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スマイル19
父親・4
しおりを挟む「怖いオッサンは、俺が追い払ったから、もう大丈夫だ! だからお前等、もう泣くな。大丈夫。大丈夫だからな。もう怖くないぞ」
抱えきれない程腕一杯にガキ共を抱きしめ、俺は誓った。
コイツ等を傷つける奴は、俺がどんな手を使っても叩き潰す。
それがたとえ、実の親でもだ。
子供を傷つける親や大人は、早急に引き離して罰せられるように、法律が変わればいいのにな。子供を守るための法律を、作ってやるんだ。俺の力で何とかならねーのかな。
政治家になってそれが実現できるなら、プロジェクトが無事に成功したら、目指してもいーかもな。俺が今進めているプロジェクトが成功したら、きっと、大きな注目を浴びる筈だ。
政治家になるなら、それも利用できるだろう。タイミングとしては良いかもしれない。考えておこう。利用できるものは、何でも利用するんだ。
ただ、もし、政治家になるんだったら、金の力は必要だ。美羽との結婚が反対され、櫻井家と万が一縁が切れた時の事も、ちゃんと考えておかなきゃならねえな。できるだけの俺個人のビジネス展開、今のうちに色々進めておいた方がよさそうだな。
生きていくには、金が必要だ。
ビジネスをするにも、ビッグになるにも、やっぱり金が要るんだ。頭もいるだろう。色んなことを考えなきゃいけねーからな。
幼い頃からこういう世界で生きて来た俺にとっちゃー、持ちうる力が全力で発揮できる、最高のチャンスじゃねーか。
俺は、美羽やガキ共に出逢って、変わったんだ。
暗く寒い、何の温かみもない世界で生きて来た俺の毎日が、楽しく、明るく、色づいたんだ。
だから、お前等の為に、俺は力を尽くす。
色んな目標をもって、高みを目指して頑張ろうと思う。
お前等が毎日、笑って楽しく過ごせるように、
美羽とは違った方法で、俺は命を懸けるぜ――
暫く慰めているとガキ共が落ち着いてきたので、俺は応接室に向かった。
美羽と内藤は既に話を始めていて、内藤は今までの感謝、自分がこうなったいきさつ、サトルを引き取りたい旨、全てを自分の口から美羽に話したようだ。
「お父さんも、ご苦労されたのですね。でも、サトル君にこんな素敵なお父さんがいるなんて、先生嬉しい! 良かったね、サトル君」
内藤の横にちょこんと座っていたサトルは、笑顔で頷いた。
「妻とは裁判します。離婚と、親権確保と、同時に進めます。また、こちらで今までお世話になったお礼は、後日お持ちさせていただきます」
「お礼なんて、結構です」
おい、美羽。お礼って多分、金だろ。
何で貧乏なのに受け取らねーんだよ。
「今までサトル君には、沢山楽しい思い出を頂きましたし、この施設は国から補助も出てますから、お金の事は気にしないでください。これから、裁判なんかもされるようでしたら、お父さんの方に沢山お金が必要になります。だからその分、サトル君の為に使って下さい」
お前・・・・そんな事してっから、貧乏なんだ。金無い癖に、人の心配ばっかりしやがって。
儲けようとか、一切考えてねーだろ。
別に儲けろとは言わねーけどさ。
自分トコだって貧乏で苦しいくせに、優しいんだよ、お前。
決めた。お前が他所から金を受け取らねーんだったら、俺が勝手に援助する。
金を渡すんじゃなくて、毎週末、食材とかお徳用のトイレットペーパーとか、お前が必要だって思うもの、全部俺が支払いしてやる。
週末、商店街で買い物だ。美羽と一緒に買い出しに行くんだ。
重い荷物は、全部俺が持ってやるから。
「お父さん。これからは、サトル君の幸せを、一番に考えてあげて下さい」美羽が、優しく微笑んだ。
「ありがとうございます、本当に・・・・ありがとう・・・・」
内藤は、堪えきれず涙を流した。嗚咽を漏らし、唇をかみしめて泣いている。
良かったな、内藤。サトルの事、見つけることが出来て。
千夏の勝手で大切なサトルを奪われて、ずっと何年も探してたんだもんな。
坂崎から咄嗟にサトルの事庇ったお前は、本物の父親だったぜ。
さっき、お前にサトルを返したくないとか、一時の感情で卑怯な事思っちまって、悪かったな。
やっぱり、子供は大切にしてくれる親の傍で過ごした方がいい。
淋しくなるけど、仕方ない。
美羽は何時も、こんな風にガキ共の事を思っているんだろう。
毎日同じ時を過ごして、ずっと愛情掛けてんだ。
俺以上に淋しいと思いながら、それでもガキ共の幸せを願いながら、親元に送り出してんだな。
「サトル、良かったな。親父が見つかって」俺はサトルに声をかけた。
「ウン! お父さんを連れてきてくれてありがとう。お兄さんのおかげだねっ!」
「俺は何にもしてねーよ。お前が頑張って生きてっから、イイコトあったんだ。お前の力だ。あと、怖いオヤジの方は俺に任せとけ。もう二度とサトルに近づかないよう、お仕置きしておくから」
「ホント!?」
「ああ、ホント。どんなお仕置きにして欲しい? 今までの仕返ししてやれ。俺がお前の代わりに、しておいてやるから」
「えーっ、じゃあ、んーっと・・・・お尻ペンペン! 悪い子はめーってするんだよ」
プッ、と噴き出した。お尻ペンペンはウケる。
「お前、面白いな。解った。お尻ペンペンしておいてやる」
「あ、でも、あんまり痛くしたらかわいそうだから、ちょっとでいいよ」
「サトル・・・・」
「痛いと、悲しいもんね!」
お前、自分がパニックになって暴れるほど辛い目に遭わされたっつーのに、坂崎の奴に、そんな優しい事言うのかよ。
愛しくなって、サトルを抱きしめた。「お前、カッコイイな。最高の男だ」
「そお?」
「ああ、最高だ」
だからさ、これから内藤と幸せになれ。
お前が施設を出てっても、俺はお前の味方だから。お前が困ったら絶対助けてやるから。
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