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スマイル18・変化
しおりを挟む「お母さん、お久しぶりです。サトル君の面会はまだ先の筈ですが」
俺とサトルの前に、さっと美羽が立ちはだかった。「今日はお約束、していませんよね?」
――母親、か。
成程。このケバい女がサトルの産みの母親っつーわけか。
サトルを、マサキ施設に預けてんだな。
更に、この雰囲気からして、あまりいい状況ではないということは解る。サトルも俺の後ろに隠れるっつーことは、母親にはあまり会いたくないと思ってるのだろうと推測する。
この雰囲気から察するに、サトルの事を可愛がって考えている母親とは思えない。
「約束はしてないけどさぁ。母親が子供に会いに来ちゃダメなワケぇ?」
「ダメです。規則ですから。こちらはきちんと責任をもって、サトル君をお預かりしておりますので。勝手に会いに来られては困ると、もう何度もご説明をしています」
「真崎先生、いいじゃないですか、固い事言わないでちょっとくらいさ。あら、ステキな先生が入られたの?」
美羽の後ろに立つ俺の姿をジロジロ値踏みするように見て、サトルの母親は言った。「あらまぁ、イイ男ねー。ね、真崎先生、これはマズいんじゃないですかぁ~?」
わざと腹の立つ言い方をする母親を、美羽は俺の時のように剥き出しの感情でものを言わず、違って穏やかに――いや、静かに怒ってるな――冷ややかに対応している。「何がマズいのでしょうか?」
「えーだってぇ・・・・ねぇ。男と女が同じ施設にいるんですよぉ? すること、なさるでしょ? 子供たちにとっては良くないんじゃないですかー?」
「彼は私の知人です。職員ではありませんし、施設内で間違いもございませんので、ご安心下さい。ですが、同じ施設に男性職員と女性職員が居ることに、何か問題でも? そういう施設、沢山あると思いますが」
俺との間違いは無いのか。こんな時なのにとても残念に思う俺は、最低だろうか。
「それは問題でしょ~。まあ、子供の前でいう事じゃありませんけどぉ」
「承知しました。マサキ施設では、独身の男性職員は極力雇わないように致します。仮に雇ったとしても、既婚者や、間違いの起こさないと私が判断した方に限定致します。これで問題ありませんね? では、次の面会お約束の日にお越しください。失礼します」
「待って、待ってよっ、真崎先生! 私が困るのよお。助けて、ねっ?」
サトルの母親が、美羽の腕を掴んだ。「サトルを連れて帰らないと、あの人に――」
「お母さんっ! また同じことを繰り返されるのですかっ! 以前、私と約束しましたよね? もう二度とサトル君を傷つけないって! サトル君を連れて帰るとどうなるか、お母さんだって、お分かりになるでしょう? 貴方達のお金のためなんかに、サトル君は渡せません。たとえ、実の母親にでもですっ!!」
美羽はサトルの母親を振りほどき、俺が見た事も無い厳しい顔と声で母親を一蹴した。
「みんな、びっくりしたね、ゴメンね。さあ、行きましょう」
ぱっと笑顔に切り替え、美羽はサトルの母親を無視して、ガキ共を施設に入るよう促した。
サトルは俺の後ろに隠れて、俺のジャケットの裾をぎゅっと握りしめている。俺はサトルに、大丈夫だからと声をかけ、母親から守るようにして進んだ。
「サトルの母親と話あるんだったら、俺がガキ共をもう少し面倒みとくから、気にせず話せよ」
美羽に囁いたが、大丈夫、もういいの、と首を振った。別にサトルの母親とは、特に話すことも無いのだろう。
なんか、エライ場面に出くわしてしまったな。
やっぱ、施設っつーのは、大変なんだな。
他人のガキを預かってんだもんな。預けてる親の方は、都合でたまに施設にやって来て、今みたいにモメ事起こしたりするんだな。そんな親ばっかじゃねーとは思うけど、皆ワケアリなんだ。
とりあえずサトルを連れて施設に入ったので、帰るタイミングを失ってしまった。
ま、今日は休みで仕事も無いから、別に何時に帰ろうが俺は構わねーからな。
それより、もう少し居てやった方がいいのかな。俺なんかが居てもしょうがないと思うけど、恭一郎も居ないし、美羽一人じゃ心細くねーかな。
少しでも、支えになれねーかな。
それにしてもサトルのヤツ、大丈夫なのか。なんか震えてんぞ。
「おい」
ポン、とサトルの肩を叩いたら、ビクッ、と小さな体を震わせて、ごめんなさい、ごめんなさい、もうしません、と髪をかきむしり、泣き叫びながら暴れ出し始めた。
――これは、パニックを起こしてる!
小さな腕を取り、暴れ出したサトルを、ぎゅっと強く抱きしめた。
「サトル、大丈夫だっ。俺だ、王雅だ。何も怖くねーぞ。大丈夫、お前を苦しめる奴等から、俺が守ってやるから。だから、しっかり俺につかまってろ」
背中をかきむしられたが、そんな事どうでも良かった。それより、サトルが壊れてしまわないか心配だった。俺は、サトルに必死に声をかけ続けた。
昨日、気になっていたんだ。風呂に入れた時、初めて裸のガキ共を見て驚いた。ガキ共の半分くらいが、どこかにアザがあった。しかも、裸で無いと解らない、服で隠れて目立たない所にだ。
タバコの跡もあれば、火傷の跡、殴られた跡、様々だった。
それは、殆ど目立たなくなっているものもあれば、まだ癒えている最中のもあった。
でも、全員元気で笑顔なんだ。辛い過去を持っていても、それを乗り越え、誰も卑屈なんかになっちゃいねー。
それは多分、美羽がガキ共に、目一杯の愛情をかけて育てているからだ。美羽の優しい愛情が、ガキ共に届いているからだ。
昨日それに気づいた時、俺は震えた。美羽は、本当に凄い女だと再確認した。
どうして他人にそこまで出来るのか、俺には理解できない。
でも、けなげに生きてるコイツ等を見ていると、守ってやりたくなる。愛したくなる。
親でも何でもない、他人の俺でさえこんな気持ちになるっつーのに。本当の親は、自分の血を分けた子共の事を、一体どう思っているんだろう。
サトルの怯え方は異常だ。きっと、マサキ施設に来るまでに、死ぬほど辛い目に合ったんだろう。こんなにまだ小さいのに。
あの母親にやられたのだと思うと、怒りがふつふつと湧いてくる。
許せない気持ちが、心に溢れてくる。
美羽があの女の話も聞かず門前払いをした事に、納得がいった。
「サトル、大丈夫だからな。俺がついてる、安心しろ。だから、もう泣くな」
「おに・・・・さん・・・・っ」
「大丈夫。もう怖くねーから。誰もお前を傷つけたりしない。酷い事するヤツは、ここにはいない。美羽先生や俺が、お前を守ってやるから。大丈夫、大丈夫・・・・」
震えるサトルの背中を撫でていると、次第に落ち着いてきた。随分時間が経ったと思う。
それだけ、恐怖に心が支配されようとしていたんだ。
怖かったんだな。今までずっと、辛かったんだな。
それでも頑張って立ち直って、お前、小さいのにエラいな。スゲーな。
俺は、今まで自分がいかに恵まれて育ったのか、どれだけ甘ったれだったか、よく解った。
独りで辛く、淋しい思いをしていたと思っていたが、それは大きな間違いだった。
こんな酷い暴力で怯えた事も無いし、実の親を畏れることも無かった。
家は裕福だったから、食うものに困る事も無かった。
コイツ等に比べたら、本当に贅沢な事だ。
でも、俺は知らなかったんだ。こんなに苦しい思いをして生きているガキ共が居るって事を。
「サトル君、大丈夫? 僕達もついてるよっ」
リョウがサトルの傍にやって来て手をり、にっこり笑った。「サトル君、一緒に着替えとかお片付けしよう。終わったら、みんなで遊ぼう!」
「うん、リョウ君、ありがとう。お兄さん・・・・ありがとう」サトルは涙を拭って笑顔を見せた。
「良かったな、サトル。お前、いい友達いるじゃねーか。マサキ施設だったら、幸せに暮らせるから、安心しろ。お前が困ったら、俺様が守ってやるから」
優しく髪を撫でてやると、サトルは何時もの笑顔で俺を見て、リョウと手を取り合って歩き出した。
サトルの小さな背中を見ていると、切なくなった。
こんな小さなガキが、歯を食いしばって涙を堪えて必死で生きてんのか。マサキ施設は、こんな場所なのか。
俺は最初、施設の立ち退き要請に来たんだ。こんな大切な場所を、お前たちから取り上げようとしていたのか。
最低だったな、俺。本当にごめん。
知らなかったんだ。お前たちにとって、この場所がどれだけ大切かって事。
改めて思う。美羽、お前は本当に凄い。
たった一人で、ガキ共の為に、この場所を今まで身体を張って、命を懸けて守り続けてきたのか。
俺の想像の遥か及ばない程の辛く苦しい事が、今までどれだけあったんだろう。
まりなが教えてくれたように、人間不信に陥る程、酷い裏切りも沢山あったんだろう。
俺は今まで、本当はお前に軽々しく触れたりすることができない、最低な男だったのに。
それなのに勝手に気持ち押し付けて、お前の事――・・・・
「王雅、サトル君の事、本当にありがとう。ちょっと、話す時間ある? もう帰らなきゃいけない?」
「ああ、時間あるから、構わねーぜ」
美羽。お前の顔、まともに見る自信無い。俺、今まで本当に最低だったって、気づいてしまったから。
お前に愛して貰える資格なんて、きっと無い。
――でも、違うんだ。今までの最低だった俺とは、もう違うんだ!
そんな言い訳じみた事を言った所で、俺がやってきた事は何も変わらない。
どうやってお前の顔、見たらいーんだよ。
二人でサトルの様子を見に行くと、さっきの事など何事も無かったかのように、皆の輪に溶け込んでいた。誰もサトルが暴れた事なんか、気にもしちゃいなかった。
サトル本人も、リョウと一緒に遊んでる。
ガキってのは、スゲーな。強いな。
込み入った話だから美羽とは応接室で話すことになり、例のごとく俺達は向き合って座った。
「王雅、さっき貴方の背中、サトル君がかきむしっちゃったでしょ。大丈夫? ごめんね。手当するわ」
「問題ない。大した怪我もしてねえと思うから、大丈夫だ、気にすんな。それより、話って?」
「うん、ごめんね。王雅の背中が傷ついてて、もし酷くなったらいけないから、手当しようと思ったんだけど」
「だから、気にすんなって」
「わかった、ありがとう。もう気にしないわ。あの・・・・サトル君ね、王雅の事、本当に信頼していて、大好きなお兄さんだ、っていつも言うのよ。この前も桃園に連れて行ってくれた時、ハチから助けてくれたでしょ? 今回お泊り保育に王雅の事を誘いたいって言いだしたのも、サトル君なの。まあ、サトル君だけじゃないけどね。ガックンやリョウ君――ううん、みんな王雅の事が大好きだし・・・・だから、今回迷惑かけちゃって本当に申し訳無いけど、また、ここに来て欲しいの。あの子たち、貴方が来るのとても楽しみにしてるの。だから・・・・」
「もう来るな、って言われんのかと思った」
「えっ・・・・?」
「俺、今まで最低だったなって思って。お前が大切にしてたモン、最初は取り上げようとしてただろ。施設の立ち退き要請に来たんだぜ? 成り行きとはいえ、お前の事情なんて知らなかったしな。でも、昨日一緒にガキ共と過ごしてスゲー楽しかったし、泊りにも誘ってくれて嬉しかったんだ。それで、解った。お前にとってマサキ施設が、ガキ共が、本当に大切なモンだってな。解ってたつもりだったんだけど、それ以上だった。だから・・・・今まで悪かったな、と思って。ごめん」
「そんな事気にしてたの?」美羽は笑った。「施設の立ち退き話なんて、いつの話よ。前はそうだったかもしれないけど、今は違うじゃない。誰も気にしてないわよ。私も忘れてたくらいだもん。つまらない事、いつまでも気にしなくても大丈夫だから。ねっ?」
――美羽には、敵わねーな。
俺がスゲー気にしてたこと、何事もなかったように一蹴して、笑って見せるんだ。
強くて優しいな、お前。
俺はやっぱり、お前が好きだ。
お前が今すぐ欲しい。スゲー、死ぬほど欲しい。
だけどお前の同意なしに、勝手に手を出したりするのは、もうやめる。
たまにしちゃうかもしんねーけど、極力我慢する。
そんな我慢したことねーから、出来るかわかんねーけど、頑張る。
「それよりね、王雅。サトル君の事なんだけど、最初ココに来た時は、さっきみたいに酷いパニックを起こす事が多くて、夜も寝られない事が多かったのよ。でも、サトル君頑張ったの。すっごく頑張って、やっと立ち直ったところなの。ようやく沢山、笑ってくれるようになったわ。でもね、忘れたわけじゃないの。お母さんを見て、きっと、辛い事を思い出しちゃったのよ。あの人――サトル君のお母さんね、子供の為の手当てが支給される近辺になったら、サトル君を連れて帰って手当のお金貰おうとして、さっきみたいに勝手に施設に来ちゃうの。もう、前からよ」
「手当って? 幾ら出るんだよ。そんな貰えるもんなのか?」
「手当っていうのは、子供の為に国から貰えるお金よ。確か・・・・四か月に一回、数万円かな。まあ、生活も苦しいだろうから、欲しいのは解るけど」
驚いた。貰えるのは、たった数万円なのか。
目の色変えてたから、最低でも百万くらいは貰えるのかと思ったけど・・・・数万円か。
正直、大切な子供を傷つけてまで貰う金なのか。
俺は金銭感覚がズレてるから、それについては黙っておくことにした方がよさそうだ。
美羽達の数万円の価値が、どれほど凄いものなのか、俺には全く解らないからな。
「以前、懇願されて仕方なくサトル君を一度、期限付きで一時帰宅させたことがあるんだけど、家で酷い暴力を受けて、また、施設に戻ってきたのよ。絶対にサトル君を傷つけないって、私とあんなに約束したのに――お母さんの言葉を信じた事、後悔したわ。だからもう、きちんとした手続きを踏まない限り、一時帰宅もさせない、二度とサトル君を返さない、って決めたのよ」
