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スマイル28
ビジネスビジョン・2
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さっさと用意すませちまって、朝食の準備とか、手伝ってやろう。
朝からコロッケスマイルを貯めるんだ。
最近俺は、コロッケスマイルが自分の中で貯まるのが、密かな楽しみとなりつつある。
それはやはり貯めれば貯める程、バラ色の未来が待っている――早い話が美羽を手に入れ、エロいコトが出来るからに他ならない。
もう、幾つ貯めりゃいいのかわかんねーから、俺がいいと判断を下す時点が最終地点だ。それまでは、気合入れて貯め続けるしかねえ。株みたいに価値が急上昇して沢山一気に貯めたりできればいいのにな、って思うけど、これは一個ずつしか貯まらないから、地道に貯め続けるしか無いんだ。
気が遠くなる話だな。でも、やるしかない。
着替えてキッチンに行くと、もう既に忙しく朝食の準備を始めている美羽が居た。
大人数の食事を一人で作らなきゃいけねーんだ。大変だな、毎日。
「おはよ。何か、手伝おーか?」
「あれっ、王雅、おはよう。昨日遅かったのに、もう起きちゃったの? まだ六時前よ。もう少し休んでて。お仕事で疲れているでしょう? ただでさえ施設の手伝いさせて、大変な思いさせているのに」
美羽はいつも通りだった。もう立ち直ったんだろう。昨日は泣いていたから心配したけど、特に目も腫れてなかった。
何時もあんな風に一人で泣いて――昨日は俺がいたけど――一立ち上がるんだな。お前は強いな。
そんな美羽は、綺麗に程よく化粧していて、今日も美人だ。
派手じゃないナチュラルメイクが、美羽の素の美しさを引き立たせている。
濃いメイクをしたら、美人だからさぞかし男を惑わせる悪い女の顔にもなるんだろうな――想像すると、ちょっとドキドキした。
雅で初めて逢った時の、あんな田舎臭い雰囲気のメイクじゃなくて、舞台映えするくらいハッとするような、そんなメイクも似合いそうだ。エキゾチックで妖艶なお前も、是非見てみたいな。
「別に好きでやってんだ。気にしなくていーから。仕事だって週末の楽しみ――施設に帰って来る――があるから張り合いあるし、こーやってここでガキ共と一緒に過ごすの、本当に楽しいんだ。お前こそ毎日休む暇なく大変だろ。手伝ってやるから。遠慮すんなよ」
「・・・・そっか、ありがとう。本当に助かるわ。じゃあ、食器並べるの手伝ってくれる? 六時五十分になったら、全員起こすから」
美羽が微笑んだ。よし、朝一のコロッケスマイルはゲットだ。
この調子で頑張ろう。千里の道も一歩からだ。
俺は美羽の指示通りに動き、手伝った。
皿を並べ、出来上がった料理を盛り付け、人数分繰り返す。
手伝い始めた当初は、分量とかよく解らなくて盛り付けが偏ったりしたけど、今はもう慣れた。均等に盛ることができるようになったんだ。
俺は施設に居ると、どんどん特技が増えるな。そのうち美味い料理でも作ってやって、全員をあっと驚かせてやろう。まあ、美羽には及ばないだろーけどな。でも、また楽しみが増えた。
二人で手分けして食事の用意をしていると、キッチンの端に取り付けられた何の変哲もない、白のシンプルな壁掛け時計の針が、そろそろ午前六時五十分を指そうとしていた。
この時計は、キリの良い時刻を知らせるチャイムが鳴るようになっている。つまり、七時になったらチャイムが一回鳴るんだ。
まあ、機能としては鳩時計のようなものだ。時間を知る目安になっていい。
似たような時計が、各部屋にも付いている。
「時間だから、ガキ共起こしに行って来る。食堂はもう準備できてるから、着替えさせたらそっち向かわせるな」
「うん。お願い」
キッチンを出て遊戯室へ向かった。
見ると既に電気が点いていて、リカやガックンが先陣を切って、自分よりも小さなガキ共を起こし、着替えを手伝っていた。
