91 / 150
スマイル31
逆ライバル? 6
しおりを挟む「楽しそうね。順調?」
全員の様子を見る為に巡回していた美羽が、手を取り合って喜んでいる俺達に声をかけてくれた。
「あっ、美羽、見てくれよ! アイリのお陰でこんな大きな親子芋が掘れたんだっ! スゲーだろっ?」
興奮してまくしたてる俺に、美羽は笑顔を見せてくれた。
「アイリちゃんのお陰ね。ありがとう。王雅お兄さん、とっても喜んでるわね」
「いいよぉー。おーちゃんとはオトモダチだから、色々アイリが教えてあげるのぉー」
どうやらアイリの中で、俺は冷蔵庫友達と位置づけされているようだ。
あんまり嬉しくない友達内容だが、アイリが友達と言ってくれるのは嬉しい。
しかし、俺達は友達なのか?
良く解らない関係だが、まあ、一緒に居て楽しいから、友達でいいかと思う。
俺は友達が一人もいない寒い男だから、アイリが友達第一号ってワケか。
だったらガキ共は全員友達だな。うん、それ、嬉しいな。
そしたら俺は、友達人数ゼロから一気に沢山に増えるワケだ。
友達か。あったかいな。
何だかとても嬉しくなった。
「王雅、どうしたの? 凄く嬉しそうだけど」
「あ、うん。アイリが色々教えてくれてスゲー楽しかったからさ、嬉しいんだ。それから今日、俺をここに連れてきてくれて、ありがとう。お陰で、スゲー大切な事に気が付いたんだ。予定もわざわざ俺の為に変えてくれたんだろ? 感謝してる」
「・・・・改まってお礼なんて、いいのに」
美羽があんまり俺が真剣になって伝えるもんだから、少し照れながら微笑んだ。
俺は彼女の笑顔を見て、何故か、どうしても、今すぐ自分のものにしたくなった。
アイリが傍にいたがそれよりも、熱く猛る自分のキモチを正直に、今すぐ伝えなきゃいけないと、そんな衝動にかられた。
「ありがとう。俺、お前達がスゲー好きなんだ。どんなコトしてても、どんな時でも俺を包んでくれて、あったかくなれるから」
深呼吸した。美羽が俺を真剣に見つめてくれている。
一度瞳を閉じ、高鳴る鼓動を押さえ、再び目を開いた。
「美羽、お前が――」
「王雅ぁーっ! みーつけたぁ!!」
好きなんだ、俺と結婚してくれねーか、お前とガキ共と一緒に暮らしたい、絶対幸せにするから俺を信じて欲しい、って伝えようと思ったのに。
真凛の大声とタックルで、かき消されちまった。
「王雅。ミューちゃんとナニ喋ってんの? 私というものがありながら」
「はあっ!? ナニ言って――」
ぐいっと乱暴に引き寄せられ、耳元で囁かれた。「私、本人に直接聞いたんだ。ミューちゃんは王雅のコト、何とも思っちゃいないって。告白なんかしてもフラれるだけでムダだから、さっさと諦めて私と付き合おうよ」
――王雅のコト、何とも思っちゃいないって。
真凛のセリフが、頭の中をリフレインした。
美羽は俺のコト、何とも思っちゃくれてねーのか。
未だに、ダメなのか。
・・・・そうだよな。勢いで告白なんかしちゃ、フラれるに決まってる。
俺はまだ、世界一の男になっちゃいない。
それに、美羽は鉄壁の城なんだ。俺様も含め、そんじょそこらの男が突撃してったって、歯が立つワケねーんだ。
危なかった。真凛が止めてくれなきゃ勢いでプロポーズして、フラれて気まずくなっちまうトコだった。
「真凛、ありがとよ」
くしゃっと、真凛の頭を撫でて耳元で囁いた。「お前のおかげで、無駄にフラれずにすんだ。悪いけど俺に付きまとっても、お前のキモチには応えらんねー。俺は、美羽以外の女は要らねーんだ。だからまたイチから出直して、世界一の男になって、アイツを手に入れるから。美羽を、俺に惚れさせてみせる」
「王雅・・・・」
「そーいうコトだから」
「・・・・カッコイイ!」真凛がデカ目を輝かせて叫んだ。
「は?」
「男の中のオトコって感じ! ますます王雅が好きになっちゃった! いいよ。私、待ってるから!」
ぎゅっと力強く抱きつかれた。
「おいっ、真凛、離れろっ! 美羽、助けてっ」
「仲がよろしい事で。お邪魔虫は消えるわ。アイリちゃん、邪魔したら悪いから、あっちへ行きましょう」
美羽に助けを求めたが、笑顔を湛えたままそんな風に言い放たれ、その上アイリの手を引いて歩き出してしまった。
「おいっ、ちょっ・・・・美羽っ、美羽――っ!!」
美羽の背中は無情だった。一度も俺を振り返ることなく、去って行った。
「私、王雅のコト諦めないからっ。絶対振り向いてもらうもんねっ!」
「離せっ! はなせ――っ!!」
美羽、待ってくれ。
俺はお前しか欲しくねーんだってば――――っ!!
とんだ逆ライバル登場っつーか、変な女に惚れられたお陰で、俺様の恋路はますます前途多難になったようだ。
芋堀して親密度が上がるどころか、逆に、間違いなく下がったようだった。
0
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説

それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる