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スマイル21
ビジネスチャンス・5
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寿司パーティーをしたもんだから、今日の夕飯は、野菜中心のメニューで簡単なもので済ませた。美羽曰く、贅沢は続けてはいけないらしい。買い込んできた肉なんかは、施設の大きな冷凍庫に保管されている。
まあ、簡単なものとはいえ、料理の腕はピカ一の美羽が作る飯は、やっぱり美味かった。
そうそう。ちょっと前、施設でハンバーグ食って帰った時、付け合わせのポテトサラダが美味かったから、また食いたいっつってたのを覚えていてくれてて、それを用意してくれてたのも、嬉しかった。
それから、ガキ共とめいっぱい遊んで、風呂に入れてやって、美羽と手分けして遊戯室に布団を引いて、全員を寝かせた。
電気を消して暗くすると、あっという間にガキ共は眠っちまった。
さあ、俺は今から契約書作りだ。
美羽も内職があるらしいから、二人で応接室でそれぞれの作業をすることになった。
一人で作業するつもりだったのに・・・・俺、我慢できんのかな。夜に美羽と密室に二人っきりだなんて、大丈夫かな。
自分が暴走しない事を願いつつ、持ってきたノートパソコンで作業を始めた。
作業を始めて暫くしたら、美羽が声をかけて来た。「王雅、色々、本当にありがとう」
「何がだよ」画面から顔を上げ、美羽を見た。
「王雅が帰ってくる前、横山さんから連絡があったの。王雅のおかげで、工場を手放さなくてすみそうだって。手厚く礼を言っておいてくれって」
「ああ、別に。さっきもお前に伝えたと思うけど、俺は、見込みのない会社には投資なんて絶対しないからな。横山の製品が良かったんだ。それに、おかげで今後の明確なプランも立てれたし、俺としても、横山のトコ行けて良かったぜ」
「そう。でも、王雅ってスゴイね。ちょっと話聞いただけで、色々判っちゃうんだもの。横山さんが施設の前の土地の持ち主だったなんて、貴方に話してないのに」
「前に美羽が言ってただろ。花井の前の持ち主は、金も取らずにこの土地を貸してくれてたって。だから、話の内容や、優しそうな容姿からして、横山の事だろうなって思った。それだけの事だ」
「そっか・・・・」
「一を聞いたら十を知る、ってヤツだ。俺はずっと、そんな世界で生きて来たからな。頭の回転が悪かったら、すぐ蹴落とされんだ」
「王雅も、大変なのね」
「そうでも無いぜ。ビジネスは楽しい。思い通りにならないところも、楽しい。まっ、手腕が良いから、たいてい上手く行くけどな」
上手く行かない事は、お前の事だけだ、って言ってやろうかな。
「あの・・・・王雅。貴方にとっては、横山さんはただのビジネスパートナーになっただけかも知れない。でも、あの人を助けてくれたってことは、私達親子にとって・・・・ううん、私にとって、感謝してもしきれないのよ。横山さんは、私がとても辛くて苦しい時に、唯一助けてくれた恩人なの。だから・・・・横山さんを助けてくれて、ありがとう。本当に、ありがとう」
美羽が俺に向かって、深く頭を下げた。
――今、俺が、もしここでお前を抱きたいっつったら、お前、きっと首を縦に振るだろうな。
俺の事、好きでも無い癖に、イエスの返事するんだろうな。
何時もみたいに怒って、俺の事引っぱたいて、拒否ったりしないんだろうな。
ひょっとしたら、俺を喜ばせる演技までするかもしんねーな。
俺が、お前の恩人である横山の為に、便宜を図った男だから――って理由で。
なあ。
何でお前は、そんなに施設一筋なんだ。
俺の事は、少しも思ってくれないのか。
覚悟してたけど、お前が少しも俺の事を思ってくれて無いって事が、こんなにも苦しいなんてな。
まりなやヒラメオヤジは、お前が俺の事を大切だとか、信頼してるとか言うけど、俺はそんなの要らねーんだよ。
お前が、俺を好きになってくれなきゃ、意味がねーんだよ。
唇をかみしめ、顔を歪ませて美羽の事を見つめていたから、どうしたの、と聞かれたから、別に、と一言だけ伝えて、俺はノートパソコンの画面に視線を戻した。
暫く操作していなかったから、画面がスリープモードに切り替わって暗くなっているそこに、酷く傷ついた顔をした俺が映し出されていた。
バカだな、俺も。
判ってんのに、イチイチ傷ついたりして。
でも、俺は、お前が欲しくて欲しくてしょうがないんだ!
