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スマイル28
ビジネスビジョン・6
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俺の目の届く範囲でも心配だし、毎日会いたいのに、目の届かない範囲に行く上、遠距離なんて、そんなの、死ぬも同然だ。
遠距離恋愛しているカップルは、スゲーなって思う。俺、絶対無理。
どーしてもっつーなら、チャーターでも何でも利用して、出来る限り時間作って会いに行くけど、やっぱりそれでも無理。遠く離れているという事実そのものが、無理。
美羽は施設が大事だから、俺がもしそーなったら、一緒に赴任先へ来ることは不可能だ。だから、美羽は転勤に反対はせず、行ってもいいって言うだろーけど、離れるのが無理だ。
俺の方がダメだ。俺が死んでしまう。
ガキ共にも会えなくなるんだ。単身赴任なんて、地獄でしかない。そんなものは、この世から消し去るべきだ。
だから、俺の赴任は自動的に無しだ。俺が社員で、もしそんな事を命じる会社なら、こっちから辞めてやるから。俺くらい仕事ができる男なら、どんな会社でも使ってもらえるだろーから、その会社に留まる理由は何一つ無い。
転職しても構わねーんだ。雇って貰えないなら、自分で会社興すから、これも問題ない。
で、そんな男を他所の会社にやる会社は、ダメな会社という事になる。
有能で仕事ができる人間を、転勤が出来ないという理由で、やすやすと手放すワケだからな。俺は絶対にそんな事はしないぞ。
だから赴任は、恋人も含めて、家族も一緒に行ってくれるヤツじゃなきゃイカン。
それでも、会社が大きくなるには、無理を承知で頼むこともあるだろう。それに同意してくれた家族に対しては、感謝の為にも手当や赴任先の生活を充実させる努力を、会社がするべきだ。
俺は、そーいった努力や報酬は惜しまねえつもりだ。キングフェザーはそういう会社にするぞ。
俺自身が、大切にしている者たちと離れる事がこんなに辛いって、身を持って味わってるからな。これを今後、俺の会社で働いてくれるであろう、大事な社員やその家族にさせるワケにはいかねーだろ。
櫻井グループは出張や転勤は家族の都合等、お構いなしに命じるからな。あれは今すぐ止めさせるべきだ。今度提案しよう――いや、それはまだ俺のポジションでするべきではないな。
社長の椅子をくれるという約束を取り付けたら、俺の方針でやっていくことにしよう。
絶対、立派な会社になる筈だ。俺は確信している。
今後は、女性も働きやすいように、託児所や保育が充実した施設も併設するか、中に作ってしまおうと思っている。
あ、併設よりもフロアの中にある方がいいな。ワンフロア全体を託児所施設に充て、スペースも広く取ろう。
休憩時間や仕事の合間でも、自分の子供に会えるようにするんだ。その方がより安心して、働けるもんな。子供だって淋しくない。仕事の邪魔をしなければ、好きな時に親に会いに行けるようにすればいーんだ。そうすれば、お互い安心だ。
俺も会社で自分の子供に会えたら、メチャクチャ仕事頑張れそーだ! スゲー嬉しいだろうな。
うん、このアイディアはいい。よし、そうしよう。
スゲーぞ。施設に居たら、アイディアがどんどん沸いてくる。早く実現できる環境を整えよう。
冷蔵庫屋敷に帰ったら、早速取り掛かろう。キングフェザーの事を考えると、楽しくなる。辛い屋敷への出張も気がまぎれるから、当面はこれで乗り切ろう。
でも、やっぱ、『いってらっしゃい』と『お帰りなさい』が無いのは、ヒジョーに辛い。
あっ、そうだ! 名案を思い付いたぞ!
昨日美羽にプレゼントしたカメラで動画も撮れるって教えてやった時、何で気が付かなかったんだ。
俺は、自分のスマートフォンで動画を撮影出来る事を、やったことが無かったから考えつかなかったけど、それで『いってらっしゃい』と『お帰りなさい』を撮影すればいーんだ!
ああ、俺って天才。
これでまた週末まで頑張れる。
名案を思い付き、俺はハイテンションで全員を玄関に集合させた。
俺の為に動画撮影に協力して欲しい、と懇願した。
「今から動画撮るから、俺が仕事に行くつもりで、お前等、行ってらっしゃい、って言ってくれ! あと、お帰りも! さあさあ、ホラ、並んで並んで! あっ、全員入るように、ちょっと詰めてくれよ。このままじゃ画面からはみでちまうっ」
「そんなの、ここに帰ってきたら何時でも言ってあげるのに」
俺のハイテンションぶりに、美羽が苦笑した。
「お前は解ってねーな! 平日は帰れねーだろが。だから撮影しておいて、家に帰ったら毎日見るんだよ。初めて撮影すんだ。バッチリ決めてくれよっ! はい、せーのっ」
俺が掛け声を上げ、動画の撮影ボタンをタップした。
「王雅、行ってらっしゃい! お仕事頑張ってね!」
「おにいさーん、行ってらっしゃーい!」
「しゃーい」
「おー」
「行ってらっしゃーい!」
「頑張ってねー!」
「ばいばーい! 早く帰って来てねー!」
ガキ共と美羽が、俺の『せーの』に合わせて一斉に声を出したから、なんか色々ごちゃごちゃだけど、スゲー嬉しい。初めての、ガキ共の動画が撮れた。その流れで、お帰りも言ってもらった。
ああ、最高。これで週末まで、頑張れる。
俺、この動画、死ぬまで一生大事にする。
今度俺もカメラとビデオ買って、それにも撮ろう。美羽にもいっぱい、渡したカメラで写真や動画、撮っておいてもらおう。
全員に手厚く礼を言って喜んでいると、キンコーンと来客を告げるチャイムが鳴った。
一体、誰が来たんだ!?
