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スマイル31
逆ライバル? 6
しおりを挟む「楽しそうね。順調?」
全員の様子を見る為に巡回していた美羽が、手を取り合って喜んでいる俺達に声をかけてくれた。
「あっ、美羽、見てくれよ! アイリのお陰でこんな大きな親子芋が掘れたんだっ! スゲーだろっ?」
興奮してまくしたてる俺に、美羽は笑顔を見せてくれた。
「アイリちゃんのお陰ね。ありがとう。王雅お兄さん、とっても喜んでるわね」
「いいよぉー。おーちゃんとはオトモダチだから、色々アイリが教えてあげるのぉー」
どうやらアイリの中で、俺は冷蔵庫友達と位置づけされているようだ。
あんまり嬉しくない友達内容だが、アイリが友達と言ってくれるのは嬉しい。
しかし、俺達は友達なのか?
良く解らない関係だが、まあ、一緒に居て楽しいから、友達でいいかと思う。
俺は友達が一人もいない寒い男だから、アイリが友達第一号ってワケか。
だったらガキ共は全員友達だな。うん、それ、嬉しいな。
そしたら俺は、友達人数ゼロから一気に沢山に増えるワケだ。
友達か。あったかいな。
何だかとても嬉しくなった。
「王雅、どうしたの? 凄く嬉しそうだけど」
「あ、うん。アイリが色々教えてくれてスゲー楽しかったからさ、嬉しいんだ。それから今日、俺をここに連れてきてくれて、ありがとう。お陰で、スゲー大切な事に気が付いたんだ。予定もわざわざ俺の為に変えてくれたんだろ? 感謝してる」
「・・・・改まってお礼なんて、いいのに」
美羽があんまり俺が真剣になって伝えるもんだから、少し照れながら微笑んだ。
俺は彼女の笑顔を見て、何故か、どうしても、今すぐ自分のものにしたくなった。
アイリが傍にいたがそれよりも、熱く猛る自分のキモチを正直に、今すぐ伝えなきゃいけないと、そんな衝動にかられた。
「ありがとう。俺、お前達がスゲー好きなんだ。どんなコトしてても、どんな時でも俺を包んでくれて、あったかくなれるから」
深呼吸した。美羽が俺を真剣に見つめてくれている。
一度瞳を閉じ、高鳴る鼓動を押さえ、再び目を開いた。
「美羽、お前が――」
「王雅ぁーっ! みーつけたぁ!!」
好きなんだ、俺と結婚してくれねーか、お前とガキ共と一緒に暮らしたい、絶対幸せにするから俺を信じて欲しい、って伝えようと思ったのに。
真凛の大声とタックルで、かき消されちまった。
「王雅。ミューちゃんとナニ喋ってんの? 私というものがありながら」
「はあっ!? ナニ言って――」
ぐいっと乱暴に引き寄せられ、耳元で囁かれた。「私、本人に直接聞いたんだ。ミューちゃんは王雅のコト、何とも思っちゃいないって。告白なんかしてもフラれるだけでムダだから、さっさと諦めて私と付き合おうよ」
――王雅のコト、何とも思っちゃいないって。
真凛のセリフが、頭の中をリフレインした。
美羽は俺のコト、何とも思っちゃくれてねーのか。
未だに、ダメなのか。
・・・・そうだよな。勢いで告白なんかしちゃ、フラれるに決まってる。
俺はまだ、世界一の男になっちゃいない。
それに、美羽は鉄壁の城なんだ。俺様も含め、そんじょそこらの男が突撃してったって、歯が立つワケねーんだ。
危なかった。真凛が止めてくれなきゃ勢いでプロポーズして、フラれて気まずくなっちまうトコだった。
「真凛、ありがとよ」
くしゃっと、真凛の頭を撫でて耳元で囁いた。「お前のおかげで、無駄にフラれずにすんだ。悪いけど俺に付きまとっても、お前のキモチには応えらんねー。俺は、美羽以外の女は要らねーんだ。だからまたイチから出直して、世界一の男になって、アイツを手に入れるから。美羽を、俺に惚れさせてみせる」
「王雅・・・・」
「そーいうコトだから」
「・・・・カッコイイ!」真凛がデカ目を輝かせて叫んだ。
「は?」
「男の中のオトコって感じ! ますます王雅が好きになっちゃった! いいよ。私、待ってるから!」
ぎゅっと力強く抱きつかれた。
「おいっ、真凛、離れろっ! 美羽、助けてっ」
「仲がよろしい事で。お邪魔虫は消えるわ。アイリちゃん、邪魔したら悪いから、あっちへ行きましょう」
美羽に助けを求めたが、笑顔を湛えたままそんな風に言い放たれ、その上アイリの手を引いて歩き出してしまった。
「おいっ、ちょっ・・・・美羽っ、美羽――っ!!」
美羽の背中は無情だった。一度も俺を振り返ることなく、去って行った。
「私、王雅のコト諦めないからっ。絶対振り向いてもらうもんねっ!」
「離せっ! はなせ――っ!!」
美羽、待ってくれ。
俺はお前しか欲しくねーんだってば――――っ!!
とんだ逆ライバル登場っつーか、変な女に惚れられたお陰で、俺様の恋路はますます前途多難になったようだ。
芋堀して親密度が上がるどころか、逆に、間違いなく下がったようだった。
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