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スマイル21
ビジネスチャンス・2
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会社経営するなら、しっかり利益出さなきゃ潰れるってことくらい、解んだろ。
土地だって、苦しくてどうしようもなくて、手放すことを決めたんだろーけど、どうせ花井のヤツに安く買いたたかれたんだろーな。
見るからに人良さそうだもんな、このオヤジ。
美羽みたいに自分が貧乏しても、苦しいって最後まで我慢して言わずに、今までやって来たんだろうな。
・・・・俺の、今後のビジネスに活用できるなら、助けてやるか。
「あの、ちょっといいですか」
美羽と横山が話している間に、割って入った。「工場って、何を作っていらっしゃるんですか?」
「あ、えっと・・・・機械を色々です。ご要望があれば、小さな部品まで作ります」
「突然すみません。俺、こういう者です」会社で使っている名刺を取り出して自己紹介し、横山に渡した。
俺は、どこで誰に会ってもいいように、名刺は欠かさずいつも持ち歩いている。
ビジネスチャンスは、何時やって来るかわかんねーからな。
「聞くつもりは無かったのですが、傍にいたもので、お話が聞こえました。工場が危ないとか・・・・失礼を承知で確認しますが、銀行の融資も無理なのですね?」
「お恥ずかしながら・・・・新しい商品開発のための、設備投資の返済が利益を圧迫していまして、マイナスが続いているんです。・・・・その、銀行の返済が滞っておりまして、もうどうにも・・・・」
「成程。今から、工場行けますか? 製品、見せて頂くことは可能ですか?」
「あ、勿論です。でも・・・・あの・・・・」
「商品が良ければ、俺が買います。顧客になります」
「えっ!?」
「工場をたたむと判断するのは、俺が製品を見た後にしてください。さあ、行きましょう」
俺は横山を促した。
「悪い、美羽。ちょっとこの人――横山さんと話してくるから、ここの片付け、切り上げてもいーかな?」
「あ、う、うん。いいよ」
「ガキ共と遊ぶ約束してたけど、ちょっと延期って言っといてくれ。横山さんの工場、行って来る。話がついたら戻るから」
「王雅、あの――・・・・」
ぐいっと美羽を引き寄せて、耳元で囁いた。「話聞こえてたから、大体察してる。この横山って人、前に施設の土地貸してくれてた、お前と、お前の親父の恩人なんだろ? 俺が助けてやる。でも、製品次第だ。幾らお前の恩人とはいえ、つまんねーモンに金は払えねえからな」
それだけ言って、俺は横山と施設を出た。
工場は車で十分程の所らしいから、横山の車に乗せてもらって、彼の城へとやって来た。
手放そうと思っている横山の工場は、もっとボロだと思っていたが、綺麗に整頓されていた。
精密な部品を扱うだけあり、徹底している。ゴミひとつ落ちていなかった。
作った製品を見せてもらったら、とても小さい部品で繊細なのに、驚く程綺麗に仕上がっている。断面加工したものも見たが、素晴らしい技術だ。
世界に誇れる技術だというのに、ここで潰しちまうなんて、勿体ない。
「横山さん、これは素晴らしい製品ですね。驚きました。是非、俺の新ビジネスに力を貸していただきたい。商品開発に、ご協力頂けませんか?」
「いや、あのでも・・・・もう経営が苦しくて、とても商品開発などは・・・・」
「先ほど話が聞こえてきましたから、御社の経営状況は、承知しています。ご協力頂けるというなら、こちらは投資でお手伝いします。いかがでしょうか? ちなみに、俺個人で投資します。名刺の肩書にあった会社ではなく、個人で」
「個人? でも、私どもが必要とする金額は、設備投資に一億円も使いましたので・・・・そんな金額、とても個人では・・・・」
耳を疑った。
たった一億円程度の設備投資の返済金の都合ができないってだけで、こんな良い工場が潰れちまうのか。追加融資しないなんて、銀行の目は節穴か?
