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逆ライバル? 4

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「はいっ、王雅。あーん」


 今、食堂で朝食中だ。
 横には真凛がべったりくっついていて、俺に食事をさせようと必死になっているから、ガキ共にヤジを飛ばされる始末だ。
 離れろっつっても聞きやしねー。
 真凛には、俺の言葉が通じない。聞く気が全く無いんだと思う。我が道を行くのはお前だろって、この俺様でさえ思ってしまう。

 俺以上に人の話を聞かず自分勝手な行動を取る女を、初めてこの目で見た。

「自分で食えるから、離れろって何度も言ってるだろーが。ガキ共も見てんだろ」

「じゃ、二人っきりならイイの?」

「そーいう問題じゃねーよ。お前と二人きりなんか、なりたくねーし」

「あっち行って二人で食べない? ね、そうしよう!」

「行かねー」

「じゃ、お昼ご飯は二人で食べようねー」

 真凛はずっとこんな調子だ。俺の意見は一切無視だ。
 俺は美羽が好きだって何回も言ってんのに、全く聞きやしねー。


「よかったな、真凛。そのまま王雅とくっついちゃえよ」


 美羽の隣に座っているキノコが、笑顔で言ってきた。ちなみにキノコも俺様のコト呼び捨てだ。敬称くらいつけろっつーの。俺はお前より二つも年上だぞ。
 
「ふざけんな! お前が真凛と結婚しろよ。俺はお断りだ!!」

「兄妹で結婚できるワケないだろ。王雅は面白いコト言うな」

 キノコが鼻で笑ってきやがった。

「何を――」

 俺がキノコに啖呵を切ろうとしたその時、



 バンッ



 突然、食堂のテーブルを叩く大きな音が響いた。


「アンタ達、いーかげんにしなさいよっ!! これ以上子供達の前で言い合いするなら、全員追い出すわよっ!!」


 美羽の雷が落ちた。
 流石に美羽には逆らえないのか真凛は肩をすくめて、ごめんなさい、と落ち着いた。

 こんなやり取りがあったもんだから、朝食はメチャクチャ雰囲気悪い中で終わった。
 何時もだったらガキ共とワイワイ楽しく食えんのに。本当にマジで兄妹揃って山に帰ってくんねーかな。
 美羽にヤキモチ焼かせる作戦とか、もうどーでもいい。平穏に過ごしたい。
 

「王雅にぃ、ヒューヒュー、真凛ねぇとラブラブー」


 朝食後、食堂のテーブルの片付けを一人でやっていたら、ライタが冷やかしにわざわざ俺の傍にやって来た。
 っつーか三歳児のクセに、冷やかしとかドコで覚えんだろー。

「ライタ! お前バカか。俺は美羽先生が好きなんだ! 間違えんなよ」

「でも、真凛ねぇ、王雅にぃと結婚するって言ってたぞー」



 あのアマ――っ! ガキに何吹き込んでんだ!!



「ライタ、よく聞け。真凛の言う事はデタラメだ。俺は美羽先生が一番好き――えーっと、お前がウルトライダーQを好きなように、同じくらい美羽先生が好きなんだ。真凛はどっちでもいい存在だ。お前だって宇宙怪人Xは好きだけど、主人公のキュウの方が好きだろ? それと一緒」

 本当は一緒じゃねーけど、ライタみたいなガキに説明できねーから、こういう風に言ってやった。

「美羽先生がキュウ? んん? なんかよくわかんない!」

 ライタは首を傾げている。

「まあ、真凛じゃなくて、美羽先生が一番好きってコトだよ」

「そっか! わかった! 俺キュウのコト、カッコイイからメチャクチャ好き! 一番大好き!!」

「そーだろ? 俺にとっちゃー、美羽先生がそんな感じだ。間違えないでくれ」
 
「そっかぁー! ミュー先生、王雅にぃが来たらメチャクチャ助かるんだって。俺も王雅にぃが来たら嬉しいし、王雅にぃとミュー先生が結婚したらいーと思う!」

 ライタ! お前っ、いいこと言う!!
 お前の誕生日、楽しみにしとけよ。お前の大好きなキュウに会わせてやるからな!!

 何か他にもスゲー特典つけまくって、お前を喜ばせてやるぜ!

 ベタにサインと握手だけじゃなくて、他にも――キュウと一日デートできたりしたら、喜ぶかな!?
 俺は一日美羽とデートできたら、スゲー嬉しいけどな。
 ま、それについては後で考えよう。


「そーだろ! 宇宙怪人Xより、キュウの方が好きだろ? ライタの考え、チョーイカしてるから、ソレ、美羽先生にガツンと言ってきてくれよ。ライタだけが頼りなんだ。頼むぜ!」

 期待を込めた顔を見せて、ポン、とライタの肩を叩いた。

「いーよっ。王雅にぃ、俺がミュー先生に言うぞーぉ!」

 ライタは勢いよく食堂を出て行った。

 ああ、これ名案かもな。
 俺と美羽が結婚したら全員ハッピーになれるって、ガキ共に吹き込み回ろう。
 コイツ等に言わせるんだ。俺様に毎日帰って来て欲しいって、言わせよう。

 それより真凛をどーにかせにゃならんな。
 アイツ、俺の言う事一切無視だからな。あんな女、初めてだ。
 でも、あっちが無視するなら、コッチも無視するまでだ。

 俺は、俺のやりたいよーにやるんだ。
 我儘王様の気質は、今に始まった事じゃねーからな。
 真凛には負けねーぞ。
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