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スマイル27
涙・3
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俺は全員を家まで運べるように、大型のリムジンバスを用意させ、自宅まで急いだ。
ガキ共は、チイとの悲しい別れがあると分かっていながらも、初めて乗るリムジンバスに乗れたことで遠足気分が抜けないらしく、キャアキャア言っていた。
それを見て、俺もドン底まで落ち込まずに済んだ。やっぱり、喜びだけじゃなく、痛みも苦しみも、みんなで分かち合う方がいいんだな。喜びは倍に、苦しみは半減するんだと判った。
ガキ共や美羽は、俺の家に初めて来るから、門の所から家までの距離を車で走らないと辿り着けないという事に興奮し、更に広大な敷地に大きく建てられた城のような家を見て、全員口を開けて驚いていた。
今度かくれんぼして遊びたいってリョウが言い出したから、オーケーしてやったら喜んでたけど、俺の家でかくれんぼなんかしたら、多分、ガキ共を見つけることは困難だと思う。俺が鬼になることになると思うが、この俺でも、下手すりゃ誰も探し当てられないような気がする。ゲストルームも含めて、部屋数がハンパねえからな。
それから、庭にある大きなプールでも泳ぎたいって言うから、それもオーケーしたら喜んでくれた。
ま、俺の住んでいる家は、そんくらい広い家だ。でも、俺はこの広寒い家が嫌いだ。施設の方が落ち着いて良い。手を伸ばせば、すぐ傍にあったかいお前達が居るからな。
それに、俺の事を何時でも待っていて受け入れてくれる――それが凄く、嬉しいんだ。
あったかいお前達が居ない、寒くて凍えそうなこの家を、俺は早く脱出したいんだ。
自宅横に併設している自家用機専用の敷地に案内して、用意させていたヘリに佳奈美とチイを乗せる準備をした。
用意した近辺ホテルまでSPが警護することは既に説明してある。だから俺も一緒に、ここでチイとお別れだ。
ガキ共が思い思いの言葉を溢れる涙を拭うことなく、チイに伝えていた。
元気でね、また会おうね、忘れないでね、大好きだよ、さようなら――
俺の涙腺は既に限界だった。涙が溢れそうになるのを、必死で堪えるしかできなかった。
美羽もチイを抱きしめて、また会う約束を交わしていた。
彼女の瞳も、涙で濡れていた。
「おーたん」
チイがちょこちょこ歩きで、俺の所へやって来た。
「チイ、元気でな。お前・・・・俺様のコト、忘れんじゃねーぞ」
「あーい」
ぎゅっと、チイは自分の何倍もある俺の大きな身体を、小さな手いっぱいに抱きしめてくれた。
普通、逆だろ。
「おーたん、ちゃーい!」チイが俺に向かって手を振った。
「バーカ。チイ、ちゃーいって、それ、何時も俺様に言ってくれる、いってらっしゃいだろーが・・・・」
チイの一言で、遂に、涙腺が崩壊した。堪えていた涙が溢れた。
俺は溢れる涙をそのままに、チイを抱きしめた。
これで最後なんだな。チイ。本当に、もう終わりなんだな。マサキ施設から、お前が居なくなってしまうんだな。
お前のちゃーい――いってらっしゃいが、もう聞けなくなっちまうんだな。
俺の事慕って、くっついてきて、俺が帰る時には何時も大泣きして、そんなカワイイお前のコト、もう見れなくなってしまうんだな。
この腕から離れてしまって、遠い所に行ってしまうんだな。
本当はお前をドコにもやりたくないけど、そーいうワケにはいかねーもんな。
だから、辛く苦しい別れを乗り切って、また、笑顔で会おうぜ、チイ。
元気でな。
佳奈美と幸せに暮らせよ。
「チイ、ほら、行けよ。佳奈美(ママ)が待ってんだろ。お前が困ったら、俺様が何時でも助けてやるからな」
俺は、泣きながら精一杯の笑顔を見せた。涙が溢れてくるのは、もう、どーしよーもなかった。
自分では、止めることが出来なかった。
「あーい」
チイが手を振って、俺に笑顔を見せてくれた。
何時もは、お前がここで大泣きするのに、今日は逆だな。
お前と離れたくなくて、俺様の方が泣いちまうなんてな。
チイ、ありがとう。
お前が俺に教えてくれた大切なことは、絶対に、絶対に忘れないから。
佳奈美と落ち着いて暮らせるようになったら、俺がお前に会いに行ってやるから。
だけどな、お前が大きくなって、メチャクチャ美人になって、嫁に行くなんて事になっても、俺は絶対赦さねーからな。
お前の結婚式なんて、絶対に出席してやんねーからな。
佳奈美とチイがヘリに乗り込んだ。二人が大きく手を振った。
俺達は定位置まで下がって、ヘリが上昇して見えなくなるまで手を振って、彼女たちを見送った。
