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スマイル21
ビジネスチャンス・6
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あれから、どれくらいの時間が経っただろう。気が付くと、契約書は出来上がっていた。
一体いつ、どのように仕上げたのか、全く覚えていない。
ただ、内容を確認すると、問題なくきちんと仕上がっていた。
俺の性格上、仕事は手を抜かない。こればかりは、自慢できることだと自負している。
記憶がないほどに、苦しい思いを消したくて、仕事に没頭していたんだな。
まだ胸が苦しい。どうにかなりそうだ。
傍には、美羽が居た。
心配そうに俺を見つめている美羽を、応接室の狭いソファーに押し倒した。
お前が悪いんだ、美羽。
簡単に、お前が好きだって言ってる男の傍へノコノコと無防備でやって来るから、こーいう目に遭うんだ。
思い知れ。
俺は、美羽の衣類を引き裂いた。彼女が着ていたライトブルーのパジャマから、ボタンが千切れて弾け飛んだ。
――抱きたいなら、抱けば。別に、いいわよ。
美羽は、そんな風に言った。
何だよ、それ。
俺が好きとか、そんなんじゃねーんだろ?
横山の事があるから、別に俺に抱かれてもいいって、俺の言う通りにしてやらなきゃって、思ってるだけなんだろ!?
想像通りだな。
俺はお前の恩人を救った男だから、俺の言う事に従うんだ。
俺は未だに、お前の心の欠片も手に入れてねーんだな。
こんなに、好きなのに!
こんなに、愛しているのに!!
腹が立って、どうしようも無くなって、俺は暴れた。
美羽をこの手で、傷つけた。メチャクチャに犯して抱いた。
最低なことしてるって判ってんのに、止められなかった。
何が立派な男になる、だ。
バカだろ。
俺なんかが、なれるワケねーんだ。
こんなに心から愛している女を、
自分勝手に傷つける事しかできないんだからな――・・・・
―――――・・・・
「・・・・が、王雅」
「美羽・・・・ううっ・・・・美羽っ・・・」
「王雅っ!」
激しく揺さぶられて、目を開けた。
気が付くと、目の前に心配そうに俺を覗き込んでいる美羽が居た。「大丈夫? すごくうなされてたけど」
「あ・・・・俺・・・・どーして・・・・?」
辺りを見回すと、施設の応接室だった。横にさっきまで作業していたノートパソコンが置いてあるのが見えた。
「うたた寝しちゃったのね。遅くまでご苦労様。珈琲でも飲む? 冷たいの、淹れてこようか?」
美羽を見ると、さっき俺が引き裂いたハズのライトブルーのパジャマを着ていた。元通り綺麗だ。ボタンも飛んでない。
安堵の、深く長いため息が出た。
さっきのは、夢。
・・・・良かった。本当に、良かった。
涙が出そうになった。
お前をこの手で傷つけたりしてない――そんな最低な事をしてなくて本当に良かったと、心の底から思った。
「こっち、来てくれ。なんもしねーから」
美羽を抱きしめた。
「少しだけでいーから、このまま、傍にいてくれ美羽・・・・」
「どうしたの、王雅。怖い夢でも見たの? 大丈夫よ。もう目が覚めたんだもの。安心して。大丈夫だから・・・・」
俺は、気が付かないうちに震えていた。
足元から崩れ落ちそうになる身体を支えるのに精いっぱいだった俺を、美羽が抱き返してくれた。
私が傍にいるから、もう大丈夫よ、と囁いて、優しく背中を撫でてくれた。
美羽、美羽。
お前を傷つけてなくて、本当に良かった。
こんなに愛しているんだ。
どうしたら伝わるか、わかんねーけど。
今は信じてもらえなくても、それでもいい。
覚悟、決めたんだろ。
苦しくても、突き進むって決めたんだろ。
最低な事を――美羽を傷つけたりしていなかったと解って、おかげできっちり腹を括る事が出来た。
生半可な気持ちだったから。つまらない事を考えてしまって、あんな夢を見たりするんだ。
やり遂げろ、櫻井王雅。
もうやめたいとか、簡単に弱音を吐くな。
男なら、一度決めたことを貫き通せ。
世界一の、本物の男になって、美羽を手に入れるんだろ。
お前が俺の事を本当に認めて、俺のものになってもいいって思うまで、
決してあきらめたりしないってな――
一体いつ、どのように仕上げたのか、全く覚えていない。
ただ、内容を確認すると、問題なくきちんと仕上がっていた。
俺の性格上、仕事は手を抜かない。こればかりは、自慢できることだと自負している。
記憶がないほどに、苦しい思いを消したくて、仕事に没頭していたんだな。
まだ胸が苦しい。どうにかなりそうだ。
傍には、美羽が居た。
心配そうに俺を見つめている美羽を、応接室の狭いソファーに押し倒した。
お前が悪いんだ、美羽。
簡単に、お前が好きだって言ってる男の傍へノコノコと無防備でやって来るから、こーいう目に遭うんだ。
思い知れ。
俺は、美羽の衣類を引き裂いた。彼女が着ていたライトブルーのパジャマから、ボタンが千切れて弾け飛んだ。
――抱きたいなら、抱けば。別に、いいわよ。
美羽は、そんな風に言った。
何だよ、それ。
俺が好きとか、そんなんじゃねーんだろ?
