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スマイル31
逆ライバル? 4
しおりを挟む「はいっ、王雅。あーん」
今、食堂で朝食中だ。
横には真凛がべったりくっついていて、俺に食事をさせようと必死になっているから、ガキ共にヤジを飛ばされる始末だ。
離れろっつっても聞きやしねー。
真凛には、俺の言葉が通じない。聞く気が全く無いんだと思う。我が道を行くのはお前だろって、この俺様でさえ思ってしまう。
俺以上に人の話を聞かず自分勝手な行動を取る女を、初めてこの目で見た。
「自分で食えるから、離れろって何度も言ってるだろーが。ガキ共も見てんだろ」
「じゃ、二人っきりならイイの?」
「そーいう問題じゃねーよ。お前と二人きりなんか、なりたくねーし」
「あっち行って二人で食べない? ね、そうしよう!」
「行かねー」
「じゃ、お昼ご飯は二人で食べようねー」
真凛はずっとこんな調子だ。俺の意見は一切無視だ。
俺は美羽が好きだって何回も言ってんのに、全く聞きやしねー。
「よかったな、真凛。そのまま王雅とくっついちゃえよ」
美羽の隣に座っているキノコが、笑顔で言ってきた。ちなみにキノコも俺様のコト呼び捨てだ。敬称くらいつけろっつーの。俺はお前より二つも年上だぞ。
「ふざけんな! お前が真凛と結婚しろよ。俺はお断りだ!!」
「兄妹で結婚できるワケないだろ。王雅は面白いコト言うな」
キノコが鼻で笑ってきやがった。
「何を――」
俺がキノコに啖呵を切ろうとしたその時、
バンッ
突然、食堂のテーブルを叩く大きな音が響いた。
「アンタ達、いーかげんにしなさいよっ!! これ以上子供達の前で言い合いするなら、全員追い出すわよっ!!」
美羽の雷が落ちた。
流石に美羽には逆らえないのか真凛は肩をすくめて、ごめんなさい、と落ち着いた。
こんなやり取りがあったもんだから、朝食はメチャクチャ雰囲気悪い中で終わった。
何時もだったらガキ共とワイワイ楽しく食えんのに。本当にマジで兄妹揃って山に帰ってくんねーかな。
美羽にヤキモチ焼かせる作戦とか、もうどーでもいい。平穏に過ごしたい。
「王雅にぃ、ヒューヒュー、真凛ねぇとラブラブー」
朝食後、食堂のテーブルの片付けを一人でやっていたら、ライタが冷やかしにわざわざ俺の傍にやって来た。
っつーか三歳児のクセに、冷やかしとかドコで覚えんだろー。
「ライタ! お前バカか。俺は美羽先生が好きなんだ! 間違えんなよ」
「でも、真凛ねぇ、王雅にぃと結婚するって言ってたぞー」
あのアマ――っ! ガキに何吹き込んでんだ!!
「ライタ、よく聞け。真凛の言う事はデタラメだ。俺は美羽先生が一番好き――えーっと、お前がウルトライダーQを好きなように、同じくらい美羽先生が好きなんだ。真凛はどっちでもいい存在だ。お前だって宇宙怪人Xは好きだけど、主人公のキュウの方が好きだろ? それと一緒」
本当は一緒じゃねーけど、ライタみたいなガキに説明できねーから、こういう風に言ってやった。
「美羽先生がキュウ? んん? なんかよくわかんない!」
ライタは首を傾げている。
「まあ、真凛じゃなくて、美羽先生が一番好きってコトだよ」
「そっか! わかった! 俺キュウのコト、カッコイイからメチャクチャ好き! 一番大好き!!」
「そーだろ? 俺にとっちゃー、美羽先生がそんな感じだ。間違えないでくれ」
「そっかぁー! ミュー先生、王雅にぃが来たらメチャクチャ助かるんだって。俺も王雅にぃが来たら嬉しいし、王雅にぃとミュー先生が結婚したらいーと思う!」
ライタ! お前っ、いいこと言う!!
お前の誕生日、楽しみにしとけよ。お前の大好きなキュウに会わせてやるからな!!
何か他にもスゲー特典つけまくって、お前を喜ばせてやるぜ!
ベタにサインと握手だけじゃなくて、他にも――キュウと一日デートできたりしたら、喜ぶかな!?
俺は一日美羽とデートできたら、スゲー嬉しいけどな。
ま、それについては後で考えよう。
「そーだろ! 宇宙怪人Xより、キュウの方が好きだろ? ライタの考え、チョーイカしてるから、ソレ、美羽先生にガツンと言ってきてくれよ。ライタだけが頼りなんだ。頼むぜ!」
期待を込めた顔を見せて、ポン、とライタの肩を叩いた。
「いーよっ。王雅にぃ、俺がミュー先生に言うぞーぉ!」
ライタは勢いよく食堂を出て行った。
ああ、これ名案かもな。
俺と美羽が結婚したら全員ハッピーになれるって、ガキ共に吹き込み回ろう。
コイツ等に言わせるんだ。俺様に毎日帰って来て欲しいって、言わせよう。
それより真凛をどーにかせにゃならんな。
アイツ、俺の言う事一切無視だからな。あんな女、初めてだ。
でも、あっちが無視するなら、コッチも無視するまでだ。
俺は、俺のやりたいよーにやるんだ。
我儘王様の気質は、今に始まった事じゃねーからな。
真凛には負けねーぞ。
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