コロッケスマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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事情聴取・2

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「二人は、マサキ施設に五年くらい居たと思う。今みたいに小さな子ばかりを沢山預かるんじゃなくて、当時は小学生くらいまでの子供も、ここでは預かっていたから、二人は割と長く居たのよ。でも、預かる人数が増えて来ちゃったから、マサキ施設では小学生以下限定で預かる事に特化したの。丁度、真凛ちゃんや真秀君の引き取り先が見つかって、彼等がマサキ施設を出て行ってから、今のスタイルになったのよ。マサキ施設は小さいし、あまり大きな子供を沢山預かれる、金銭的な余裕も無かったから」


 ここは、昔から貧乏なんだな。
 でも、お前を見てると、その理由が解る。

 マサキ施設は、儲けようと思って経営しているんじゃないって事。
 困っているガキ共を、その優しい心で助けてやりたいって、ただ、それだけだって事。

 貧乏なヤツからは、殆ど金も取ってねーんだろーなって事――


 美羽みたいな奇特な考えを持って施設経営をしている人間は、きっと他にもいるだろう。
 だから俺が儲けて、その金をそういう施設や団体に寄付するから、有効に使って欲しいって思う。

 勿論、俺自身もそーいった施設、作るつもりだ。マサキ施設みたいな考えの施設が、ドコにあるかわかんねーだろ。基盤は作っておきたいんだ。日本だけじゃなくて、世界にも作りたい。

 
 俺一人じゃちっぽけだと思うが、そこらの個人や企業より遥やに力があるんだ。

 俺が立ち上がり企画することで、多くの力のある人間や企業と繋がり、俺を媒体にして、困っているガキ共を一人でも多く助けたいと思ってるからな。


「まあ、キノコ――あ、いや、真秀達のいきさつは解った。それで、何時、どのように、キノ・・・・じゃなくて、アイツに結婚申し込まれたんだよ」

 どうしても、真秀をキノコと言ってしまう俺。毎回訂正を入れているが、そのうち不信に思われるだろうな。
 とにかく、名前を呼びたくねー。
 もう、キノコっつー名前に改名すりゃーいいのに。

「それは・・・・施設を出ていく時に・・・・」

「何て?

「あの・・・・だから・・・・美羽ねーちゃんが好きだから、結婚しよう、迎えに行くから待ってて、約束だよ、って言われただけよ。でも、それは真秀君が七歳か八歳くらいの時の話だし、私だって・・・・その後・・・・ずっと恭ちゃんが好きだったから、真秀君の事は忘れてたというか・・・・彼に会うのも十年以上ぶりだし・・・・」


 ごにょごにょと、つぶやくように美羽が言った。


 
「・・・・じゃ、美羽。キノコ、あ、いやっ、真秀の事は、何とも思っちゃいねーってコト?」

「うん。まあ・・・・真秀君には、申し訳ないんだけど・・・・」

「いやっ、申し訳なくねーよっ! 当たり前だろ、そんなのっ」俺は満面の笑みを湛えて、言ってやった。「俺だって忘れちまうよ。そんなガキの時の約束なんて! しかも、十年以上ほったらかしで、誰が待つっつーんだよ。なあ?」



 はぁ――っ! 良かったぁ――――っ!!


 ざまあみろ、キノコ。
 良かった。めちゃくちゃほっとした。
 美羽はお前の事、眼中に無いんだとよ。やったぜ!
 かなり焦ったけど、キノコが俺様に敵うワケがねーんだ。

 ああ、今日は冷蔵庫屋敷で寝泊まりだけど、気分は最高だ。枕高くして、安眠出来そうだ。

 今、鼻歌でも歌えるくらい、いい気分だ。

「あ、でも・・・・これから真凛ちゃんと真秀君、ちょくちょく施設に来てくれることになったの。マサキ施設に恩返しがしたいから、子供達の面倒、見に来てくれるって。今は王雅が手伝ってくれてる事も言ったんだけど、それだけじゃ大変だろうから、手が空いてる時は出来るだけ来るって。王雅も、何時までも土日の全部を施設の手伝いで潰しちゃうの、大変だろうからって」

「大変じゃねーよっ! 俺の楽しみを奪う気か、お前」

「私が言ったんじゃないわよ。真秀君が・・・・」



 あのキノコ――っ!! 余計な事言いやがって!



 
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