横山の事があるから、別に俺に抱かれてもいいって、俺の言う通りにしてやらなきゃって、思ってるだけなんだろ!?
想像通りだな。
俺はお前の恩人を救った男だから、俺の言う事に従うんだ。
俺は未だに、お前の心の欠片も手に入れてねーんだな。
こんなに、好きなのに!
こんなに、愛しているのに!!
腹が立って、どうしようも無くなって、俺は暴れた。
美羽をこの手で、傷つけた。メチャクチャに犯して抱いた。
最低なことしてるって判ってんのに、止められなかった。
何が立派な男になる、だ。
バカだろ。
俺なんかが、なれるワケねーんだ。
こんなに心から愛している女を、
自分勝手に傷つける事しかできないんだからな――・・・・
―――――・・・・
「・・・・が、王雅」
「美羽・・・・ううっ・・・・美羽っ・・・」
「王雅っ!」
激しく揺さぶられて、目を開けた。
気が付くと、目の前に心配そうに俺を覗き込んでいる美羽が居た。「大丈夫? すごくうなされてたけど」
「あ・・・・俺・・・・どーして・・・・?」
辺りを見回すと、施設の応接室だった。横にさっきまで作業していたノートパソコンが置いてあるのが見えた。
「うたた寝しちゃったのね。遅くまでご苦労様。珈琲でも飲む? 冷たいの、淹れてこようか?」
美羽を見ると、さっき俺が引き裂いたハズのライトブルーのパジャマを着ていた。元通り綺麗だ。ボタンも飛んでない。
安堵の、深く長いため息が出た。
さっきのは、夢。
・・・・良かった。本当に、良かった。
涙が出そうになった。
お前をこの手で傷つけたりしてない――そんな最低な事をしてなくて本当に良かったと、心の底から思った。
「こっち、来てくれ。なんもしねーから」
美羽を抱きしめた。
「少しだけでいーから、このまま、傍にいてくれ美羽・・・・」
「どうしたの、王雅。怖い夢でも見たの? 大丈夫よ。もう目が覚めたんだもの。安心して。大丈夫だから・・・・」
俺は、気が付かないうちに震えていた。
足元から崩れ落ちそうになる身体を支えるのに精いっぱいだった俺を、美羽が抱き返してくれた。
私が傍にいるから、もう大丈夫よ、と囁いて、優しく背中を撫でてくれた。
美羽、美羽。
お前を傷つけてなくて、本当に良かった。
こんなに愛しているんだ。
どうしたら伝わるか、わかんねーけど。
今は信じてもらえなくても、それでもいい。
覚悟、決めたんだろ。
苦しくても、突き進むって決めたんだろ。
最低な事を――美羽を傷つけたりしていなかったと解って、おかげできっちり腹を括る事が出来た。
生半可な気持ちだったから。つまらない事を考えてしまって、あんな夢を見たりするんだ。
やり遂げろ、櫻井王雅。
もうやめたいとか、簡単に弱音を吐くな。
男なら、一度決めたことを貫き通せ。
世界一の、本物の男になって、美羽を手に入れるんだろ。
お前が俺の事を本当に認めて、俺のものになってもいいって思うまで、
決してあきらめたりしないってな――
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