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スマイル30
事情聴取・2
しおりを挟む「二人は、マサキ施設に五年くらい居たと思う。今みたいに小さな子ばかりを沢山預かるんじゃなくて、当時は小学生くらいまでの子供も、ここでは預かっていたから、二人は割と長く居たのよ。でも、預かる人数が増えて来ちゃったから、マサキ施設では小学生以下限定で預かる事に特化したの。丁度、真凛ちゃんや真秀君の引き取り先が見つかって、彼等がマサキ施設を出て行ってから、今のスタイルになったのよ。マサキ施設は小さいし、あまり大きな子供を沢山預かれる、金銭的な余裕も無かったから」
ここは、昔から貧乏なんだな。
でも、お前を見てると、その理由が解る。
マサキ施設は、儲けようと思って経営しているんじゃないって事。
困っているガキ共を、その優しい心で助けてやりたいって、ただ、それだけだって事。
貧乏なヤツからは、殆ど金も取ってねーんだろーなって事――
美羽みたいな奇特な考えを持って施設経営をしている人間は、きっと他にもいるだろう。
だから俺が儲けて、その金をそういう施設や団体に寄付するから、有効に使って欲しいって思う。
勿論、俺自身もそーいった施設、作るつもりだ。マサキ施設みたいな考えの施設が、ドコにあるかわかんねーだろ。基盤は作っておきたいんだ。日本だけじゃなくて、世界にも作りたい。
俺一人じゃちっぽけだと思うが、そこらの個人や企業より遥やに力があるんだ。
俺が立ち上がり企画することで、多くの力のある人間や企業と繋がり、俺を媒体にして、困っているガキ共を一人でも多く助けたいと思ってるからな。
「まあ、キノコ――あ、いや、真秀達のいきさつは解った。それで、何時、どのように、キノ・・・・じゃなくて、アイツに結婚申し込まれたんだよ」
どうしても、真秀をキノコと言ってしまう俺。毎回訂正を入れているが、そのうち不信に思われるだろうな。
とにかく、名前を呼びたくねー。
もう、キノコっつー名前に改名すりゃーいいのに。
「それは・・・・施設を出ていく時に・・・・」
「何て?
「あの・・・・だから・・・・美羽ねーちゃんが好きだから、結婚しよう、迎えに行くから待ってて、約束だよ、って言われただけよ。でも、それは真秀君が七歳か八歳くらいの時の話だし、私だって・・・・その後・・・・ずっと恭ちゃんが好きだったから、真秀君の事は忘れてたというか・・・・彼に会うのも十年以上ぶりだし・・・・」
ごにょごにょと、つぶやくように美羽が言った。
「・・・・じゃ、美羽。キノコ、あ、いやっ、真秀の事は、何とも思っちゃいねーってコト?」
「うん。まあ・・・・真秀君には、申し訳ないんだけど・・・・」
「いやっ、申し訳なくねーよっ! 当たり前だろ、そんなのっ」俺は満面の笑みを湛えて、言ってやった。「俺だって忘れちまうよ。そんなガキの時の約束なんて! しかも、十年以上ほったらかしで、誰が待つっつーんだよ。なあ?」
はぁ――っ! 良かったぁ――――っ!!
ざまあみろ、キノコ。
良かった。めちゃくちゃほっとした。
美羽はお前の事、眼中に無いんだとよ。やったぜ!
かなり焦ったけど、キノコが俺様に敵うワケがねーんだ。
ああ、今日は冷蔵庫屋敷で寝泊まりだけど、気分は最高だ。枕高くして、安眠出来そうだ。
今、鼻歌でも歌えるくらい、いい気分だ。
「あ、でも・・・・これから真凛ちゃんと真秀君、ちょくちょく施設に来てくれることになったの。マサキ施設に恩返しがしたいから、子供達の面倒、見に来てくれるって。今は王雅が手伝ってくれてる事も言ったんだけど、それだけじゃ大変だろうから、手が空いてる時は出来るだけ来るって。王雅も、何時までも土日の全部を施設の手伝いで潰しちゃうの、大変だろうからって」
「大変じゃねーよっ! 俺の楽しみを奪う気か、お前」
「私が言ったんじゃないわよ。真秀君が・・・・」
あのキノコ――っ!! 余計な事言いやがって!
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