【R18】お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる ～笑顔でお断りしましたが、何か？～

１０．いよいよ展示会！（完売目指します！）

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　それよりも、だ。今日の展示会だ。一万足の売り先を考えなくちゃ。


　とりあえず四千足――浅岡商店からの受注は確約したと考えている。神戸出張の時、千足追加するからという専務の言葉を信じた体で、四千足。更に藤並商会は千足。残り五千。
　昔は彼らのように、千足単位で靴の取引は行われていたが、最近は受注発注型の生産が増えてきている。メーカーは余分な在庫を作る体力（資金）の余裕が無いから、基本的に注文を受けた分だけを生産する。本来新商品なら、メーカー在庫としての千足ほどは在庫を持つ覚悟で生産をするのだけれど、何せよ一万足受注キャンセル分の商品材料を利用せねばならないのだ。大口顧客のお陰で半分ほどは助かったけれど、口約束だから････大丈夫なものかどうか。

　しかし、弱気にならずに素晴らしい商品のアピールをして、ガッチリ顧客のハートを掴まねば。


　目指せ完売！
　いや、それ以上!!


　杉浦紗那――今は福士紗那か――展示会終了まで、死ぬ気で頑張ります！




　※




　今日は社に寄らず、東京ビックサイトで開催される展示会場へ直接向かった。様々な準備を整え、ブースに新商品、在庫を並べた。満を持して用意した、魔法のシンデレラパンプス。沢山の受注は頂けるだろうか。心配は尽きない。

「紗那」

　社長が声を掛けてくれた。今日は社長、私、商品担当、営業担当三人、六人でブースを回す。
　展示ブースは三コマ分のスペース。今日の戦闘会場だ。
　本来、ブース内での接客は私の仕事ではないのだけれど、ここまで商品に携わり、売り出しを考えているものだから、展示会での販売メンバーに加えて欲しいと自ら頼んだのだ。
　一人でも多くの問屋・小売業の方にフクシの靴を知ってもらい、気に入ってもらいたい。浅草の素晴らしい靴を、全国から来場するバイヤーに知ってもらいたい。

　因みに神原もこの展示場に出展している。相当広いブースを確保していて、レディース部門、他の部門と会場も分けて展示している。ライバルながら天晴だと思うが、今回は負けずに頑張りたい。
　実はスズキノに作ったサンプルをもっと改良し、今回はダンス用のキッズスニーカーも新作で打ち出す事にした。これが成功すれば、次の目標はメンズ、そして『履きやすいスリッポンスニーカー』を作る。スリッパスニーカーとなれば聞こえは悪いが、春に向けてモードでお洒落な履き心地抜群の、柔らかいスニーカーを開発する予定だ。神原との戦いは、決してフクシにとって無駄ではなかった。私が奔走した意味もあったのだ。今日、Rainbowのシンデレラパンプスを一万足完売させ、新たなステップを踏み出したい。

「どうされましたか、社長」

「特に用はないがな、いよいよだなと思って。今日から三日間、全力で頑張ろう。週末のお疲れ会、打ち上げの後は二人で俺の家でやるぞ。紗那のスケジュール、押さえておいてくれ」

「承知致しました。丁度今後の事もお話したいので、スケジュールは空けておきます」

　冷静を装ったが、心臓がバクバクしている。
　今まで彼氏の一人もいなかった私は、急に好きな男の家に呼ばれる事になり、どうして良いのか解らなくなったからだ。


　でも、少しづつ詰めていきたい。貴方との距離。


　よし、と気合を入れた。今日のうお座の運勢は、花丸急上昇だ。
　新しいスタートに立てる日、明るく笑顔で過ごせば、きっと新たな扉が開くはず――朝のラッキー占いでは、そう言っていた。福士社長のおひつじ座も、運勢は良かった。運命を切り開ける力が発揮できる日――いい日になるように、みんなで努力しよう。