五、六歳の時、俺は召使に起こされ、着替えさせられ、全てを人任せだった事を思い出し、目の前のガキ共がいかに立派な事に敬意を覚えた。
朝からコロッケスマイルを貯めるんだ。
最近俺は、コロッケスマイルが自分の中で貯まるのが、密かな楽しみとなりつつある。
それはやはり貯めれば貯める程、バラ色の未来が待っている――早い話が美羽を手に入れ、エロいコトが出来るからに他ならない。
もう、幾つ貯めりゃいいのかわかんねーから、俺がいいと判断を下す時点が最終地点だ。それまでは、気合入れて貯め続けるしかねえ。株みたいに価値が急上昇して沢山一気に貯めたりできればいいのにな、って思うけど、これは一個ずつしか貯まらないから、地道に貯め続けるしか無いんだ。
気が遠くなる話だな。でも、やるしかない。
着替えてキッチンに行くと、もう既に忙しく朝食の準備を始めている美羽が居た。
大人数の食事を一人で作らなきゃいけねーんだ。大変だな、毎日。
「おはよ。何か、手伝おーか?」
「あれっ、王雅、おはよう。昨日遅かったのに、もう起きちゃったの? まだ六時前よ。もう少し休んでて。お仕事で疲れているでしょう? ただでさえ施設の手伝いさせて、大変な思いさせているのに」
美羽はいつも通りだった。もう立ち直ったんだろう。昨日は泣いていたから心配したけど、特に目も腫れてなかった。
何時もあんな風に一人で泣いて――昨日は俺がいたけど――一立ち上がるんだな。お前は強いな。
そんな美羽は、綺麗に程よく化粧していて、今日も美人だ。
派手じゃないナチュラルメイクが、美羽の素の美しさを引き立たせている。
濃いメイクをしたら、美人だからさぞかし男を惑わせる悪い女の顔にもなるんだろうな――想像すると、ちょっとドキドキした。
雅で初めて逢った時の、あんな田舎臭い雰囲気のメイクじゃなくて、舞台映えするくらいハッとするような、そんなメイクも似合いそうだ。エキゾチックで妖艶なお前も、是非見てみたいな。
「別に好きでやってんだ。気にしなくていーから。仕事だって週末の楽しみ――施設に帰って来る――があるから張り合いあるし、こーやってここでガキ共と一緒に過ごすの、本当に楽しいんだ。お前こそ毎日休む暇なく大変だろ。手伝ってやるから。遠慮すんなよ」
「・・・・そっか、ありがとう。本当に助かるわ。じゃあ、食器並べるの手伝ってくれる? 六時五十分になったら、全員起こすから」
美羽が微笑んだ。よし、朝一のコロッケスマイルはゲットだ。
この調子で頑張ろう。千里の道も一歩からだ。
俺は美羽の指示通りに動き、手伝った。
皿を並べ、出来上がった料理を盛り付け、人数分繰り返す。
手伝い始めた当初は、分量とかよく解らなくて盛り付けが偏ったりしたけど、今はもう慣れた。均等に盛ることができるようになったんだ。
俺は施設に居ると、どんどん特技が増えるな。そのうち美味い料理でも作ってやって、全員をあっと驚かせてやろう。まあ、美羽には及ばないだろーけどな。でも、また楽しみが増えた。
二人で手分けして食事の用意をしていると、キッチンの端に取り付けられた何の変哲もない、白のシンプルな壁掛け時計の針が、そろそろ午前六時五十分を指そうとしていた。
この時計は、キリの良い時刻を知らせるチャイムが鳴るようになっている。つまり、七時になったらチャイムが一回鳴るんだ。
まあ、機能としては鳩時計のようなものだ。時間を知る目安になっていい。
似たような時計が、各部屋にも付いている。
「時間だから、ガキ共起こしに行って来る。食堂はもう準備できてるから、着替えさせたらそっち向かわせるな」
「うん。お願い」
キッチンを出て遊戯室へ向かった。
見ると既に電気が点いていて、リカやガックンが先陣を切って、自分よりも小さなガキ共を起こし、着替えを手伝っていた。
五、六歳の時、俺は召使に起こされ、着替えさせられ、全てを人任せだった事を思い出し、目の前のガキ共がいかに立派な事に敬意を覚えた。
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