コロッケスマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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スマイル22

お菓子の家・1

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 あの後、遅くまで横山の為に契約書を作り、仕上げた。朝一で契約書を届けるつもりだったから、今は着替えや、出発の準備を整えている最中だ。
 結局昨日は仕事もあったから、ガキ共の傍では眠らずに、一人で応接室で仮眠した。

 昨日、優しく美羽に包まれて、俺は決めた。
 今後、この俺の拠点となる会社――キングフェザーと名づけることにした。
 意味はそのままだ。王の羽だ。
 とにかく、俺が認めた会社なら、救いの羽を渡してやる。これを手にしたものは、どんな会社や企業でも助けてやる――王の俺が、美羽のように、優しい羽根で包んでやる、そんな意味を込めて名付けた。


 きっと、上手く行く。
 行かせてみせる。

 櫻井グループなんかよりも、もっともっと素晴らしい会社にしてみせる。


 でも、こんなに急に、新ビジネスに結びつくとは俺も考えていなかった。
 予想外の事だが、ビジネスチャンスは逃さずやって行かなきゃ、すぐいい話なんかは逃げていく。捕まえてモノにしなきゃ、始まらない。

 登記もまだだし、印鑑も無いから、これから渡す書類は仮になるけど、とにかく仕上げた。
 俺は約束を反故にするつもりはないから、契約金を振り込むことについては、俺の事を横山に信用してもらうしかないな。
 俺としても、ちゃんとした契約書が無いのに金を振り込むのは嫌だけど、まあ、この際仕方ない。向こうの都合を汲んでやらないと、肝心の工場が潰れちまうからな。振り込む手配は既に済ませてあるから、契約書を持って行った時に、横山にその旨伝えてやろう。

 やっぱり、契約書の不完全な取引は不安だ。なんせ、キングフェザー初の取引となるわけだからな。
 まあ、美羽の恩人で人の良さそうな横山が、俺を裏切ったりはしないだろう。ここはもう、信用するしかない。
 万が一何かあったとしても、四億ならまた他の事業で回収すればいいけど、そういう問題じゃないんだよな。初取引にケチが付いたりしたら、幸先悪いからな。


 とはいえ、月曜日のたった数時間の辛抱だ。社名も決まったから、印鑑、登記の手配は、月曜日に全て済ませられる用意はしておいた。それらの用意が出来次第、横山の工場に向かう段取りをしておこう。

 月曜日の準備は一通り揃えたから、もういいだろ。
 それより横山の所へ行く為に、そろそろ出発の準備を整えてしまおう。


 髪型をセットし、今日はスーツではないけど、私服の薄手のジャケットの袖に手を通したところで、応接室にノックがかかった。「おはよう、王雅。入ってもいい?」

「ああ、いいぜ」

 美羽が現れた。トレイに淹れたての珈琲とサンドウィッチを用意してくれている。

 彼女の恰好は、昨日のライトブルーのパジャマじゃなくて、もう既に着替えていた。
 白と黒のボーダーの半袖カットソーに、膝丈までのピンクのスカートを履いて、白いエプロンを着けている。あのパジャマは悪いけどもう見たくなかったから、普通の服で良かった。ほっとした。

 来週までに美羽のパジャマ、新しいのを俺が用意してやろう。
 色もライトブルー以外にしよう。
 あのパジャマ見たら、昨日の夢を思い出して死ぬほど辛くなるだろうから、俺が施設に来る時は、着ないように頼むつもりだ。

「朝早くから、ご苦労様。軽く作ったんだけど、食べれる?」

 焼きたてのたまごを挟んでるので、サンドウィッチからも珈琲と同じく湯気が出てる。美味そうだ。
 俺の為に、朝早くからわざわざ作ってくれたんだな。嬉しかった。

「ああ、貰うぜ。サンキュー」

 ソファーに座って、美羽が持ってきてくれたサンドウィッチを頬張って、淹れたての珈琲を飲んだ。
 たまごは半熟トロトロで、絶妙の焼き加減だ。こんなの今まで食った事ねー。メチャクチャ美味い。

 それに、好きな女が作ってくれた朝食なんて、スゲー贅沢だな。これだけで幸せな気分になれる。

 そんな半熟たまごのサンドウィッチを食べていると、ソファーの向かい側に美羽が座って、俺をじっと見つめきた。
 
「なんだよ」

 お前にそんな風に見つめられるとドキドキするから、あんまり見つめないで欲しい。

「やっぱり。ほらココ、たまご付いてる。慌てて食べなくても、待ち合わせには遅れないわ。まだ時間、早いもの。もう王雅ったら、子供みたいね」

 クスッと笑われたと思ったら、美羽の手が伸びてきた。俺の唇の端がなぞられて、ほんの少しのたまごが美羽の細い指についた。アイツは、それを勿体ないからって、舐めて食べやがったんだ。

 ゾクッとした。

 何か、今の、スゲーエロいんだけど。

 俺を、誘ってんのか?


 ・・・・ンなワケねーよな。こんな朝から。


 違うんだったら、そーゆーの、止めてくんねーかな。
 口元に、たまご付いてるって指摘するだけで、いーだろ。何でわざわざ取って、舐めて食うんだよ。

 イケメンにされたら、乙女が嬉しいやつだろ、ソレ。

 逆って、どうよ?
 いや、俺も嬉しいけどさ。
 でも俺は、そんなぬるいやつじゃなくて、もっと上級なやつがいーんだ。

 どーせ食うならたまごじゃなくて、俺を舐めて食ってくれよ。
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