チイが居なくなってしまった淋しさだけが、全員の心に残った。
ガキ共は、チイとの悲しい別れがあると分かっていながらも、初めて乗るリムジンバスに乗れたことで遠足気分が抜けないらしく、キャアキャア言っていた。
それを見て、俺もドン底まで落ち込まずに済んだ。やっぱり、喜びだけじゃなく、痛みも苦しみも、みんなで分かち合う方がいいんだな。喜びは倍に、苦しみは半減するんだと判った。
ガキ共や美羽は、俺の家に初めて来るから、門の所から家までの距離を車で走らないと辿り着けないという事に興奮し、更に広大な敷地に大きく建てられた城のような家を見て、全員口を開けて驚いていた。
今度かくれんぼして遊びたいってリョウが言い出したから、オーケーしてやったら喜んでたけど、俺の家でかくれんぼなんかしたら、多分、ガキ共を見つけることは困難だと思う。俺が鬼になることになると思うが、この俺でも、下手すりゃ誰も探し当てられないような気がする。ゲストルームも含めて、部屋数がハンパねえからな。
それから、庭にある大きなプールでも泳ぎたいって言うから、それもオーケーしたら喜んでくれた。
ま、俺の住んでいる家は、そんくらい広い家だ。でも、俺はこの広寒い家が嫌いだ。施設の方が落ち着いて良い。手を伸ばせば、すぐ傍にあったかいお前達が居るからな。
それに、俺の事を何時でも待っていて受け入れてくれる――それが凄く、嬉しいんだ。
あったかいお前達が居ない、寒くて凍えそうなこの家を、俺は早く脱出したいんだ。
自宅横に併設している自家用機専用の敷地に案内して、用意させていたヘリに佳奈美とチイを乗せる準備をした。
用意した近辺ホテルまでSPが警護することは既に説明してある。だから俺も一緒に、ここでチイとお別れだ。
ガキ共が思い思いの言葉を溢れる涙を拭うことなく、チイに伝えていた。
元気でね、また会おうね、忘れないでね、大好きだよ、さようなら――
俺の涙腺は既に限界だった。涙が溢れそうになるのを、必死で堪えるしかできなかった。
美羽もチイを抱きしめて、また会う約束を交わしていた。
彼女の瞳も、涙で濡れていた。
「おーたん」
チイがちょこちょこ歩きで、俺の所へやって来た。
「チイ、元気でな。お前・・・・俺様のコト、忘れんじゃねーぞ」
「あーい」
ぎゅっと、チイは自分の何倍もある俺の大きな身体を、小さな手いっぱいに抱きしめてくれた。
普通、逆だろ。
「おーたん、ちゃーい!」チイが俺に向かって手を振った。
「バーカ。チイ、ちゃーいって、それ、何時も俺様に言ってくれる、いってらっしゃいだろーが・・・・」
チイの一言で、遂に、涙腺が崩壊した。堪えていた涙が溢れた。
俺は溢れる涙をそのままに、チイを抱きしめた。
これで最後なんだな。チイ。本当に、もう終わりなんだな。マサキ施設から、お前が居なくなってしまうんだな。
お前のちゃーい――いってらっしゃいが、もう聞けなくなっちまうんだな。
俺の事慕って、くっついてきて、俺が帰る時には何時も大泣きして、そんなカワイイお前のコト、もう見れなくなってしまうんだな。
この腕から離れてしまって、遠い所に行ってしまうんだな。
本当はお前をドコにもやりたくないけど、そーいうワケにはいかねーもんな。
だから、辛く苦しい別れを乗り切って、また、笑顔で会おうぜ、チイ。
元気でな。
佳奈美と幸せに暮らせよ。
「チイ、ほら、行けよ。佳奈美(ママ)が待ってんだろ。お前が困ったら、俺様が何時でも助けてやるからな」
俺は、泣きながら精一杯の笑顔を見せた。涙が溢れてくるのは、もう、どーしよーもなかった。
自分では、止めることが出来なかった。
「あーい」
チイが手を振って、俺に笑顔を見せてくれた。
何時もは、お前がここで大泣きするのに、今日は逆だな。
お前と離れたくなくて、俺様の方が泣いちまうなんてな。
チイ、ありがとう。
お前が俺に教えてくれた大切なことは、絶対に、絶対に忘れないから。
佳奈美と落ち着いて暮らせるようになったら、俺がお前に会いに行ってやるから。
だけどな、お前が大きくなって、メチャクチャ美人になって、嫁に行くなんて事になっても、俺は絶対赦さねーからな。
お前の結婚式なんて、絶対に出席してやんねーからな。
佳奈美とチイがヘリに乗り込んだ。二人が大きく手を振った。
俺達は定位置まで下がって、ヘリが上昇して見えなくなるまで手を振って、彼女たちを見送った。
チイが居なくなってしまった淋しさだけが、全員の心に残った。
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