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スマイル20
商店街デート・5
しおりを挟む「王雅、お魚好き?」
「あ、ああ。うん」
魚じゃなくて、俺はお前が一番好きだ。だから、どうせ食わせてくれるっつーなら、お前がいい。
メインも、お前。副菜も、お前だ。
さっき睨まれたからな。言えなかったけど。
俺が一番食いたいものを料理してくれるっつーなら、どうせならちゃんと、希望を聞いて欲しいもんだぜ。
「じゃあ、今日の夜のメインは魚料理にしよっか。うーん、何がいいかなぁ」
美羽は魚を見ながら、真剣に悩んでいる。
コレ今、俺の為に悩んでくれてんだよな。なんか、スゲー嬉しいな。
今、俺様の事だけを考えてくれてんだもんな。飯の事だけど、それで十分満足だ。
何か、本当の恋人同士みたいに思えて、更に嬉しくなる。
「あれれ~、美羽ちゃん、カッコイイ彼氏できたんだ? ヒューヒュー、若いっていいなあ」
美羽の後ろに立っている俺を見て、オヤジが野次を飛ばしてきた。
おっ、いいぞ。美羽の奴、何て言うかな。
「おっ、おじさん! 違うわっ、彼氏じゃないし!! この人っ、あの、そう! 新しい保育士なのっ! 土日だけ、施設に手伝いに来てくれてるのっ!」
ずっこけそうになった。
俺は保育士か! 彼氏否定すごすぎんだろ! そんなにイヤか、俺の事!!
「えーっ、そうなの? お似合いで良い感じだと思うけど・・・・あれ、後ろのお兄ちゃん、怒ってるみたいだよ?」
「ああ、オヤジの言う通りだ。俺が美羽の彼氏・・・・イッテ――ェ!!」
美羽の奴、俺様の足、思い切り踏んづけやがった!
このアマ・・・・やってくれるな。
「違うって言ってるじゃない! ヘンな事言わないでよっ! おじさんに誤解されちゃうでしょっ!!」
「俺は、お前の事好きだっつってんのに、全く信用しなくて、意地になって断ってくんのはそっちの方だろっ! 俺は違わねーんだよっ!」
店先でケンカになった。
「はいはい、ケンカしなーい」
おい、オヤジ。ケンカになったのは、お前のせいだろが。
「若いっていいなあ。おじさんもあと二十年若かったらなあ。これでも結構モテたんだよ。ガハハハ」
「プッ、あはは。おじさん、そんなにモテたんだ」
怒ってた美羽が、オヤジの一言にウケて笑い出した。
何で俺様にばっか、怒って来るんだよ。俺の事、そんなにイヤなのかよ。
結構傷つくんだぜ。お前の一言。
「お兄ちゃん、美羽ちゃんの彼氏じゃないの?」
「だから、彼氏じゃないってば」
「でも、美羽ちゃんの事好きだって言ってくれてるなら、いいんじゃないかな。美羽ちゃんに良い男性(ひと)ができたら、おじさんも嬉しい。安心するよ。ほら、美羽ちゃんがキツい事言うから、お兄ちゃんが悲しそうな顔してるよ」
俺に背を向けていた美羽が振り向いた。傷ついた顔してる俺の方を見て、言い過ぎたと思ったのか、ごめん、と謝って来たから、もういい、と言っておいた。
お前にとっちゃ、俺はただの保育士か。
何か、ハッキリ言われると、辛いな。
でも、それだけまだ俺の事、信用してないんだよな。好きになってもいいって、彼氏にしてもいいって、思ってくれてないって事だよな。
めげるな、俺。手に入れるって決めたんだろ。
それに美羽は、スゲー人間不信なんだ。ちょっとやそっとの努力程度じゃ、ダメなんだ。
サトルの時に気づいただろ。あんなに辛い思いを――信じては裏切られ――それをずっと繰り返し続けて来た女なんだ。
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俺は美羽だけじゃなくて、ガキ共の事も大切に思うようになっちまったから、もう、引き返せない。辛くても、突き進むしかねーんだ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、ちょっと」
美羽が魚を物色している間、チョイチョイ、とオヤジに手招きされた。ひそひそ話をしたいらしく、長身の俺に屈んで耳を貸せ、とジェスチャーしているから、その通り耳を貸してやった。
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