遠距離恋愛しているカップルは、スゲーなって思う。俺、絶対無理。
どーしてもっつーなら、チャーターでも何でも利用して、出来る限り時間作って会いに行くけど、やっぱりそれでも無理。遠く離れているという事実そのものが、無理。
美羽は施設が大事だから、俺がもしそーなったら、一緒に赴任先へ来ることは不可能だ。だから、美羽は転勤に反対はせず、行ってもいいって言うだろーけど、離れるのが無理だ。
俺の方がダメだ。俺が死んでしまう。
ガキ共にも会えなくなるんだ。単身赴任なんて、地獄でしかない。そんなものは、この世から消し去るべきだ。
だから、俺の赴任は自動的に無しだ。俺が社員で、もしそんな事を命じる会社なら、こっちから辞めてやるから。俺くらい仕事ができる男なら、どんな会社でも使ってもらえるだろーから、その会社に留まる理由は何一つ無い。
転職しても構わねーんだ。雇って貰えないなら、自分で会社興すから、これも問題ない。
で、そんな男を他所の会社にやる会社は、ダメな会社という事になる。
有能で仕事ができる人間を、転勤が出来ないという理由で、やすやすと手放すワケだからな。俺は絶対にそんな事はしないぞ。
だから赴任は、恋人も含めて、家族も一緒に行ってくれるヤツじゃなきゃイカン。
それでも、会社が大きくなるには、無理を承知で頼むこともあるだろう。それに同意してくれた家族に対しては、感謝の為にも手当や赴任先の生活を充実させる努力を、会社がするべきだ。
俺は、そーいった努力や報酬は惜しまねえつもりだ。キングフェザーはそういう会社にするぞ。
俺自身が、大切にしている者たちと離れる事がこんなに辛いって、身を持って味わってるからな。これを今後、俺の会社で働いてくれるであろう、大事な社員やその家族にさせるワケにはいかねーだろ。
櫻井グループは出張や転勤は家族の都合等、お構いなしに命じるからな。あれは今すぐ止めさせるべきだ。今度提案しよう――いや、それはまだ俺のポジションでするべきではないな。
社長の椅子をくれるという約束を取り付けたら、俺の方針でやっていくことにしよう。
絶対、立派な会社になる筈だ。俺は確信している。
今後は、女性も働きやすいように、託児所や保育が充実した施設も併設するか、中に作ってしまおうと思っている。
あ、併設よりもフロアの中にある方がいいな。ワンフロア全体を託児所施設に充て、スペースも広く取ろう。
休憩時間や仕事の合間でも、自分の子供に会えるようにするんだ。その方がより安心して、働けるもんな。子供だって淋しくない。仕事の邪魔をしなければ、好きな時に親に会いに行けるようにすればいーんだ。そうすれば、お互い安心だ。
俺も会社で自分の子供に会えたら、メチャクチャ仕事頑張れそーだ! スゲー嬉しいだろうな。
うん、このアイディアはいい。よし、そうしよう。
スゲーぞ。施設に居たら、アイディアがどんどん沸いてくる。早く実現できる環境を整えよう。
冷蔵庫屋敷に帰ったら、早速取り掛かろう。キングフェザーの事を考えると、楽しくなる。辛い屋敷への出張も気がまぎれるから、当面はこれで乗り切ろう。
でも、やっぱ、『いってらっしゃい』と『お帰りなさい』が無いのは、ヒジョーに辛い。
あっ、そうだ! 名案を思い付いたぞ!
昨日美羽にプレゼントしたカメラで動画も撮れるって教えてやった時、何で気が付かなかったんだ。
俺は、自分のスマートフォンで動画を撮影出来る事を、やったことが無かったから考えつかなかったけど、それで『いってらっしゃい』と『お帰りなさい』を撮影すればいーんだ!
ああ、俺って天才。
これでまた週末まで頑張れる。
名案を思い付き、俺はハイテンションで全員を玄関に集合させた。
俺の為に動画撮影に協力して欲しい、と懇願した。
「今から動画撮るから、俺が仕事に行くつもりで、お前等、行ってらっしゃい、って言ってくれ! あと、お帰りも! さあさあ、ホラ、並んで並んで! あっ、全員入るように、ちょっと詰めてくれよ。このままじゃ画面からはみでちまうっ」
「そんなの、ここに帰ってきたら何時でも言ってあげるのに」
俺のハイテンションぶりに、美羽が苦笑した。
「お前は解ってねーな! 平日は帰れねーだろが。だから撮影しておいて、家に帰ったら毎日見るんだよ。初めて撮影すんだ。バッチリ決めてくれよっ! はい、せーのっ」
俺が掛け声を上げ、動画の撮影ボタンをタップした。
「王雅、行ってらっしゃい! お仕事頑張ってね!」
「おにいさーん、行ってらっしゃーい!」
「しゃーい」
「おー」
「行ってらっしゃーい!」
「頑張ってねー!」
「ばいばーい! 早く帰って来てねー!」
ガキ共と美羽が、俺の『せーの』に合わせて一斉に声を出したから、なんか色々ごちゃごちゃだけど、スゲー嬉しい。初めての、ガキ共の動画が撮れた。その流れで、お帰りも言ってもらった。
ああ、最高。これで週末まで、頑張れる。
俺、この動画、死ぬまで一生大事にする。
今度俺もカメラとビデオ買って、それにも撮ろう。美羽にもいっぱい、渡したカメラで写真や動画、撮っておいてもらおう。
全員に手厚く礼を言って喜んでいると、キンコーンと来客を告げるチャイムが鳴った。
一体、誰が来たんだ!?
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