コロッケスマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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スマイル21

ビジネスチャンス・4

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 これで、決まったな。
 俺の新しい個人の会社は、コンサルティング会社と、投資会社、今から独占契約を結ぶというメインの会社、この三つだ。

 櫻井家と縁が切れても良いような体制は、何とか整えられそうだ。
 やっぱ、ビジネスチャンスはいつやってくるかわからない。
 それを逃さないよう、俺はいつでもアンテナ張っておこう。
 また、こういった会社や工場、どんどん見つけよう。


 面白くなってきた。


 だから、ビジネスはやり甲斐がある。


 美羽の事も、これくらいサクサク進めばいーんだけどな。
 でも、こればっかは、俺の力を持ってしても、どうしようもねーんだよな。


「横山さん。工場をたたむという話は、白紙にしてください。あとそれから、御社が技術特許をお持ちなら、独占契約にそちらの独占利用契約も付け加えてください。その分、契約金は上乗せします。特許及び技術は、俺の新会社と独占契約、これで手を打って頂けますね? 独占と言っても、他に御社や、御社の特許を利用したいという会社や企業があれば、俺を通していただければ、受注は許可しますから、どんどん使用料を取った上で、良い製品を作ってください。一緒に頑張りましょう。契約書は今夜中に作って、明日お持ちします」

「櫻井さん・・・・本当に、よろしいのですか・・・・? 私の工場、助けて下さるんですか・・・・?」

「男に二言はありません」

 横山はその場に崩れ落ちた。膝をついて顔を覆っている。
 皺が深く刻まれた、工場で働く男独特のゴツイ手から、涙があふれ出していた。




 ※




 彼が落ち着いてから話を聞くと、挨拶回りをした後、自決を考えていたようだ。自分が死んだ後の、保険金で少しでも社員の給料が出れば、と考えていたらしい。

 バカじゃねーのか、と怒鳴ってやった。オヤジが死んでも、誰も喜ばないし、むしろ迷惑だ。
 それより、苦汁を舐めてでも生き残って、這いあがれっつってやった。
 その為に俺を利用しろ、と。お互いの利益を生もうって、言ってやった。
 手厚く礼を言われ、何度も握手をされた。もういいっつってんのに、離しやがらねーんだ、このオヤジ。


 横山は、俺をマサキ施設の近くの大通りまで送ってくれた。いいから早く帰れっつっても、俺の姿が見えなくなるまで、頭を下げていた。律儀なヤツだ。


 思いのほか、話が早くまとまったな。
 っつーか、俺の提案を受け入れるしかない状況だったから向こうもゴネなかったし、思った通り特許もあったから、契約は四億円で話がついた。持っていた特許だが、ハッキリ言って宝の持ち腐れだった。特許の取り方もずさんだったし、何にも生かされてなかった。勿体ない。

 これは早急に、特許の取得のやり直しをさせなきゃならねえ。このままだと穴だらけで、そこを突かれて、他所の会社か企業に持って行かれちまう。
 きちんと手続きを踏んだら、俺がプロデュースして、この特許を生かした製品を作ってあらゆる企業に売り込めば、百倍・・・・いや、千倍以上の価値は付くだろう。
 
 あんな良い工場、特許も含めて四億円の契約で済んで、安いモンだ。

 もっと出してもいいんだけど、あまり身の丈に合わない契約金は、工場をダメにしちまうからな。金を持ち慣れてない人間が、思いの他大金を手にすると、暴走することがある。その辺は俺が手綱を取ろう。


 横山工業、もっと俺が大きくしてやる。
 自決とか、もう二度と横山がバカな事を思わなくてもいいように、しっかり利益を出させてやるからな。


 路地を曲がると、マサキ施設のボロ門扉が見えて来た。帰って来たな。
 さ、俺も、ガキ共と飯食って遊んで風呂入って寝かせたら、仕事しよう。


 やかましいボロの門扉を開け、横開きのこれまたやかましい扉をガラガラ音を立てて開くと、入口で待っていたガキ共全員が、おかえりなさーい、と俺を取り囲んだ。


「なんだよ、お前等・・・・」


 ガキ共の後ろに、美羽が立っていた。「お帰りなさい、王雅」


「お兄さん、待ってたよ~っ! お帰り~っ!!」

「僕と遊んでっ!」

「私と一緒に遊ぼうっ!」

 口々に言われた。


 ・・・・やめてくれよ、そんなの。
 嬉しすぎて、うっかり泣いちまったりしたら、どうすんだよ、バカ。


 俺は、囲んでくれたガキ共全員を、目一杯抱きしめた。


「ただいま」


 初めてだった。こんなの。
 何時も俺は、機械的に、お帰りなさいませ、お坊ちゃま、としか言われた事がねーんだ。
 こんなに心から俺の事を必要としてくれて、待っていてもらった事なんて、一度だってねーんだ。


 嬉しすぎんだろ。そんな出迎えとか。
 毎日欲しくなっちまうだろ。そんな事されたら。


 どーしてくれんだよ、お前等。


 俺をこんなにしちまって、責任取れんのかよ。



「よーし、全員まとめてかかってこい! 俺様が相手してやる」

「わーい!!」


 ガキ共が走り出した。
 俺も後を追いかけた。


 こんな楽しい毎日が、ずっと続けばいいのにな、って思った。



 
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