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スマイル28
ビジネスビジョン・3
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家とは、やはり違うんだな。親がいないというのは、ガキ共にとって相当な負担がかかっているに違いない。でも、それを感じさせないこの施設は、本当に素晴らしいと思う。
それは、やっぱり美羽が凄いんだ。信頼関係がハンパねえもんな。
美羽は、本当の親以上にガキ共全員に惜しみない愛情を注ぎ、それを受け取ったガキ共は、本当の親のように美羽を信頼し、困らせないように、出来る限り自分の事は自分でやるんだ。
しかも、年上のガキは年下のガキの面倒を見てるんだ。まあ、まだ小さいからつまんねーケンカは絶えねーけど。俺もよく仲裁に入るからな。
「おはよう! 全員起きたか?」
「おはようございまーす!!」
遊戯室に俺が入って行って声をかけたから、ガキ共が大声で挨拶を返してきた。
「良い返事だ。よしっ、準備も結構出来てるな。偉いぞ! さ、まだのヤツは俺様が手伝ってやる」
着替えを手伝っていると、俺の傍で着替えを終わらせたライタが自分の布団を丸めだした。
ライタは三歳のイガグリ頭をしたヤンチャ坊主だ。ヒーローごっこが好きで、よくサトルやリョウと一緒になって遊んでいる。
でも、まだ小さいから、布団を畳むまではムリなんだ。上手くできずに一緒に布団と転がってしまい、挙句に遊びだしたのを見て、思わず笑ってしまった。
朝から、何て幸せなんだろう。
週末のビジネスマン――朝からエロく頑張るのも捨てがたいけど、こーいうのもいいな。
あったかくて、幸せになる。
お前等と一緒に居たら、俺は何時でも幸せになれんだな。
「ホラ、せっかく出来上がった朝飯が冷めるから、着替えたヤツから食堂行くぞ。キッチン寄って、トレイ受け取っていつも通り食堂へ行ってくれよ。布団は後で俺が片づけてやるから、もう早く行け」
食堂へ行くように促して、他のガキ共の様子もチェックして、まだあまり上手く歩くことができないキューマの手を引いて、ゆっくりと遊戯室を後にした。俺達が最後だ。
キューマは、チイと同じ二歳のガキだ。歩いたり、言葉が他のガキよりも発達が少し遅い。
でも、愛嬌は人一倍あって、カワイイ男の子なんだ。短い髪はリョウより少しゆるくて、アイリよりもくりくりの天然パーマがかかっていて、愛くるしい瞳がチャームポイントだ。
上手く喋れなくて、俺の事は『おー』と呼んでくれる。もうお前が笑顔で俺を呼んでくれるなら、あーでもおーでも、なんとでも呼んでくれっていう感じだ。
キューマは虐待が理由で、この施設にやって来た。
こんなカワイイキューマを、発達が遅いからという理由で虐待するとか、マジで考えられねーんだけどな。
キューマは、検診の時に役所の人間が不審に思って調査したところ、虐待が発覚したとか。太ももの裏側にある、たばこの押し付けられた痕が決定打になったそうだ。
俺も初めてフロに入れてやった時、驚いた。幸い早期発見だったから虐待の傷跡は浅くすんだ。職員が気が付かなかったら、間違いなく虐待がエスカレートして、更に一生残るような酷い怪我をしていただろう。
キューマは急遽保護されたため、受け入れ先がなく、美羽の所に連絡が入り、マサキ施設にやってきたそうだ。
キューマは慣れている人間以外は怖がって、最初は俺も近づくだけで泣かれたけど、次第に打ち解けてくれて、抱くまでできるようになった。
初めてキューマを抱き上げる事が出来た時は、嬉しかったな。それはつい、この前の事だ。
こんなカワイイキューマを、変な女に婿にはやれねーぞって考えちまうくらいだ。
ここに居るガキ共は、嫁にも婿にもやる気はねえぞ。
全部、俺のだ。
だから最近、虐待のニュースなんかを見聞きすると、酷く胸が痛むようになった。
