コロッケスマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

文字の大きさ
上 下
38 / 150
スマイル22

お菓子の家・3

しおりを挟む
 施設に戻ると、ガキ共に手厚いお帰り攻撃を受けた。
 嬉しい。もう、毎日この攻撃受けたい。
 明日からは、そんなあったかい出迎えも無い、無駄に広い、空寒い自分の家の部屋に帰らなきゃいけないのか――考えただけで、スゲー憂鬱で泣きそうになる。いや、本当には泣かないけど、そんくらい憂鬱だってコトだ。

 やっぱ、美羽に頼んで、俺もここに住もうかな。
 これから作るお菓子の家、ちょっと残してもらって、ここに住んじまおうかな。


 って、やっぱ、ダメだよな。


 それに、施設に住んじまったら、俺、美羽に手を出す絶大な自信がある。
 だから、とてつもなくマズイ。
 好きな女と一つ屋根の下なんて、すぐに間違いが起こるに決まってんだろ。そんなの、間違いだらけだ。起こさない男がいたら、お目にかかりたいぜ。

 実は土日の泊りでさえ、ちょっと大丈夫かな、って不安なんだ。
 一触即発の気持ちを、根性で堪えてるだけだからな。そんな危ないギリギリのライン、何かの拍子にすぐに突破しちまうだろ。ただ、そんな事になったら今後が困るんだ。

 まあ、土曜日の一日だけなら何とか堪えられるだろうけど、でもなぁ・・・・そーいうの、美羽のヤツ、解かってんのかな。危機感、持ってんのかな。
 これが、俺の事を信頼、信用してるってヤツなのか?
 悪いけど、俺にはそんなの通用しねーぞ。野獣だからな。大人しい飼い犬とかじゃねーんだ。

 そんな俺がプッツンして暴走したら、自分でも止められねーぞ。止めれる気がしねえもん。
 まあ、施設の出禁――出入り禁止――を喰らったら俺は間違いなく廃人になるだろうから、やっぱ根性で堪えるしかねーか。
 美羽もそうだけど、ガキ共も失う訳にはいかねーんだ。


 色々考えていると、思い当たることがあった。
 そういえば最近、美羽とキスしてねーぞ! これはイカン。大問題だ。早急に何とかしなければ。
 今は俺様が手を出さないように、我慢してやってるからな。
 でも、我慢も限界だぜ、いい加減。
 ちょっとくらい、前みたいに強引にやってやろうかな。


 でも、しちゃったら・・・・


 ・・・・ヤバいな。色々我慢してる分、歯止めきかなくなっちまうだろーな。


 もう、あっという間だろ。そーなったら、坂道を転がるより簡単だな。
 美羽を、俺の手で無理矢理――って、悪夢の再現だけは、絶対にダメだかんな、俺。
 同意が取れるまで、我慢だ。堪えるしかねーんだ。

 でも、そんな同意、何時取れんだよ?
 明日にでも取れるっつーなら、今日一日くらい、って努力で堪えられるけどさ。
 取れるかどうか保証もねーし、わかんねーんだ。
 だから余計、辛くなる。
 はぁぁ。俺様ともあろうものが・・・・女日照りがずっと続いてんだ。もう、アッチ方面乾きすぎだぜ。マジで。
 言っとくけどな、俺がホンキ出したら、女なんか幾らでもタベホーダイできちゃうんだぜ?
 こないだも、スゲー美人に一晩誘われちゃったんだ、浮気してもいーのかよ、って言ってやりたい。
 だから、早く俺との関係を進めようぜ、って。

 でも、そんな事言ったら、勝手にすれば? って絶対言うよな、美羽のヤツ。
 どうぞご自由に、とか笑顔で言われたら、俺・・・・どうしよう。そうなったら、ゴメンナサイって言うしかねーよな。
 浮気なんてお前の気を引くためのウソなんだ、冗談だ、お前一筋の俺様が浮気なんてするわけねーだろ、お前しか欲しくないんだ、って謝って通じるかな。美羽のヤツ、許してくれるかな。


 やっぱりそうよね、思った通りよ、私が思い通りにならない貧乏女だから、ちょっかいかけてただけなのね、って美羽は笑って言うだろう。

 じゃあ、どうぞ美人の彼女の方に行って仲良くすればいいじゃない、もう二度と私に近づかないでね、サヨウナラ――



 待ってくれ! ダメだ!! 今のはナシ! 違うっ、嘘なんだ!!
 俺はお前しか要らないんだって!!
 マジなんだ! 信じてくれ!!
 もう言わないっ! 絶対言わないから!!
 俺が悪かったっ、頼むからそんな事言わないで、赦してくれ美羽っ、お願いします――


 ヤバイ。コレ、マジの地獄だ。浮気うんぬんなんて、口が裂けても絶対に言えねー。サヨナラなんて、俺を殺す気か!

 冗談でもそんな事言っちゃお終いだ。美羽はもう二度と、俺の事信用してくんなくなりそーだ。





――って、なんで俺様が想像だけでこんなに焦って、お前にペコペコ謝んなきゃいけねーんだよ!





 はぁぁぁぁ・・・・。何かバカみたいな事を色々考えすぎて、余計ブルーになっちまった。
 やっぱ、今の状態で施設住まいはちょっと無理だな。ハードル高すぎるぜ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

処理中です...