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スマイル31
逆ライバル? 1
しおりを挟むあれから暫く月日が経った。季節は秋になっていた。
キノコが初めて施設に訪れ、美羽とやり取りをしてから、平日も施設に帰ろうと努力はしたが、やはり平日は仕事の都合上、施設帰りは不可能だった。
土日をフルで空ける為に平日は仕事を詰め込む上、キングフェザーだけじゃなく他にもやることが多すぎて、午前様の帰宅になることが殆どだったからな。こんな時間に施設に帰ったりしたら、逆に迷惑になるから行くことは出来なかった。
土日の泊りの時しか、帰るのは無理だった。
帰ると言ったのに実現できず申し訳ない旨は、美羽に伝えてある。
まあ、プロジェクトが終わるまでは仕方ないだろう。
目途が立ったら前から話を進めていた渡米も控えてるんだ。行きたくねーけど、プロジェクトを成功させるには、現地に行って担当者と直にやり取りが必要なんだ。俺以外の人間が交渉できないように策を練った結果だ。仕方ない。
でも、美羽やガキ共と、少しでも離れたくねーんだ。日本国内ならまだしも、アメリカなんて、今この状況で行きたくない。キノコが山に帰って安全だと思うまでは、海外出張も止めたい所だ。
こーなりゃ、渡米前に美羽とヤるしかねーだろ。
目途が立つまでに、同意を何としても取るしかねえ。恋人に昇格し、男女関係を結んでから行くことにしよう。
なあ。頼みがあるんだ。
読者のお前等がさ、美羽に言ってくんねーか?
絶対大丈夫だから頑なに操を守らず、さっさと王雅のモンになって結婚しろって。
お前等が言ったら、美羽も信用すんじゃね?
そーなりゃ、無事にハッピーエンドでこの話も終わるっつーワケだ。
俺もハッピー、お前等もハッピーだろ?
・・・・って、バカなコト言ってる場合じゃねー。
キノコ兄妹は、俺のいない平日にチョコチョコ施設出入りしているらしい。
電気屋の仕事は週末が忙しいらしく、俺がいる土日は来ないから、あれからキノコと顔は合わせていない。
合わせてないから、余計不安になる。美羽がちょっかいかけられてねーかって、スゲー心配になるんだ。
美羽に聞いても大丈夫の一点張りだからな。本当に大丈夫なのか、心配で仕方ない。
施設内に監視カメラ置いて、パソコンで動向探りてーぐらいだ。
まあ、そんなコトしちまったらプラバシーの侵害にもなって、バレたら間違いなく嫌われると思うし、キノコが美羽に手を出すとこが見えようもんなら・・・・俺、間違いなく殺っちゃうと思う。キノコを。
だから、それはマズいんだ。俺は毎日神に祈ってるからな。間違いが絶対にないようにって。
こんだけ真剣に祈ってんだ。だから、大丈夫だと信じたい。
相変わらず金曜日の夜は眠れない。土曜日と日曜日が、施設に行けるから。
俺はこれだけが楽しみで、今を生きていると思う。
充実して仕事も頑張れるし、どんな嫌な接待でも、案件でも、何でもこなせるようになった。
今までは面倒で人任せだったことも、率先してやるように努力している。
すると、社の人間が俺を見る雰囲気も変わってきた。俺を見下していた奴等も、俺を認め出したんだ。プロジェクトのプレゼン成功から、徐々に変わりつつある。
やっぱり、頑張れば結果がついてくる。美羽の事だって――アイツは俺を信用して、施設に出入りさせてくれてんだ。もっと頑張れば、そのうち恋人へ昇格は、約束されたも同然だ。
何としてもキノコより先に、美羽のハートを掴む!
っつーワケで、充実のビジネスライフを送っている俺。キングフェザーも順調、プロジェクトも順調。言う事なし。後は美羽が何とかなりゃー、最高だ。
さあ、今日も施設へ帰るぞー!
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