そうか。そんな事があったんだ。
お前が人間不信になるのも、無理ないな。納得だ。
自分の子供みたいに可愛がってるサトルを、真剣に約束して、しかも実の母親に信じて託したっつーのに、そんな風に傷つけられたんだ。
多分、サトルだけじゃないな。もっともっと、ずっと前からこういった事の繰り返しがあったんだろう。
信じて、裏切られて、その度にお前の心もスゲー傷ついてきたんだな。
だから、誰も信じたくない、欲しくないって、そんな風に思うようになっちまったんだな。
俺は違うんだけどな。でも、お前に信じてもらうのには、時間がかかる理由も解った。仕方ないと思う。
こんな辛い事を何度も繰り返し経験してたら、神経もおかしくなるだろ。
でも、俺はあきらめないぞ。お前が信じてくれるまで、お前をずっと好きでいてやるから。
「そうだったんだ。サトルにそんな辛い過去があったんだな。明るく元気だから、全然気が付かなかった」
「そうなの。ここ暫く平気だったんだけど、お母さんが来たから、辛かったことを急に思い出しちゃったんだと思う。だから、サトル君が凄く信頼してる、王雅が居てくれて良かったわ。私一人じゃ、あんな風に治める事が出来なかったと思う。サトル君を助けてくれて、本当にありがとう! 王雅にお礼、ちゃんと言っておきたかったの」
頭を下げられた。
「言っただろ。お前が困ったら、俺が助けてやるって。俺を頼れ、美羽。遠慮するな。一人で抱え込むには、限界あんだろ」
「・・・・王雅、ありがとう」
おっと。ここは、抱きしめてもいいところだよな。今、良い雰囲気なんじゃね?
ちょっと、俺様にときめいたりしてんじゃねーのか?
美羽の心が読めたらいーのにな。
とりあえず、キスは止めとくから。
ただ、向かい合ってるから、遠いんだ。抱きしめたくても、テーブルが邪魔だ。
折角のチャンスなのに、勿体ない。
かといって、今から隣に移動するのは間抜けだな。仕方ない、我慢するか。
今度から話をするときは、さっと抱きしめられるように、隣に座るようにしよう。
・・・・でも、待て。何もない状態から突然、狭い応接ソファーに横並びに座るっつーのも変だよな。絶対、向こう側に座れって言われるよな。どーすりゃスマートにできるんだろう。
俺は結構つまらない事で、マジに悩んだ。
「王雅も仕事で忙しいと思うけど、無理しない程度でいいから、また、少しの時間でもいいから、子供たちに会いに来てくれる? あの子たちの為に、お願い」
「美羽は?」
「えっ?」
「美羽は、俺に会いたくないのかよ」
「なっ・・・・何言ってんのよ。べ、べつに、会いたくな・・・・あ、ううん、何でもない、違うの。わ、私も・・・・王雅に会いたいわ! だから、来てくれる?」
「お前な・・・・」
今、俺に会いたくないって言おうとしただろ!
慌ててガキ共の為に、取り繕うように会いたいとか言いやがって!
クソッ。
でも、そんな嘘でさえ嬉しくなる俺も、病気だな。どーかしてるぜ。
悔しいから、条件出してやる。
「わかった、いいぜ。お前の頼み、聞いてやっても」
「うん、ありがとう。凄く助かるわ」
「そうじゃなくて、来て欲しいっつーなら・・・・何か、礼でもしてもらいてーんだけどな」
「えっ、お礼しなきゃいけないの? ウチは貧乏だから何も無いけど・・・・来てくれたら、お茶くらい出すわよ」
「バカ、違うっつーの。そんなんじゃなくて、お前からキスしてくれたら、来てやってもいーぜ。俺に会いたいんだろ? 俺への礼だよ。それで手を打ってやる」
「なっ・・・・何言ってんのよ! そっ、そんなコト出来るわけないでしょっ!!」
「昨日、俺にキスしてくれただろ」
――うたた寝した時に見た、俺の夢の中でだけどな。
そう言った途端、美羽は真っ赤になって慌て始めた。
「なっ・・・・そ、それは・・・・だから・・・・あ、あの、さっき! そう、さっき! サトル君のお母さんに、施設で間違いが無いように気を付けるって言ったところだし! ここでそんなコトしちゃダメなんだから! 見つかったら困るでしょっ!」
「施設じゃなきゃいーのかよ。じゃ、外行こうぜ」
「ちがっ、ちがう・・・・そうじゃなくてっ・・・・だから、あの・・・・もうっ!!」
何だ、美羽のヤツ、かなり動揺してんぞ。
あ、そういえばまりなに言われたんだ。あんまりからかったり、強引にすると、美羽は意地になるって。
でも、意地になってるっつーより・・・・どちらかといえば、かなり焦ってるよーな・・・・?
あ、違うぞ。コレ、焦ってんじゃなくて、やっぱ、嫌なんだな。俺にキスすんの。
何もこんなに嫌がらなくてもいーじゃねーか。ちょっとショックだ。
このまま強引にキスさせるように持っていきたいところだけど、この様子じゃ止めといた方がよさそうだ。嫌われたら困る。
我慢だ、我慢。
・・・・って、さっきから我慢ばっかじゃねーか!
こんなんで、身体持つのかよ!?
自慢じゃねーけど、我慢なんて俺様は殆どしたことねーんだ!
「そんなに嫌なら、も、いーよ。じゃ、キスの代わりに今日、お前の手料理食って帰る事にする。夕飯、何か作ってくれよ。ガキ共と一緒に食いてーな」
仕方ないから無難な礼をさせることにした。キスは残念だが、手料理も悪くない。
それに、夕飯食って帰れるなら、もう少し一緒にいれるだろ。
こんな事考えちまうくらい、何で好きなのかな、お前の事。
出来るならこの腕に閉じ込めてしまって、メチャメチャに愛して、一生何処にもやりたくないんだけどな。
「あ、そ、そうね。それがいいわ。お礼って感じがするし! じゃあ、早速用意するわね。準備できるまで、ゆっくりしてて!」
美羽は慌てて応接室を出て行った。
何だアイツ。動揺しすぎじゃね?
キスのひとつくらい、してくれたっていいのに。
いや、でも、無理か。普通はキスなんて、好き合う奴等のすることだもんな。
現在のところ、俺の一方的な片思いだし。今までは俺が勝手に、美羽に対して散々キスしまくってただけだもんな。同意も取らずに。
美羽からキスしてくれる事なんて、あんのかな。俺の事好きになってくれたら、してくれんのかな。
とりあえず、考えてみた。
美羽の好きなタイプはどんな男だろう――前まで惚れてたくらいだから、恭一郎みたいなヤツってことか。俺はそんなタイプじゃねーし、恭一郎みたいにはなれねーから、考えてもムダだな。
それよりも、俺は俺なりに頑張るしかないって事だよな。
お前に認められるって、難しそうだな。
でも、お前が手に入るっつーなら、俺はどんなことでもやってみせる。
誰にも渡したくないんだ、美羽。
お前が、こんなに好きなんだ。
だから、待っててくれ。俺が、お前に認められるような男になるまで、他の誰も好きにならないでくれ。
頼むから、誰か他の男に、振り向いたりしないでくれよ――・・・・
昨日は俺の提案通り、夕飯をマサキ施設で馳走になった。
美羽と女子共が中心になって拵えてくれた、手作りのハンバーグを食べた。美羽は料理が上手いから、何てことない家庭料理のハンバーグでも、非常に美味かった。
また、ガキ共との食事は楽しかった。大勢で食べるって、いいな。
それにしても、料理上手な女は良い。仕事で疲れて帰ってきて、優しい笑顔と美味い飯があったらさぞ一日の疲れも吹っ飛ぶだろう。更に夜の情事もあれば、尚良しだ。
早く嫁に欲しいぜ。お前がいいっつーなら、俺は今日にでも結婚できるぞ。
余談はさておき。
昨日、サトルの親の事、興信所に頼んで調べておいたんだ。
内藤千夏(ないとうちなつ)、三十五歳。自宅近くのスナック勤め。同棲している男アリ。男の名前は坂崎英治(サカザキエイジ)――こいつが曲者だ。何度も逮捕歴がある。資料に添え付けの写真を見ると、チンピラみたいな容姿だ。暴力団関係者かもしれねー。危険な男だ。
ただの同棲男――ま、内縁の夫みたいなもんだろう。坂崎は、サトルの本当の父親ではない。この男、傷害の前科が何度かあるから、かなり暴力的なのだろう。サトルを酷い目に合わせたのは、この男に違いない。
千夏までサトルに手を出しているかどうかはわかんーけど、アイツが千夏を見てあんなに怯えるくらいだから、手を出していなかったとしても、同罪だろう。
昨日、千夏がサトルを連れて帰れなかったから、もしかしたら坂崎が施設にイチャもんつけに行くかもしんねーな。
美羽一人だけで大丈夫かな。俺が傍に居てやれたらいーけど、仕事で行けねーからな。
念のためSPをつけておいてやろうと思い、朝から施設に派遣しておいた。
暫くSPに施設を見張らせておこう。
美羽には一応連絡入れておこうと思ったが、取り越し苦労かもしんねーし、余計な心配かけたくねーから、連絡は控えた。
何かあれば、SPから連絡あんだろ。
俺は再び週末の土日を休みにするために、できるだけ平日に仕事を詰め込む事にした。
プレゼンも終わったし、土日は基本的に出張や会議なんかも無いから、スケジュール調整は問題なくできそうだ。今までは別に何時が休みでも構わなかったから、結構土日も仕事したりしてたからな。
でも、今は違う。
大義名分を貰ったんだ。
俺に会いたいと美羽にも一応言わせたし、ガキ共は俺様に会いたいっつってるワケだし、絶対休み取るぞ!
定時までの仕事は早めにこなし、明日の分の半分くらいまでは仕事を終わらせたところで、気が付けばもう夜だ。本当なら帰れるんだが、今日はもう一件仕事がある。今から、先週のお泊り保育のスケジュール調整でずらしてもらった接待があるんだ。
接待といえど、重要な話をするわけじゃねえ。他の会社の重役や役員共を、飲みに連れて行って、喜ばせなきゃいけねえんだ。
仕事の話なら、昼間に互いの会社で会議すりゃいーだろが。何でわざわざ飲みの席ですんだよ。どうせ、若くて綺麗な女が目当てだろ。
もう、マジでめんどくせーな。飲み代は俺が払っておくから、勝手によろしくしてくんねーかな。
・・・・って、ダメだろーな。行かなきゃ。
重い腰を上げて、本当に久々に接待(飲み)に出かけた。
女だけじゃなく、酒も欲しいと思わない――煌びやかな世界で生きていたハズなのに、俺にはもう何の魅力も感じないんだ。
それより今から施設に行って、美羽が作ってくれた飯をガキ共と一緒に食う方が、絶対楽しいと思う。
俺が今から行ったら、アイツ等喜んでくれるかな。驚くかな。
飯食ったら、風呂も入れてやって、寝るまでいっぱい遊んでやるんだ。俺が帰るっつったら、きっと、リョウやサトルなんかが、帰ったらダメ、一緒に寝ようって言うだろう。仕方ねーから、泊まってやるよ、みたいな。
ホラ、考えただけで楽しくなる。
でも、今から飲みに行くと考えると、超憂鬱な気分になる。行きたくなくて、足取り重くなる。何故だろう。今まで当たり前だったのに。
それに、どうせ飲むなら、美羽の傍で飲みたい。アイツの顔見ながら、少しくらいのウイスキーを嗜む程度が飲めたらそれでいい。っつーか別に、酒なんか無くていい。
美羽やアイツ等が、俺の傍に居てくれるだけでいいんだ。
ま、それだけ俺が変わったんだな。
アイツ等と過ごす楽しい世界を知ってしまったから、もう俺が住んでいたこの世界は、色あせて見えるんだ。クラブやラウンジなんかも、仕事で使う以外で、俺が自分から進んで来ることも無いだろう。
今日の接待で使う、Club 雅-miyabi-に到着した。美羽と出逢った、俺の名前が一字入っているというだけで、贔屓にしていた店だ。もう既に過去形なのは、美羽と初めて出会ったとき、俺に水かけてビンタのあれ以来、来てないからだ。
この店がどうこういうワケじゃない。美羽に出逢ってから、店に行くこと自体が殆ど無くなったんだ。
入店したら、俺の姿を見つけたママが真っ先に飛んで来て、前の美羽のビンタの事を謝られた。随分前の話なのに、俺がまだ怒っていると思っているのだろう。もう、何とも思っちゃいねーのに。
だから、別に怒ってないから気にすんな、店に来れ無かったのは、仕事が忙しかっただけだ、と笑っておいた。昨日、美羽が俺にしてくれたみたいに。
あ、成程。美羽もこんな感じだったのかな。
俺がスゲー気にしてたことなんて、アイツに取っては何でもない事だったんだろう。
それより、今の俺をちゃんと見てくれてる。ガキ共の為に必要としてくれてるんだ。懐が広いんだな。
っつーか、そんな女に惚れちまって、今も振り回されてんだよな、俺。
未だ自分のモノに出来てないなんて、今までの俺を知る人間には、絶対に言えねーな。これまでは、どんな女でも手に入れて来たっつーのに。
でも、それは勘違いだった。今までは、金の力でモノを言わせてきただけなんだ。
それが使えない今、一人の男としての魅力が足りないんだな。情けない事この上無い。
いつものVIPルームに入ると、接待をしなくちゃいけない奴等は、まだ誰も来ていなかった。
食事までは流石に付き合うのがしんどいから、遠慮したんだ。今頃近くの料亭で食事でもしてんだろ。そろそろ来るとは思うけど、俺が来るのが早すぎたかな。
ふかふかの革張り高級ソファーに座ると、身体が沈み込んだ。そこから見える、繊細な細工の施されたシャンデリアが、豪華な店内を妖し気に照らしていた。
なんか、つまんねーな。
俺はこんなつまんねー世界でずっと生きて来たのか。そりゃ、退屈にもなるハズだ。
だから、刺激を求めてあちこち彷徨ってたんだ。
フラフラしてた俺を、美羽がビンタで目覚ませてくれた、ってか。何か、笑えるな。
