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オトコの事情・2

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「プリンターの調子が悪いのよ。もう、随分使っているから、時間かかっちゃった。ごめんね」

 カメラと一緒だな。それも今度施設に来るまでに、俺が買っておいてやるから。
 黙っておいて、驚かせてやろう。
 喜んでくれるに違いない。


「いい写真、撮れたわよ。ホラ」


 美羽が見せてくれたのは、お菓子の家をバックに、ガキ共に囲まれて、満面の笑みで笑いあっている俺達の姿が収められた写真だった。
 最後に撮った写真だ。

 俺、こんな風に笑ってたんだ。
 自分がこんなに笑ってる姿、初めて見た。

「王雅、貼ってよ。そこに」

 丁度写真を見終わったところで、今から新しい写真を貼ろうと思っている最後のページを開いていたから、美羽が俺に写真を渡してきた。

「えっ、いいのか?」

「モチロンよ。透明のフィルムめくって、のりがくっついている面に、写真を優しく置いて、もう一回透明のフィルムを元に戻すのよ。空気が入らないように、気を付けてね」

「何か、難しそうだな。俺がやったら上手くできなくて、汚くなると思う。やっぱ、美羽がやってくれよ」

「じゃあ、一緒にやりましょ」

 美羽が俺の横に座って来た。狭いソファーだから、二人座ったらもういっぱいで、密着するんだ。


 おい、イカンて、それ。

 手、出ちゃうぞ?
 手だけじゃなくて、エロくて危ないヤツも、俺の中から出て来るぞ?
 いーのか?


 お前、俺を施設出禁にしたいのか!?


 ダメだダメだ、堪えろ、櫻井王雅!
 俺は世界一の男になるんだろっ!!
 美羽の同意が取れるまでは、手を出さないって決めたじゃないか!
 悪夢を再現する気か!?

 美羽が横に座って来たっつーだけで、あたふたしてどーするんだ!


 いや、待ってくれ。いくら世界一の男でも、この状態じゃオオカミになるって。
 密室に二人きりで、しかも密着横並びなんて、ゴーモンじゃねーかぁっ!!


 だってな、俺はもう、ずっと日照り続きで渇いてるんだ。
 潤いを求めてんだ。現状、砂漠を水も飲まずに歩いてる、旅人のようなモンだ。
 わかるだろ?

 オアシスで水を見つけたら、欲しくなるだろ?
 ガブガブ、心ゆくまで飲んじゃうだろ!?


 そんな状態だ。


 それでおあずけっつーのは、キツイだろ。
 俺に水をくれ、水を。


「ほら、こっちの手、貸して」


 美羽に手を伸ばそうとしたら、逆に手を取られた。
 透明のフィルムに手が当てられ、ここからめくるのよ、と教えてもらったのでそれをめくった。
 美羽の手が俺の手に添えられているから、ドキドキする。

 でも俺はフィルムじゃなくて、お前の服をめくりたい。


「開いているところに写真を置くの。それを軽く押さえて・・・・あっ、そうそう、イイ感じ! 上手よ、王雅。うん、そう・・・・優しく・・・・あっ、ダメっ、そんなに乱暴にしちゃ・・・・」

 おいっ!!
 美羽っ! お前、後半、エロすぎ!!
 上手よ、王雅、優しくって・・・・ダメっ、乱暴にしちゃって、ナニしてんだよっ!?
 言い方も何か、色っぽくてエロいし。

 っつーか、俺は上手いぞ?
 乱暴にはしねー代わりに、ここではとても言えないような、エロくてスゲーのやっちゃうぞ。お前、耐えれんのかよ。
 言っとくけど、俺を焦らせた罪は重いからな。泣いて謝っても、赦してやんねーぞ?
 ま、そういう意味では、乱暴かもしんない――じゃなくて!


 写真貼ってんだろ!
 イケナイコトしてるみたいなセリフ、言うなよっ。勘違いしちまうだろっ!


 あぁ、もう――っ!!


 俺は、お前に施設を締め出されたくねーんだぁっ!!
 出禁喰らいたくねーんだぁっ!!


 解ってくれよっ、このオトコの事情!!


 泣きたい。マジで辛いぜ。


 そうだ。妄想しよう。できるだけ、この火照りを覚ませられるような、ソフトなヤツだ。それで堪えよう。



――――・・・・



――お前、俺を誘ってんのか? そんなヤラシーセリフで。

――何言ってるの、違うわっ・・・・きゃあっ! ちょっと、ドコ触ってんのよっ!

――もう、我慢できねー! お前が悪いんだからな。俺様をこんなにしやがって、責任取れ!

――王雅っ、あっ、ダメっ――・・・・




 スト――――ップ!


 だめだ、だめだ、だめだ――――っ!!


 これはただの、そーなりたいっていう、俺の希望じゃねーかっ。
 それ以上ヤッちゃったら、マジでもう、現実の方が止まんなくなっちまう!
 
 欲求不満すぎて、ソフトなヤツ、なんっっっっにも出てこねー。

 かなりヤバい。過激なヤツしか今の俺には、引き出しがねーぞっ。


 何とか・・・・何とかしなければ。
 マジ出禁になるっっ。


「はい、できたっ」


 美羽が俺の手に重ねていた手を取って、にっこり笑った。

「一緒にやったら、ちゃんとできたでしょ?」

「ああ、うん」

 いや、俺は今、それどころじゃねーんだ。
 写真が上手く貼れたとか、透明フィルムがちゃんと元に戻せたかどうかとか、もう、どーでもいーんだ。
 今も震えてる。心臓も驚く程ドキドキしてる。早く手、離してくんねーかな。
 お前に触れたくて、しょうがなくて、ヤバいんだ。プルプルしてんのを、必死に堪えてんだ。察してくれ。
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