81 / 150
スマイル30
事情聴取・2
しおりを挟む「二人は、マサキ施設に五年くらい居たと思う。今みたいに小さな子ばかりを沢山預かるんじゃなくて、当時は小学生くらいまでの子供も、ここでは預かっていたから、二人は割と長く居たのよ。でも、預かる人数が増えて来ちゃったから、マサキ施設では小学生以下限定で預かる事に特化したの。丁度、真凛ちゃんや真秀君の引き取り先が見つかって、彼等がマサキ施設を出て行ってから、今のスタイルになったのよ。マサキ施設は小さいし、あまり大きな子供を沢山預かれる、金銭的な余裕も無かったから」
ここは、昔から貧乏なんだな。
でも、お前を見てると、その理由が解る。
マサキ施設は、儲けようと思って経営しているんじゃないって事。
困っているガキ共を、その優しい心で助けてやりたいって、ただ、それだけだって事。
貧乏なヤツからは、殆ど金も取ってねーんだろーなって事――
美羽みたいな奇特な考えを持って施設経営をしている人間は、きっと他にもいるだろう。
だから俺が儲けて、その金をそういう施設や団体に寄付するから、有効に使って欲しいって思う。
勿論、俺自身もそーいった施設、作るつもりだ。マサキ施設みたいな考えの施設が、ドコにあるかわかんねーだろ。基盤は作っておきたいんだ。日本だけじゃなくて、世界にも作りたい。
俺一人じゃちっぽけだと思うが、そこらの個人や企業より遥やに力があるんだ。
俺が立ち上がり企画することで、多くの力のある人間や企業と繋がり、俺を媒体にして、困っているガキ共を一人でも多く助けたいと思ってるからな。
「まあ、キノコ――あ、いや、真秀達のいきさつは解った。それで、何時、どのように、キノ・・・・じゃなくて、アイツに結婚申し込まれたんだよ」
どうしても、真秀をキノコと言ってしまう俺。毎回訂正を入れているが、そのうち不信に思われるだろうな。
とにかく、名前を呼びたくねー。
もう、キノコっつー名前に改名すりゃーいいのに。
「それは・・・・施設を出ていく時に・・・・」
「何て?
「あの・・・・だから・・・・美羽ねーちゃんが好きだから、結婚しよう、迎えに行くから待ってて、約束だよ、って言われただけよ。でも、それは真秀君が七歳か八歳くらいの時の話だし、私だって・・・・その後・・・・ずっと恭ちゃんが好きだったから、真秀君の事は忘れてたというか・・・・彼に会うのも十年以上ぶりだし・・・・」
ごにょごにょと、つぶやくように美羽が言った。
「・・・・じゃ、美羽。キノコ、あ、いやっ、真秀の事は、何とも思っちゃいねーってコト?」
「うん。まあ・・・・真秀君には、申し訳ないんだけど・・・・」
「いやっ、申し訳なくねーよっ! 当たり前だろ、そんなのっ」俺は満面の笑みを湛えて、言ってやった。「俺だって忘れちまうよ。そんなガキの時の約束なんて! しかも、十年以上ほったらかしで、誰が待つっつーんだよ。なあ?」
はぁ――っ! 良かったぁ――――っ!!
ざまあみろ、キノコ。
良かった。めちゃくちゃほっとした。
美羽はお前の事、眼中に無いんだとよ。やったぜ!
かなり焦ったけど、キノコが俺様に敵うワケがねーんだ。
ああ、今日は冷蔵庫屋敷で寝泊まりだけど、気分は最高だ。枕高くして、安眠出来そうだ。
今、鼻歌でも歌えるくらい、いい気分だ。
「あ、でも・・・・これから真凛ちゃんと真秀君、ちょくちょく施設に来てくれることになったの。マサキ施設に恩返しがしたいから、子供達の面倒、見に来てくれるって。今は王雅が手伝ってくれてる事も言ったんだけど、それだけじゃ大変だろうから、手が空いてる時は出来るだけ来るって。王雅も、何時までも土日の全部を施設の手伝いで潰しちゃうの、大変だろうからって」
「大変じゃねーよっ! 俺の楽しみを奪う気か、お前」
「私が言ったんじゃないわよ。真秀君が・・・・」
あのキノコ――っ!! 余計な事言いやがって!
0
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?


包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる