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ウルトライダーQ・4

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 ピンポロポロリーン


 十時のチャイムが鳴ったので、俺も食堂に急いだ。
 何食わぬ顔をして食堂に入ると、キノコが丁度絵本をガキ共に読んでいた。目が合ったので合図したら、頷かれた。美羽や真凛も既に到着していた。


「はーっはっはっはーぁ! ここかぁー! 美味そうなガキ共がいるという施設はぁー」


 食堂に、宇宙怪獣Xが現れた。
 黒く棘のあるボディは大きな恐竜をモチーフにしてあり、太い腕に鋭い爪、更に大きく太いしっぽまで棘があしらわれていて、大きな腹から赤い鞭が伸びている。宇宙怪獣Xはこの鞭で相手を捕らえ、捕食する。
 着ぐるみだから人間が中に入っているのは解っているが、なかなか恐ろしい容姿だ。
 さっき仕事部屋に行って準備を覗いた時、着ぐるみを見せてもらったが相当重かった。これを着て歩き回ってアクションするとか、スゲー仕事だな。俺には真似できねー。

 大成功したら、報酬は弾んでやるからな。


「キャーっ! 怪獣Xだわ!!」

「みんな、Xに気を付けて!」


 真凛や美羽が恐怖を煽るように叫んだ。勿論、演技だ。
 しかし、ガキ共の一部は早くも泣き出した。そりゃそうだ。こんな恐ろしい怪獣がいきなり施設に現れたら、怖いに決まってる。自分が食われるって信じているだろーからな。

 
「Xっ、ガキ共に手出しさせるか!」

 近くにいた俺が偽パンチや偽キックを喰らわせるが、当然だがXはビクともしない。

「地球人のパンチなんか、効かぬわぁー」

 Xが俺の腹めがけて腕を振り下ろした。全く痛くないパンチが腹に当たった。

「ううっ・・・・」

 俺は顔を歪めて膝をついた。

「ガキ共に手出しはさせねーぞ・・・・」

 自分でもなかなかの演技派だと思う。Xの太い足にしがみついて、ガキ共に向かって叫んだ。「早く逃げろっ! 俺が食い止めるから!!」


「くっそおおお! よくも王雅にぃを! Xっ、俺がっ、や、やっ、やっつけてやる!!」


 怖いのにひっくり返った声で叫び、何時もの紙で作った剣を――どんな時でも持ち歩いてんだな――振り回して、ライタがXに突撃した。


「ぐぁあぁ――っ!」


 空気を読める怪獣Xは、ライタのくそしょーもない攻撃を受け、わざわざ苦悶の声を漏らしてくれた。
 更に、悶え苦しむ演技を見せてくれている。

「あ、スゴイ!! Xに攻撃が効いたわ! ライタ君、今のうちよっ! 早く逃げましょう!!」

 美羽、ナイス!

「遊戯室の方へ行こう! 早く隠れるんだ!」

「みんな、急いで!!」

 キノコ兄妹が誘導して、遊戯室の方に全員を連れ出してくれた。
 
「ライタ、ありがとう。お前のお陰で助かったぜ! 強いな、お前っ!!」

 ライタのイガグリ頭をグリグリ撫でて、褒めてやった。

「王雅にぃを助けるのは、あたりまえーのカッパー」

 怖くて震えてるクセに、誤魔化そうとして、カッパーとか訳の分からない事を言いだすライタ。
 笑かすな。真剣な顔してんのが、崩れちまうだろ。


「Xがまた起き上がって襲ってくるかもしんねーから、早く逃げようぜ!!」

「うん! あっ、キューマ、大丈夫かな? ちゃんと逃げれたか? 足遅いから、心配」

 自分も怖いクセにキューマの心配をするお前は、世界一カッコイイ四歳児だと思う。
 俺も早くこんな風に、美羽が惚れるような世界一の男になんなきゃな。


「よし、一緒に探そう! キューマ! 大丈夫か―っ」


 ライタの手を取って走って食堂を飛び出し、遊戯室までの廊下を急いだ。
 食堂はもう誰も残っていなかったし、廊下などにも逃げ遅れたガキは誰もいなかった。キューマを探したがとりあえず姿は見えなかったので、俺達も遊戯室へ急いだ。

 中に入って見渡すと、突如現れたステージを見てガキ共は驚いた顔を見せていた。
 何時もは明るい遊戯室が、黒い幕に覆われていてちょっと薄暗い。後で電気が消えるから、多分また泣き出すガキも出るだろうけど、キュウが出てきたら大丈夫だろう。

 それより、キューマがいない。
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