「良かったな。ライタの声が届いたんだ」
シャキーン、という彼が登場するシーンの効果音が流れ、遊戯室の入り口にキューマを抱えたキュウが現れた。
「キューマだ!!」ライタが更に目を輝かせた。大興奮だ。
「俺を呼んでくれたのは、君か?」
割と入口付近にいたモンだから、すぐにキュウがライタの傍にやって来た。キュウの動きにスポットライトも併せて移動し、今はキュウと抱っこされたキューマと、圏内に入ったライタが輝いている。
キューマは人見知りするクセに、ライタのお陰でキュウが好きになったモンだから、泣くどころか、キュウに抱っこされてニコニコしていた。
キューマのヤツ、勝手に違う所へ歩いていってキュウに捕獲されたんだな。
それを演出に使ってくれるとは。なかなかやるじゃねーか。
「キュウ、あのっ・・・・Xがマサキ施設に来たんだ! みんな怖がってるから、追い返して欲しいっ!!」
「Xが!? よしっ、今から俺がXと戦うから、ライタ君、応援してくれないか?」
「えっ、キュウ、俺の名前知ってるの!?」ライタが感動の目を向けている。
「勿論だ。正義の味方は何でも知っているんだぞ」
「カッコイイー!!」
あばたもえくぼ状態のライタは、感激で目を潤ませている。憧れのキュウに逢えて、メチャクチャ嬉しそーだ。
「さあ。キューマ君も、離れていなさい。あのステージで、今からXと戦って追い返すから、俺の応援、頼んだぞ!」
彼は俺にキューマを託してきた。そして赤いマントを翻し、優雅に歩くヒーローぷりを見せてくれた。
「とあっ!」
簡易ステージへ上がる踏み台から大きくジャンプして、キュウが宙返りを見せた。
彼を見ているうちに、俺も興奮してきたっ!
正義の味方、カッコイイな。このヒーローは架空のものだと判っちゃいても、感動と興奮が胸を包んだ。
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