この世で辛く苦しい思いをしているガキ共は、まだまだ大勢いるんだ。俺が一人でも多く救ってやりたいって、今では強く思うようになった。
それは、やっぱり美羽が凄いんだ。信頼関係がハンパねえもんな。
美羽は、本当の親以上にガキ共全員に惜しみない愛情を注ぎ、それを受け取ったガキ共は、本当の親のように美羽を信頼し、困らせないように、出来る限り自分の事は自分でやるんだ。
しかも、年上のガキは年下のガキの面倒を見てるんだ。まあ、まだ小さいからつまんねーケンカは絶えねーけど。俺もよく仲裁に入るからな。
「おはよう! 全員起きたか?」
「おはようございまーす!!」
遊戯室に俺が入って行って声をかけたから、ガキ共が大声で挨拶を返してきた。
「良い返事だ。よしっ、準備も結構出来てるな。偉いぞ! さ、まだのヤツは俺様が手伝ってやる」
着替えを手伝っていると、俺の傍で着替えを終わらせたライタが自分の布団を丸めだした。
ライタは三歳のイガグリ頭をしたヤンチャ坊主だ。ヒーローごっこが好きで、よくサトルやリョウと一緒になって遊んでいる。
でも、まだ小さいから、布団を畳むまではムリなんだ。上手くできずに一緒に布団と転がってしまい、挙句に遊びだしたのを見て、思わず笑ってしまった。
朝から、何て幸せなんだろう。
週末のビジネスマン――朝からエロく頑張るのも捨てがたいけど、こーいうのもいいな。
あったかくて、幸せになる。
お前等と一緒に居たら、俺は何時でも幸せになれんだな。
「ホラ、せっかく出来上がった朝飯が冷めるから、着替えたヤツから食堂行くぞ。キッチン寄って、トレイ受け取っていつも通り食堂へ行ってくれよ。布団は後で俺が片づけてやるから、もう早く行け」
食堂へ行くように促して、他のガキ共の様子もチェックして、まだあまり上手く歩くことができないキューマの手を引いて、ゆっくりと遊戯室を後にした。俺達が最後だ。
キューマは、チイと同じ二歳のガキだ。歩いたり、言葉が他のガキよりも発達が少し遅い。
でも、愛嬌は人一倍あって、カワイイ男の子なんだ。短い髪はリョウより少しゆるくて、アイリよりもくりくりの天然パーマがかかっていて、愛くるしい瞳がチャームポイントだ。
上手く喋れなくて、俺の事は『おー』と呼んでくれる。もうお前が笑顔で俺を呼んでくれるなら、あーでもおーでも、なんとでも呼んでくれっていう感じだ。
キューマは虐待が理由で、この施設にやって来た。
こんなカワイイキューマを、発達が遅いからという理由で虐待するとか、マジで考えられねーんだけどな。
キューマは、検診の時に役所の人間が不審に思って調査したところ、虐待が発覚したとか。太ももの裏側にある、たばこの押し付けられた痕が決定打になったそうだ。
俺も初めてフロに入れてやった時、驚いた。幸い早期発見だったから虐待の傷跡は浅くすんだ。職員が気が付かなかったら、間違いなく虐待がエスカレートして、更に一生残るような酷い怪我をしていただろう。
キューマは急遽保護されたため、受け入れ先がなく、美羽の所に連絡が入り、マサキ施設にやってきたそうだ。
キューマは慣れている人間以外は怖がって、最初は俺も近づくだけで泣かれたけど、次第に打ち解けてくれて、抱くまでできるようになった。
初めてキューマを抱き上げる事が出来た時は、嬉しかったな。それはつい、この前の事だ。
こんなカワイイキューマを、変な女に婿にはやれねーぞって考えちまうくらいだ。
ここに居るガキ共は、嫁にも婿にもやる気はねえぞ。
全部、俺のだ。
だから最近、虐待のニュースなんかを見聞きすると、酷く胸が痛むようになった。
この世で辛く苦しい思いをしているガキ共は、まだまだ大勢いるんだ。俺が一人でも多く救ってやりたいって、今では強く思うようになった。
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