一体この国は、何をやってんだ。こんなに価値ある会社を放置して、潰しちまうのかよ。
税金とか、どーなってんだ? こーいったトコに使うべきだろ。
そうか。ここだけじゃねえな。
折角の技術や商品が、価値あるものが、日本だけじゃなく、世界中にまだある筈だ。
それが、たった少しの金が無いって理由で、誰にも助けて貰えず、ゴミ屑みたいに社会から消えちまうのか。
世界に通用する素晴らしい技術を、どうしてもっと、国や金があるヤツが大事にしてやらねーんだ。
土地だって、苦しくてどうしようもなくて、手放すことを決めたんだろーけど、どうせ花井のヤツに安く買いたたかれたんだろーな。
見るからに人良さそうだもんな、このオヤジ。
美羽みたいに自分が貧乏しても、苦しいって最後まで我慢して言わずに、今までやって来たんだろうな。
・・・・俺の、今後のビジネスに活用できるなら、助けてやるか。
「あの、ちょっといいですか」
美羽と横山が話している間に、割って入った。「工場って、何を作っていらっしゃるんですか?」
「あ、えっと・・・・機械を色々です。ご要望があれば、小さな部品まで作ります」
「突然すみません。俺、こういう者です」会社で使っている名刺を取り出して自己紹介し、横山に渡した。
俺は、どこで誰に会ってもいいように、名刺は欠かさずいつも持ち歩いている。
ビジネスチャンスは、何時やって来るかわかんねーからな。
「聞くつもりは無かったのですが、傍にいたもので、お話が聞こえました。工場が危ないとか・・・・失礼を承知で確認しますが、銀行の融資も無理なのですね?」
「お恥ずかしながら・・・・新しい商品開発のための、設備投資の返済が利益を圧迫していまして、マイナスが続いているんです。・・・・その、銀行の返済が滞っておりまして、もうどうにも・・・・」
「成程。今から、工場行けますか? 製品、見せて頂くことは可能ですか?」
「あ、勿論です。でも・・・・あの・・・・」
「商品が良ければ、俺が買います。顧客になります」
「えっ!?」
「工場をたたむと判断するのは、俺が製品を見た後にしてください。さあ、行きましょう」
俺は横山を促した。
「悪い、美羽。ちょっとこの人――横山さんと話してくるから、ここの片付け、切り上げてもいーかな?」
「あ、う、うん。いいよ」
「ガキ共と遊ぶ約束してたけど、ちょっと延期って言っといてくれ。横山さんの工場、行って来る。話がついたら戻るから」
「王雅、あの――・・・・」
ぐいっと美羽を引き寄せて、耳元で囁いた。「話聞こえてたから、大体察してる。この横山って人、前に施設の土地貸してくれてた、お前と、お前の親父の恩人なんだろ? 俺が助けてやる。でも、製品次第だ。幾らお前の恩人とはいえ、つまんねーモンに金は払えねえからな」
それだけ言って、俺は横山と施設を出た。
工場は車で十分程の所らしいから、横山の車に乗せてもらって、彼の城へとやって来た。
手放そうと思っている横山の工場は、もっとボロだと思っていたが、綺麗に整頓されていた。
精密な部品を扱うだけあり、徹底している。ゴミひとつ落ちていなかった。
作った製品を見せてもらったら、とても小さい部品で繊細なのに、驚く程綺麗に仕上がっている。断面加工したものも見たが、素晴らしい技術だ。
世界に誇れる技術だというのに、ここで潰しちまうなんて、勿体ない。
「横山さん、これは素晴らしい製品ですね。驚きました。是非、俺の新ビジネスに力を貸していただきたい。商品開発に、ご協力頂けませんか?」
「いや、あのでも・・・・もう経営が苦しくて、とても商品開発などは・・・・」
「先ほど話が聞こえてきましたから、御社の経営状況は、承知しています。ご協力頂けるというなら、こちらは投資でお手伝いします。いかがでしょうか? ちなみに、俺個人で投資します。名刺の肩書にあった会社ではなく、個人で」
「個人? でも、私どもが必要とする金額は、設備投資に一億円も使いましたので・・・・そんな金額、とても個人では・・・・」
耳を疑った。
たった一億円程度の設備投資の返済金の都合ができないってだけで、こんな良い工場が潰れちまうのか。追加融資しないなんて、銀行の目は節穴か?
一体この国は、何をやってんだ。こんなに価値ある会社を放置して、潰しちまうのかよ。
税金とか、どーなってんだ? こーいったトコに使うべきだろ。
そうか。ここだけじゃねえな。
折角の技術や商品が、価値あるものが、日本だけじゃなく、世界中にまだある筈だ。
それが、たった少しの金が無いって理由で、誰にも助けて貰えず、ゴミ屑みたいに社会から消えちまうのか。
世界に通用する素晴らしい技術を、どうしてもっと、国や金があるヤツが大事にしてやらねーんだ。
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