どんな男になりゃ、お前に認められんだよ。
どうしたら、俺の事――愛してくれんだよ。
なあ、どうしたら・・・・。
苦しい。
もうやめたい。
何でお前みたいな、思い通りにいかねー貧乏女に惚れちまったんだろ。
俺も、本当にバカだ。
さっさとやめときゃ、こんなに苦しい思いしなくてすんだのに。
でも、もう無理なんだ。
やめたいって思っても、やめることができねーんだ。
きっと、お前を好きでいることをやめちまったとしても、スゲー苦しいと思う。
やめても苦しい、やめなくても苦しいなんて、どーしたらいいんだよ。
俺はもう、お前しか欲しくないし、ガキ共と離れるのも無理なんだ。
助けてくれよ、美羽。
お前しか、俺を救えないんだ。
悔しいくらいにお前に惚れちまったから、俺にはもう、どうすることもできねーんだよ・・・・。
まあ、簡単なものとはいえ、料理の腕はピカ一の美羽が作る飯は、やっぱり美味かった。
そうそう。ちょっと前、施設でハンバーグ食って帰った時、付け合わせのポテトサラダが美味かったから、また食いたいっつってたのを覚えていてくれてて、それを用意してくれてたのも、嬉しかった。
それから、ガキ共とめいっぱい遊んで、風呂に入れてやって、美羽と手分けして遊戯室に布団を引いて、全員を寝かせた。
電気を消して暗くすると、あっという間にガキ共は眠っちまった。
さあ、俺は今から契約書作りだ。
美羽も内職があるらしいから、二人で応接室でそれぞれの作業をすることになった。
一人で作業するつもりだったのに・・・・俺、我慢できんのかな。夜に美羽と密室に二人っきりだなんて、大丈夫かな。
自分が暴走しない事を願いつつ、持ってきたノートパソコンで作業を始めた。
作業を始めて暫くしたら、美羽が声をかけて来た。「王雅、色々、本当にありがとう」
「何がだよ」画面から顔を上げ、美羽を見た。
「王雅が帰ってくる前、横山さんから連絡があったの。王雅のおかげで、工場を手放さなくてすみそうだって。手厚く礼を言っておいてくれって」
「ああ、別に。さっきもお前に伝えたと思うけど、俺は、見込みのない会社には投資なんて絶対しないからな。横山の製品が良かったんだ。それに、おかげで今後の明確なプランも立てれたし、俺としても、横山のトコ行けて良かったぜ」
「そう。でも、王雅ってスゴイね。ちょっと話聞いただけで、色々判っちゃうんだもの。横山さんが施設の前の土地の持ち主だったなんて、貴方に話してないのに」
「前に美羽が言ってただろ。花井の前の持ち主は、金も取らずにこの土地を貸してくれてたって。だから、話の内容や、優しそうな容姿からして、横山の事だろうなって思った。それだけの事だ」
「そっか・・・・」
「一を聞いたら十を知る、ってヤツだ。俺はずっと、そんな世界で生きて来たからな。頭の回転が悪かったら、すぐ蹴落とされんだ」
「王雅も、大変なのね」
「そうでも無いぜ。ビジネスは楽しい。思い通りにならないところも、楽しい。まっ、手腕が良いから、たいてい上手く行くけどな」
上手く行かない事は、お前の事だけだ、って言ってやろうかな。
「あの・・・・王雅。貴方にとっては、横山さんはただのビジネスパートナーになっただけかも知れない。でも、あの人を助けてくれたってことは、私達親子にとって・・・・ううん、私にとって、感謝してもしきれないのよ。横山さんは、私がとても辛くて苦しい時に、唯一助けてくれた恩人なの。だから・・・・横山さんを助けてくれて、ありがとう。本当に、ありがとう」
美羽が俺に向かって、深く頭を下げた。
――今、俺が、もしここでお前を抱きたいっつったら、お前、きっと首を縦に振るだろうな。
俺の事、好きでも無い癖に、イエスの返事するんだろうな。
何時もみたいに怒って、俺の事引っぱたいて、拒否ったりしないんだろうな。
ひょっとしたら、俺を喜ばせる演技までするかもしんねーな。
俺が、お前の恩人である横山の為に、便宜を図った男だから――って理由で。
なあ。
何でお前は、そんなに施設一筋なんだ。
俺の事は、少しも思ってくれないのか。
覚悟してたけど、お前が少しも俺の事を思ってくれて無いって事が、こんなにも苦しいなんてな。
まりなやヒラメオヤジは、お前が俺の事を大切だとか、信頼してるとか言うけど、俺はそんなの要らねーんだよ。
お前が、俺を好きになってくれなきゃ、意味がねーんだよ。
唇をかみしめ、顔を歪ませて美羽の事を見つめていたから、どうしたの、と聞かれたから、別に、と一言だけ伝えて、俺はノートパソコンの画面に視線を戻した。
暫く操作していなかったから、画面がスリープモードに切り替わって暗くなっているそこに、酷く傷ついた顔をした俺が映し出されていた。
バカだな、俺も。
判ってんのに、イチイチ傷ついたりして。
でも、俺は、お前が欲しくて欲しくてしょうがないんだ!
どんな男になりゃ、お前に認められんだよ。
どうしたら、俺の事――愛してくれんだよ。
なあ、どうしたら・・・・。
苦しい。
もうやめたい。
何でお前みたいな、思い通りにいかねー貧乏女に惚れちまったんだろ。
俺も、本当にバカだ。
さっさとやめときゃ、こんなに苦しい思いしなくてすんだのに。
でも、もう無理なんだ。
やめたいって思っても、やめることができねーんだ。
きっと、お前を好きでいることをやめちまったとしても、スゲー苦しいと思う。
やめても苦しい、やめなくても苦しいなんて、どーしたらいいんだよ。
俺はもう、お前しか欲しくないし、ガキ共と離れるのも無理なんだ。
助けてくれよ、美羽。
お前しか、俺を救えないんだ。
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