それより、早く週末になんねーかな。今後、土日は可能な限り全部休み取ろう――そう思ってたら、リョウコがやって来た。俺のセックスフレンドだった女だ。身体の相性が良かったってだけで、関係続けてた女。
あんま会いたくねーな。前に誘われた時、断って以来だ。
どの店でもそうだが、俺には特定の担当の女は居なかった。
面倒だから、作りたくなかったんだ。束縛とかされちゃ、たまんねーからな。
ただ、そういったセフレの関係もあったから、売り上げ貢献のためにも、そこそこリョウコを贔屓にしてたから、ママの奴がリョウコを他の席から呼び戻して、俺の席につけたんだな。
店が賑わう今の時間に、店で人気のリョウコが他の席にも付かず、フリーとは考え難いからな。
「久しぶりね、王雅」
相変わらず美人だ。切れ長の目に、黒くて艶のあるサラサラの腰辺りまであるロングヘア。
纏っている上品な緑のロングドレスは、大胆にスリットが入っていて、綺麗な白い足が見えている。更に、V字に開いたドレスの間から見える胸元がセクシーだ。
今までだったら、それなりに男としての欲望が刺激され、いい気分になったものだが、今はもう、何とも思わない。
リョウコは俺みたいな若い男だけじゃなく、さぞかしオッサン共にもモテるだろうな。
妖しいエロティックな雰囲気が、彼女の魅力だ。何を考えているか分からないところも魅力だと思う。
普通の男が彼女にのめりこんだら、多分破滅すんだろーな。
「ああ。久しぶり」軽く会釈した。
「全然お店にも来なかったけど、仕事、忙しかったの?」
「うん、まあな」
「ねえ、久しぶりに・・・・今晩、どう? あ、お酒、何時ものでいい?」
夜の方、誘われちまった。どう断ろうかな。
「ちょっと疲れてるから、酒は薄めにしてくれ。っつーか、今は水でいい。接待終わったら、帰る」
「珍しいのね。了解」
リョウコは俺のすぐ横に座り、身体をくっつけて来たが、もう何のトキメキも起こらない。
もしこれが、同じドレスを纏った美羽だったら――考えるだけで、ドキドキしてきた。
本物だったら、俺の心臓は爆発するほどに高鳴るだろう。もしかしたら、心臓破裂して死んじまうんじゃねーか。
同じ女でも、こんなに違うのか。好きになるって、スゲーな。
解ってたけど、再確認した。やっぱ俺、美羽じゃなきゃいらねー。欲しくない。
「あのさ、リョウコ。もう少し離れてくんねーかな」
「別にいいじゃない。まだ誰も来てないし。久々に二人きりなのよ」
「そういう問題じゃないんだ。俺がイヤなんだ。俺、好きな女が出来た。もうそいつしか欲しくないから、二度と俺の事、誘わないでくれ」
「勝手な男」リョウコは顔色ひとつ変えずそう言った。
「前からだろ」
「そうね、そうだったわね。解ったわ」
リョウコは少し俺から離れて、手際よく作ったチェイサーを前に置いてくれた。
「ねえ、貴方が好きになる女性って、どんな女性なの? 冷徹な王様でも、恋をするのね。貴方みたいな冷たい男は、誰も好きにならないと思っていたけど」
「どんな女って言われてもな・・・・俺には勿体ない無いくらいの、スゲーいい女さ」
まだ片想いなんだけどな。でも、これは黙っておこう。俺の片想い中だ、とか言ったら、流石のリョウコも顔色変えるだろう。切れ長の目をちょっとくらい開いて、驚いた顔を見せるんだろうな。
なんか、そう考えただけで楽しくなった。
「ふうん。何だか楽しそうね」
「ああ、楽しい。毎日楽しいんだ。こんなに楽しいの、初めてだ」
俺は笑った。美羽の事やガキ共の事を考えるだけで、こんなに笑えるようになったんだ。
リョウコは俺の顔を見て、切れ長の目を大きく見開いた。かなり驚いているようだ。
一体、何に驚いているんだろう。美羽に片想いしてるとは言ってねーぞ。
でも、お前のすました顔がそんな風になるのは、俺も初めて見た。
「驚いた。王雅、変わったわね。貴方のそんな嬉しそうな顔、初めて見たわ」
「うん。変わったと思う。こんなに楽しい毎日、初めてなんだ。ドキドキして楽しいんだ。生きてるって感じる。好きな女や大切にしたいものが出来るだけで、こんなに違うんだ。だからさ、お前も早くそういう男、見つけろよ。お前の今の顔、普段のすました顔よりずっといいぜ」
「そう」
リョウコは、再びすました顔に戻った。
そんな風に会話をしていると、VIPルームにゲストが到着し始めた。
今回プロジェクトの為の建設請負業者の重役や、役員達だ。軽く挨拶をして、今後の打ち合わせ――はそこそこに、選りすぐりの美人ホステスと、よろしくし始めるオッサン共。
こっそりため息をついた。ホラ、俺なんか居なくても別にいーだろ。何の話してんだよ。下品な下ネタでじゃ、今時笑えないって。
ホステスの連中も、仕事だからお前等の下世話な話に合わせてるだけっつーのが、わかんねーのかよ。
結局プロジェクトの話なんて、殆ど進まねーじゃねーか。思った通りだ。
だから昼間に会議すりゃーいーんだよ。来なくていいんだ、こんな場所。俺も来たくなかったし。これだったら、会社で残業して明日の分の仕事を片付けてる方が、遥かに有意義だ。
黙って微笑みを絶やさないように気を付けて人間ウォッチングしていると、俺も前まであんなだったのかな、と思う。やってること、目の前のオッサンとあまり変わらねー気がしてきた。
全然ダメだな。もっとイイ男にならなきゃ、美羽は振り向いてくれねーぞ。
そんな風に思っていると、割とスマートに飲んでいる細身のグレーのスーツを上品に着こなした、年齢は四十歳位だと思われる、中年の役員の男と目が合った。そういえばさっき、名刺交換したんだっけ。内藤勝也(ないとうかつや)って名前だったな、確か。
ちょっと失礼、とホステスに断って自分の飲んでいたグラスを持って、内藤は俺の傍までやって来て、横に座った。
「今回のプロジェクト、櫻井さんが考案したと伺いました。いや、素晴らしいですね」
「どうも、ありがとうございます」
そのプロジェクトプランの出来栄えは、当然だ。
なんせ、お泊り保育の休み取得の為に、命懸けて必死だったからな。
生まれて初めて死ぬ気で考え、仕上げたプランなんだ。
初めて好きになった女と、甘い一夜を過ごせると信じて疑わず頑張ったっつーのに、フタを開けてみりゃ全くお門違いで、結局何もできなかった――という俺の間抜けな内情を話すと、目の前の男は驚くだろうか、それとも笑うだろうか。
「僕は、都合で暫く東京を離れていましてね。解らない事が多いと思いますが、櫻井さん、どうか宜しくお願いします」
「こちらこそ」
飲みの席でも、少しはまともに話ができる人間が居るようだな。安心した。
これから、このビジネスプロジェクトを大きくしていかなきゃならねーんだ。
つまんねーオッサンばっかりだと思っていたけど、今後話が合うなら、内藤を窓口に考えよう。
俺は今のビジネスビジョンと、将来の展望を内藤に語った。
内藤は、真剣に俺の話を聞いてくれた。
「いやあ、櫻井さん・・・・驚きました。若いのに、素晴らしい考えをお持ちですね。敬服します」
「いえ、そんな立派なモンじゃありません。これからです。まだ何も始まっちゃいない。だから、俺はこのプロジェクト、絶対に成功させてみせます」
「我々も御社にご協力出来るよう、精一杯尽力させていただきます」
内藤と俺は握手を交わした。
その後、彼とビジネスの話で盛り上がった。
良い出会いだったな。充実した話が出来て良かったと、満足して帰ることができた。
飲みの席でこんな会話が出来たのは、初めてだ。
多分それは今まで俺も、今日のオッサン共と同じアッチ側の人間だったからだ。
女を侍らせて、ただいい気分で飲むだけの時間を過ごすだけじゃあ、ビジネスに繋がる訳がない。
探せば居るんだな。まともに話ができる奴。
今までの俺は、櫻井のボンボン風情が、とでも言われ、おそらくコッチ側の仕事が出来る人間に、バカにされていたに違いない。
俺は、変わるんだ。
美羽、お前を手に入れる為に。
誰もが認める、素晴らしい本物の男になるんだ。
だから、見てろ。
お前の方から俺の嫁にしてくれって、言わせてみせるから。
だから、待ってろ。
他のつまんねー男なんかに、目移りすんじゃねーぞ。
お前をこんなに愛せるのは俺しかいないって、今に証明してやるからな。
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